Asia:インド発「こんな中国製アプリはイヤだ」

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Asia Explosion

爆発するアジア

Quartz読者のみなさん、こんにちは。緊張が高まる中印関係ですが、インドの諜報部門が提起した膨大な数の「要注意アプリ」のリストからは、中国のアプリがいかにインドの生活に浸透してきたかもうかがえます。英語版(参考)はこちら

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Image: REUTERS/DANISH SIDDIQUI

インドと中国の国境地帯における緊張は、インドで活動する中国企業にすでに打撃を与え始めています。たとえば今月17日、中国のスマートフォンブランドOppoのインドでの端末発売キャンセルされるに至っています。

同じ日、インドの情報機関がナレンドラ・モディ政府に対し、中国とつながりのあるモバイルアプリ52点をブロック、あるいは使用について勧告を出すよう要請したことが報じられました。Hindustan Times紙は、「同機関がこれらのアプリはインドのユーザーから膨大な量のデータを抽出していることを憂慮している」という政府高官の言葉を引用して報じています。

リストに含まれていたのは、知名度が高く、よく使われているアプリの数々。「TikTok」や「SHAREit」、「Bigo Live」や「Shein」など、インドのバーチャル経済に大きく貢献しているものが並びます。

Social media

ソーシャルメディア

ここ数年で、インド人は半ダース程度の数の中国の動画共有アプリを使うようになりました。“ブロック要請”リストの中で最も人気があるのは、1億2,000万人以上の月間アクティブユーザー(MAU)を誇るTikTokです。他にも、インドで5,000万人以上のMAUを抱える「Hero」や、2,200万人以上のMAUを有するBigo Liveなど、中国で人気のある動画共有アプリも挙げられています。

人気の高さゆえ、これらのアプリはすでにして、当局や一般市民から懐疑的な目を向けてきました。“リスト入り”したとしても、さほど不思議ではないのも事実です。

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E-commerce

Eコマース

インドには5億人以上のインターネットユーザーがいるとされますが、Eコマース(EC)産業は、国内の小売業全体の3%程度にとどまっています。

それは、つまり“拡大の余地”があるということ。米小売大手のAmazonやWalmart(ウォルマート)は、インドのEコマース部門に巨額の投資を行ってきました。

ここ数年、多くの中国企業もまた、インドに進出しています。彼らは大規模な投資をせず、またブランディングやプロモーションに資金を投入することもなく、目立たないところで活動してきました。

さほど注力していないにもかかわらず、中国企業のなかには飛躍的な成長を遂げた企業もあります。例えば、インドにおいて「ClubFactory」は1億以上のMAUを誇り、一方のShienは、インド国内で500万以上のダウンロード数を記録しています。

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Beauty apps

美容系アプリ

自撮り好きの多いインドは、中国の自撮りアプリにとって肥沃な大地そのもの。2016年、インドは、自撮りアプリ「BeautyPlus」「MakeupPlus」のメーカーMeituにとって、中国に次ぐ第2位の市場となりました。同社は、インドのユーザー向けの特別なアプリ「BeautyPlus Me」を発売したほどです。

そして今、そうしたアプリ6点が、インドの諜報機関の監視下に入ってきました。

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File sharing

ファイルシェア

リストにはSHAREitのほか「Xender」というファイル共有ツールが含まれています。

2019年1月、SHAREitは「WhatsApp」「Facebook」に次いでインド国内で3番目にダウンロードされました。Lenovoが所有するこのアプリは、インドで4億人以上のユーザーを抱えています。一方のXenderは、スマートフォン大手のSamsungと提携し、人気を博しています。

Browsers

ブラウザ

インターネットブラウザについては、「UCブラウザ」「APUSブラウザ」「CMブラウザ」「DUブラウザ」の4点が挙げられています。

中国製ウェブブラウザはインドで人気がありますが、その主な理由は、データ消費量が少ないことと、ユーザーのプライバシー性能が高いことの2つです。

インターネット速度が劣悪なインドにおいて、中国のテック多国籍企業Alibaba(アリババ)グループが所有するUCブラウザは、2019年7月時点で、MAUが1億3,000万人を超え、実に14のインド国内言語に対応していました。DUブラウザは、中国の人気アプリ開発会社DUグループによるアプリで、軽くて無料なのが特徴です。

APUS Browserは、安全でプライベートなブラウジングができるように設計されているとされています。CM Browserは、北京に拠点を置く中国のモバイルインターネット企業の中でも特に名の知れているCheetah Mobileによるものです。

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Image: REUTERS/SHAILESH ANDRADE

News aggregator

ニュースまとめ

ブラウザだけでなく、Alibabaのニュースアグリゲーションフィード「UCニュース」もまた、インドの諜報機関からリスクがあると名指しされています。このアプリはUCブラウザと統合されており、ヒンディー語、タミル語、テルグ語、カンナダ語、マラヤーラム語、パンジャブ語、マラティー語、オディヤ語、アッサム語、ボフプリ語など、インドの複数の言語に対応しています。

Xiaomi & Tencent

シャオミとテンセント

Xiaomiのアプリ3点がリストには掲載されています。北京に本社を置くXiaomiは、インドにおけるスマートフォン販売では市場をリードしてきました。1〜3月には、インドで販売されたすべてのスマートフォンの30%を同社製の製品が占めていました。また、インドで販売されているフィットネスバンド(アクティビティトラッカー)の50%近くを販売しています

インドのスタートアップエコシステムに対する投資でも知られるTencent(テンセント)は、フードデリバリーのSwiggyやファンタジースポーツプラットフォームDream11、インスタントメッセンジャーHike、ヘルスケア企業Practoなど、インドの著名なインターネットベンチャーを支援してきました。Tencentは、インド最大の国内EC企業Flipkart(現在はウォルマートが所有)への初期投資家にも名を連ねていました。

同社の2019年の売上高は530億ドルに達し、ニュースフィードや音楽ストリーミングプラットフォーム、ウェブブラウザなど、モバイルアプリも幅広く提供しています。

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Tools

ツール系

生産性向上や動画編集、ウイルス対策、ソーシャルメディア管理といったツールは、インドへの投資として人気を集めています。今年1月には、中国の検索エンジンBaiduのCEOが、人工知能などの分野で現地の人材を採用するためにインドを訪問しましたが、同社の「Baidu Translate」と「Baidu Maps」の2つのアプリもリストの対象になっています。

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これらのアプリはGoogle Playストアでは高い評価を得ており、インドにおけるユーザーベースを成長させるのに役立ってきていたのです。


This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. オフィス市場は変化に直面している。シンガポールのオフィス賃料は、予測されていた0〜5%の減少を上回って、最大10%値下がりする見通しです。調査会社CGS-CIMBリサーチが18日に明らかにしたレポートによると、2020年末時点のオフィス物件の空室率は11.3%に。アナリストは、パンデミック後のオフィス賃貸市場は長期的に徐々に変化すると述べています。
  2. ASEAN首脳会議をオンライン開催。2カ月近く延期されていたASEAN首脳会議が今週26日に、オンラインで開催されます。ASEANは春と秋の年2回、首脳会議を開くのが通例で、今年はベトナム中部ダナンで開催が予定されていました。
  3. Eコマース爆伸びの中国でゴミが溢れる寸前。ゴミ分別会社を営む男性は、北京で部分的な封鎖が始まった2月以降、通常より20%多くゴミを処理する必要があったと言います。国家郵政局によると、2019年の国内の宅配便は前年比25%増の600億個。西安市のゴミの埋立地は予定より20年以上早く限界に達するなど、処理能力はギリギリ。焼却処分に依存する構造が加速しています。
  4. 莫大な「借金」返済。アジアで最もリッチな男の会社は、このご時世に210億ドル(約2兆2,400億円)の負債を解消しました。ムケシュ・アンバニ氏率いる、インドのエネルギー大手RILグループは、昨年の夏に公言した2021年3月31日までの負債解消を見事にやってのけました。清算のための資金は主に子会社のJio Platformsの株式売却で、Facebookをはじめとする10社に計24.7%が売却されました。

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