Africa:スケーターが社会を変えている

Africa Rising

躍動するアフリカ

Quartz読者のみなさん、こんにちは。アフリカの新世代のカルチャーと消費動向をテーマにした特集「African Youth」。最終回では、若者に経済的な機会をもたらし、社会変革を起こすプラットフォームとしても機能しているストリートカルチャーにフォーカスします。

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スケートボードやBMXといった若者のストリートカルチャーシーンを語るとき、これまでアフリカが取り上げられることはほぼありませんでした。

しかしここ数年、アフリカにおいて、これらのアクションスポーツはカウンターカルチャーとして抑圧されながらも、着実に広がってきています

若者たちに金銭的な余裕はなく、そもそも競技場となる都市インフラも整っていません。スリルを求めるスケーターやライダーたちは、ガード下や駐車場、砂利道、建設現場などを舞台にコースや設備を手づくりで築き上げてきました。

そうしたクリエイティブかつDIY精神に溢れたものづくりとともに、アフリカで起こっているストリートカルチャーはソーシャルメディア上でも広がり、世界に知られるようになりました。

ナイジェリアのスケートボードチーム・WAFFLESNCREAM(ワッフルサンクリーム)。PHOTO BY AMARACHI NWOSU
ナイジェリアのスケートボードチーム・WAFFLESNCREAM(ワッフルサンクリーム)。PHOTO BY AMARACHI NWOSU
Image: ナイジェリアのスケートボードチーム・WAFFLESNCREAM。PHOTO BY AMARACHI NWOSU

The History

米国からアフリカへ

スケートボードカルチャーは、1960年代に米西海岸で始まりました。波がない時期、サーフボードの底にローラーを取り付けて海の代わりにビーチの遊歩道を走るというアイデアは、やがて、誰もいないプールや歩道でのスリルを求める人々を刺激するムーブメントへと発展していきました。

スケートボードカルチャーがアフリカに本格的に広がったのは、ここ最近です。

スケートボードの第一人者でもあるウガンダ・カンパラ出身のJackson Mubiru(ジャクソン・ムビル)が友人たちとカンパラのキティンタレ郊外に最初のスケートパークをつくったのは、2004年のことです。当時はまだアフリカではスケートボードは人気がなく、この若者とその情熱がウガンダ全土、そして近隣のタンザニア、ケニア、ルワンダの若者たちを鼓舞するとは、誰も予想していませんでした。

PHOTO BY KARABO MOOKI
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Image: PHOTO BY KARABO MOOKI

しかし、その後、このカルチャーはアフリカ全土に拡大することになります。2013年にはケニア・ナイロビにシャングリラ・スケートパークが、2016年にはルワンダ・キガリに同国初のスケートパークが誕生しました。

一方、BMXの歴史は、1970年初頭の米南カリフォルニア地域に遡ります。1971年に米国で公開された映画『ON ANY SUNDAY』で、BMXの人気に火がつき、スケートボートと同じく、若者のストリートカルチャーの代名詞にもなりました。

PHOTO BY COCO OLAKUNLE
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Image: PHOTO BY COCO OLAKUNLE

アフリカでのBMXの人気も、スケートボードと同様、近年とくに高まっています。2014年からは「African BMX Racing Championships」という選手権大会が開催されており、“ストリート”から“プロが集まる場”へとスポーツとしての認知度も高まっています。

With Society

「場」をつくる

ストリートカルチャーは常に社会と隣り合わせにいます。

スケートボードやBMXはストリートにそのルーツがあるとはいえ、高価なツールに加え、相応の場所が必要です。そして、スケーターやライダーたちを支えたのが、デジタルテクノロジーでした。

彼らはソーシャルメディアを使うことで所属するコミュニティを超えてオーディエンスを増やし、金銭的なサポートを獲得。ストリートスポーツのシーンを新たな高みへと引き上げる役割を果たしています。

PHOTO BY SANDY ALIBO
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Image: PHOTO BY SANDY ALIBO

約2,300万人の人口を誇るナイジェリアの首都ラゴスは、舗装もままならない道があり、かつ渋滞などで道は混雑しています。そして、これまでスケートパークも存在していませんでした。

しかし、2012年に設立されたスケーターのコミュニティWAFFLESNCREAM(ワッフルズクリーム)は、なんとかスケートパークをオープンしようと、2019年3月に資金調達のためにGoFundMe立ち上げました。残念ながら、オープンのための目標である35,000ポンド(約480万円)は集まらなかったものの、同年10月には待望のスケートパークがラゴスに誕生しました。

エチオピアのアディスには、2016年4月、同国初の公式スケートパークAddis Skate Parkが誕生。建設のプロセスにおいては、世界20カ国以上から60人以上のボランティア(スケートパークビルダーやスケートボーダーのチームから人が集まりました)が集まり、地元のスケートボードコミュニティEthiopia Skate(エチオピア・スケート)の協力のもと、スケートパークをつくる非営利団体Make Life Skate Lifeと共同で建設されました。

Supportive Community

社会と接続する

スケートボードやBMXといったストリートカルチャーにおいて、貧困や不利な立場に喘ぐ若者たちにコミュニティと仲間を提供する組織の活動が多く見られます。

そして、コミュニティの構築は、社会的障壁を乗り超えるための橋渡しとなり、多くの若者の居場所にもなっています。ストリートカルチャーのコミュニティは、これからのアフリカに新たなコミュニティを生み、進歩を促すプラットフォームだといえるのです。

ここでは、アフリカを代表するスケートボード/BMXのチーム、コミュニティを紹介します。彼らは、その発信力を武器にアパレルブランドとのコラボレーションし、あるいはICT教育のハブにさえなっています。さらには、女性スケーターたちのコミュニティも活躍。アフリカにおけるダイバーシティを支える存在として注目を集めています。

WAFFLESNCREAM(ナイジェリア)

WAFFLESNCREAM(ワッフルサンクリーム)は、Jomi Marcus-Bello(ジョミ・マーカス・ベロ)によって、ラゴスで設立されました。

この街では“乱暴”なスケートカルチャーは、特定の社会層から快く思われていません。しかし、WAFFLESNCREAMは今やナイジェリアのスケートプラットフォームの基盤といえる存在です。国際的な地位とアクセシビリティの向上を目的として国際スケートボード会社協会が年に一度展開する「Go Skate Day」を、ナイジェリアで開催するまでになっています。

Photo: Amarachi Nwosu
Photo: Amarachi Nwosu
Image: PHOTO BY AMARACHI NWOSU

彼らの活動は幅広く、コンバースAwake NYなどのアパレルブランドとのコラボレーションも実現させています。ストリートファッション界で世界的にも認知されているスケートトリオMotherlanも、WAFFLESNCREAMに所属していました。

ナイジェリアのスケートシーンは急速に成長しているとはいえ、スケートパークや施設はまだまだ不足しています。先述のスケートパーク開設をはじめ、状況を変えるべく懸命に活動を続けています。

Ethiopia Skate(エチオピア)

Photo: Ethiopiaskate.org
Photo: Ethiopiaskate.org
Image: PHOTO VIA ETHIOPIASKATE.ORG

2013年にスケート愛好家兼フォトグラファーのSean Stromsoe(ショーン・ストロムソー)とスケーターのAbenezer Temesgen(アベネゼル・テメスゲン)によって設立されたEthiopia Skate(エチオピア・スケート)。

現在150人ほどのスケーターが所属するこのコミュニティは、先述のように、非営利団体Make Life Skate Lifeと共同でスケートパークを開設するなど、エチオピアでのスケートスポーツを定着させるために全力を注いでいます。

Skate Gal Club(ガーナ)

Photo: Surf Ghana
Photo: Surf Ghana
Image: PHOTO VIA SURF GHANA

Skate Gal Club(スケート・ギャル・クラブ)は、名前からも分かるように女性のみで活動しているスケートクラブ。ボードスポーツを気軽に楽しむことを目的に、Sandi Alibo(サンディ・アリボ)が2016年にガーナで設立したSurf Ghanaが母体のグループです。

女性がスケートというスポーツを通して強い絆を結び、アフリカの女性スケーターとして世界を舞台にすることの意味を追求できる場を提供。ガーナのスポーツシーンにおけるダイバーシティを促進しています。

Starboy BMX(ナイジェリア)

Photo: Coco Olakunle
Photo: Coco Olakunle
Image: PHOTO BY COCO OLAKUNLE

Starboy BMX(スターボーイ・BMX)は、その巧みなトリックで世界でも注目されつつあるチームです。独学でスキルを身につけたライダーのMatthew Temitope Solomon(マシュー・テミトープ・ソロモン)が、若者をドラッグや非行から守ることを目的として同チームを設立しました。

スケートパークや設備が不足しているナイジェリアにおいて、街中で走ることも多いクルー。ストリートから得られる知識を生かした新たなトリックでも注目を集めています。

Skate Society Soweto(南アフリカ)

Photo: Karabo Mooki
Photo: Karabo Mooki
Image: PHOTO BY KARABO MOOKI

Sechaba TheBakersman(セチャバ・ザベイカーマン)が創設者としてスタートしたSkate Society Soweto(スケート・ソサイエティ・ソウェトは、南アフリカ・ヨハネスブルグの南西に位置するソウェト地区のスケーターチームです。

もともと、恵まれない地域でスケートをする子どもたちをサポートすることから始まった彼らの活動は、若い黒人男性、女性にとってスケートスポーツと多様なカルチャーのつながりを提供する価値を生み出すに至っています。

世界的には認知度が高くないものの、ソウェトは、パンクミュージックが浸透している場所でもあります。彼らはスケートパンクバンド・The Cum In Your Face (TCIYF)としても活動し、他業界のクリエイターたちとのつながりを活用しながら、南アフリカの若いスケーターたちに新たな価値観を魅せています。

The Velokhaya Life Cycling Academy(南アフリカ)

Photo: velokhaya.com
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Image: PHOTO VIA VELOKHAYA.COM

南アフリカのカヤリシャをベースにBMXの活動をするThe Velokhaya Life Cycling Academy(ヴェロクハヤ・ライフ・サイクリング・アカデミー)。同プラットフォームでは若いライダーたちを育て、サイクリングの個別タイムを競い合う最大のレースイベント「Motorsport South Africa」のような地元のイベントから、オリンピックレベルのイベントまで、求められるスキルを身に付けられる場となっています。

なお、「Motorsport South Africa」では、約3万5,000人のライダーたちがケープタウンを訪れ、約2,600人が競技に登録をし、そのうち15%がBMXに出場しています。

The Velokhaya Life Cycling Academyでは、特に貧困層などに住む若者に健全な課外活動を提供し、彼らがこのような地域で頻発している社会問題から距離を置けるよう活動をしています。

Photo: velokhaya.com
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Image: PHOTO VIA VELOKHAYA.COM

また、サイクリングに留まらず、通信会社MTN SAと協働し、コミュニティの人々がコンピューター技術を学べるICT技術センターをケープタウンに設立するなど、スポーツだけではないスキルを身につける場を提供しています。

※「African Youth」特集は、ナイジェリア系アメリカ人のAmarachi Nwosuが主宰する、アフリカに特化したクリエイティヴプラットフォーム&エージェンシー「Melanin Unscripted」のサポートのもと、連載しています。


This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. Sun Exchangeが400万ドルを調達。南アフリカを拠点とする再生可能エネルギーのスタートアップSun Exchangeは、シリーズAの資金調達ラウンドをクローズするために300万ドル(約3.2億円)を調達しました。同社は、P2Pの暗号化対応ビジネスを運営しており、世界中のどこにいても、アフリカの太陽光インフラに投資することができます。
  2. アフリカで100人以上の著名作家が共同声明。アフリカの文学界は、米国で起きたジョージ・フロイドの殺害に対して、正義を求めています。黒人に対する警察の残虐行為に抗議する共同声明において、同グループは、米国の警察官によって殺された70人ものアフリカ系アメリカ人とアフリカ系移民を挙げ、「米国における黒人に対する暴力行為」を非難する一方で、「警察によるものであれ民間人によるものであれ、あらゆる人種による殺害に対する正義」を要求しています。
  3. 南アフリカでの観光再開はいつ? 南アフリカの観光事業ビジネス協議会(TBCSA)は、政府が国が2021年2月まで、外国人観光客の受け入れを再開しないかもしれないと宣言した後、早ければ9月にも受け入れを可能にするよう政府に求めています。なお、国内観光は今年12月まで再開しないだろうと予測しています。
  4. ジェンダー・エクイティの必要性。女性科学者は、科学的リーダーシップを発揮し、アフリカの発展と変革に貢献する上で重要な役割を担っています。しかし、高等教育や科学・技術・工学・数学(STEM)の分野では、女性科学者の存在感は依然として十分ではありません。サブサハラ・アフリカのすべての分野における研究者のうち、女性はわずか30%にすぎないのが現状です。

(翻訳・編集:福津くるみ)


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