Startup:「AIラブストーリー」は突然に

Startup:「AIラブストーリー」は突然に

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Next Startups

次のスタートアップ

Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週月曜日の夕方は、WiLパートナーの久保田雅也氏のナビゲートで、「次なるスタートアップ」の最新動向をお届けします。

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Image: REUTERS/KACPER PEMPEL

自宅に籠らざるを得なくなり、恋人と会えない、婚活がストップしてしまった…こんな声がよく聞かれるようになりました。

果ては、遠距離の恋人と疎遠になり破局した、在宅勤務中に開きっぱなしにしていたPCを覗き込まれ不倫がバレた、など、世界は愛にまつわる多くの不満とアクシデントに満ちています

新型コロナウイルスは恋愛に大きな変化をもたらしつつありますが、この変容に今、マッチングアプリが追随しています。今週お届けするQuartzの「Next Startup」では、恋愛をアップデートする「Relate」を取り上げます。

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Image: Relate

Relate(マッチングアプリ)
・設立:2017年
・創業者:Philip Jonzon Jarl
・調達額:500万スウェーデンクローナ(約5,600万円)
・事業内容:価値観に基づくマッチング

LOVE IN THE TIME OF COVID-19

活況の「恋愛テック」

困難が大きいほど、愛は燃え上がる」と言いますが、バルコニー越しに恋に落ちて愛を告白した人や、恋人に密会しようとして逮捕された人もいます。「恋人に会いに行く=不要不急」かはともかく、出会ってから濃厚接触はリアルに感染リスクがあるため憚られます。フィジカルな恋愛が制限されるぶん、恋愛市場は主戦場をオンラインに移し、ますます盛り上がりを見せています。

「Tinder」は1日に世界で30億回スワイプされメッセージ量が25%増加しました。ライブビデオ機能が売りのBumbleは3月に56%成長。あのFacebookも「Facebook Dating」というバーチャルデート機能を発表しました。

自宅待機を強いられる孤独な環境で、人とつながる精神的な充足が求められるなか、「デーティング(恋愛)・テック」が急成長しています。

EXHAUSTED YOUTH

若者の「出会い疲れ」

オンラインでの出会いはすっかり普及しました。米国人カップルの出会いは40%がオンラインです。35歳以下の半分がマッチングアプリを使ったことがあり、ミレニアル世代のユーザーは週平均10時間使っています。

一方で81%の人が、「マッチングアプリでは理想の人と出会えない」と答えています。突然連絡が途絶えたり、プロフィール写真が偽物だったり、ソーシャルで付きまとわれたり。ユーザーの56%が「体験が悪い」と答えていて、25%近い人が「疲れる」「怖い」と感じています。

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Image: Relate

Tinderの“スワイプ”は、ギャンブルでルーレットを回す感覚に似ています。中毒になる、興奮を呼ぶエンタメですが、パートナーとの出会いを求めるユーザーのニーズとは乖離しています。そこには「Paradox of Choice」(選択のパラドックス)と呼ばれる、「より多くの選択肢があると思えると、どんな選択をしても満足ができない」落とし穴が待ち構えているのです。

よい人に出会うためには、より多くのデートと、より多くのメッセージと、より多くのスワイプを求められる。マッチングアプリは結局顔が全て。使えば使うほど、寂しさや不安が増幅し、自尊心が減退する「出会い疲れ」が多発しています。

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Image: Relate

ENCOUNTERS CONNECTED BY SPIRIT

精神でつながる出会い

若者たちのニーズに寄り添うサービスで存在感を示すのがスウェーデン発のRelateです。

Relateのアプリに登録すると、まず人生の価値観やライフスタイルに関する質問への回答を求められます。ユーザーのプロファイルページが自動で生成され、写真を入れたり説明文を追加するなど編集します。その結果から、ユーザーの価値観(=Value)にフィットする候補者が選定され、リコメンドされます。

「従来のマッチングアプリの仕組みは壊れている。恋愛はウィンドウショッピングではない」と創業者のPhilip Jonzon Jarl(フィリップ・ジョンゾン・ヤール)は言います。アパレル大手H&Mの出世コースを捨て、「人生で最も重視している事、そして社会で最も課題と感じている事」で、2017年にストックホルムで起業しました。

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Image: Relate

独自の価値観形成のロジックにもとづきマッチングされた相手が、毎晩夜7時に5人提案されます。気になる相手のプロフィール中の価値観をタップすると、そこから会話が始まります。

これまではマッチングの“場”としてリアルのイベントを開催していましたが、コロナでZoom開催にシフトしました。招待されたユーザーは指定された時間に“入室”すると、最初に全員で軽く話した後、指定された相手と個別に10分ずつ3人まで会話できます。

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Image: Relate

初めての相手でも、司会進行役がいる複数人のイベントなら気持ちも楽です。リアルのイベントのように積極的に声をかけなくていいのも助かります。Zoom越しですがDJの音楽がイベントを盛り上げ、男女の雰囲気づくりに一役買っています。

リアルとオンライン」と「イベントと1対1の融合」です。価値観の合う相手とのつながりを求め、コロナ感染拡大を経てユーザーが40%増えるなど、急成長中です。

LEAVE ITS TO APP

出会いを「丸投げ」

効率性重視のサービスもあります。イギリス発の「Intro」は、元々は出会いのマッチングとコーディネーターのアプリでした。

メッセージでのやり取り、アポイントを約束してから場所ぎめ、お店のメニューや雰囲気をリサーチして予約する…。こうした手間は、多忙な人であれば、出会いから疎遠になる十分な理由になりますが、Introはこれらすべてを代行してくれます。ユーザーは指定された時間に、指定された場所に行くのみです。

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Image: Intro

コロナ下でリアルなデートが避けられたため、いったんは苦境に陥りますが、オンラインで可能性が広がりました。今は指定された時間にログインすると、集めたデータから自分に合うと判断された相手との、ビデオ面談が始まる仕組みです。

リアルなデートでは約束どおり場所に来ないユーザーもいましたが、オンラインではその割合が20%改善し、リピート率も26%上昇したそうです。30分で切られるので、話し足りない焦燥感も、つまらなくても時間を損した感覚もありません。忙しいビジネスマンやキャリア層の女性に受け、Relate同様、コロナ禍で急成長しています。

THE EDGE OF TECH

テックが結ぶ縁

今やスマホが深く生活に浸透した私たちにとって、「出会いだけリアル」というのは非効率です。オンライン経由の恋愛の方が効率的との考えが浸透し始め、最近ではかなりイメージも変わってきましたが、コロナは進化に拍車をかけています。

日本でも「Zoomお見合い」がウケています。婚活写真は“盛られている”ケースが多く、中身や雰囲気、考え方などは話してみないと分かりません。リアルなお見合いは一流ホテルでのお茶代やお食事代など費用もさることながら、婚活組の貴重な時間の使い方としては非効率です。

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Image: REUTERS/Valentyn Ogirenko

「動画」という武器を得て、マッチングアプリにも新境地が開かれました。「Hinge」は夏に、アプリ内にビデオ通話機能を導入することを発表し、Tiinderも今年末にビデオ通話機能を拡充させる予定です。

顔の紅潮や表情、声の抑揚など、動画を通じたデータ蓄積が進めば相性診断とレコメンドの精度も上がります。AIが指定する相手とオンラインで出会い、結婚が普通になる未来。「偶然の出会い」による男女のロマンスは、過去のものとなるかもしれません。

果たしてDate from Home(デート・フロム・ホーム)は、「新しい生活様式」として定着するでしょうか。テクノロジーで、恋愛市場の新たなニーズと機会の掘り起こしが、まさに今始まっています。

久保田雅也(くぼた・まさや)WiL パートナー。慶應義塾大学卒業後、伊藤忠商事、リーマン・ブラザーズ、バークレイズ証券を経て、WiL設立とともにパートナーとして参画。 慶應義塾大学経済学部卒。日本証券アナリスト協会検定会員。公認会計士試験2次試験合格(会計士補)。


This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. 最新「脱獄」ツールがリリース。iOS 13.5のジェイルブレイクに対応した「unc0ver」v5.0.0が23日、リリースされました。これまでのunc0verは最新iOSバージョンで修正された脆弱性・Exploitを使用し、前バージョンまでを脱獄できるツールを開発してきましたが、今回のv5.0.0では、まだ修正されていない、未公表の脆弱性・Exploitが使われたとされます。
  2. メニュー表もタッチレスに。経済再開に向け段階的な規制緩和が始まった米国ですが、飲食店や美容院などのメニュー表を介しての注文に抵抗を感じる人は少なくありません。TOURTechの提供するタッチレスメニューシステムは、健康上のメリットだけでなく、デジタルメニューに移行することで、印刷コストカット、メニュー変更に柔軟に対応できるなど、事業者にとってもメリットがあります。
  3. 現代オフィスカルチャーの終焉。無料ランチ、社内マッサージ…シリコンバレーのテック企業が牽引したオフィスカルチャーはコロナによって終わりを迎えるかもしれません。Facebookは今後5〜10年で従業員の半数をリモートにする見通しを発表し、TwitterやCoinbaseもリモートワークを標準化する動きを見せています。実際、テック企業はオフィスの縮小を進めており、長期にわたるテレワークへのシフトは、給料、オフィス賃料、そして新たなビジネスの誕生にまで影響を与える可能性が指摘されます。
  4. 今日、Virgin Orbit打ち上げ。リチャード・ブランソンが設立した宇宙ツーリズム企業Virgin Galacticと兄弟関係にあるVirgin Orbit(ヴァージン・オービット)社のロケット打ち上げは、センサーの不具合により、24日から25日に延期されました。同社は5年かけて、飛行機から発射される空中発射式ロケット「LauncherOne」で小型衛星を軌道に送り込むプロジェクトの準備を進めてきました。

(翻訳・編集:鳥山愛恵)


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