Thursday: MILLENNIALS NOW
ミレニアルズの今
Quartz読者の皆さん、こんにちは。エココンシャスな若者たちのなかで、今、パンデミックの影響でよりDIYに夢中になる人が増加。とくに、明るい色を使ったタイダイ(絞り染め)にハマっているようです。今回は、その現状と人気の秘密に迫ります。英語版はこちら(参考)。
ファッション業界は今、パンデミックで苦境に立たされていますが、一方で多くの若者たちはロックダウン中に自分で服をつくって販売することに忙しかったようです。
マッキンゼーによると、DIYやリセールのようなエコシステムは、個性やエシカルな考え方を重視し、“所有よりもつながり”に価値を見出すZ世代に非常に適しているとのこと。また、GlobalWebIndexによると、彼らはプライベートでも仕事の合間でも気晴らしや自己啓発を求めていて、30%の人がパンデミックのあいだに新しい趣味をスタート。この数字は、ほかのどの世代よりも多いといいます。
そのひとつとして人気となっているのが「タイダイ(tie dye)」。若者が自分で服をつくることそのものはパンデミック以前よりも流行っていましたが、DIY初心者にも簡単なタイダイは、Z世代のお気に入りのプラットフォームであるYouTubeやTikTokでも拡散され、ロックダウン中の新たなトレンドになりました。
Tie-Dye boom
タイダイをググる
通常、「タイダイ」のGoogle検索は夏に少しずつ上昇していくのですが、今年は過去最高のピークを迎えました。前回のピークである2019年7月(スターバックスの「タイダイフラペチーノ」がデビューしたタイミングでもありました)よりも、2020年8月の検索数の方が2.5倍も多かったのです。
世界的なファッション検索プラットフォーム「Lyst」によると、ユーザーは昨年夏の3倍近いペースでタイダイを検索。Ralph Lauren(ラルフ・ローレン)のスウェットパンツ、Nike(ナイキ)のTシャツ、Palm Angeles(パーム エンジェルス)のパーカーが人気アイテムで、タイダイの水着は6月から42%増加しているといいます。
また、ニューヨークを拠点とするブランドAlex Mill(アレックス・ミル)は、アイスキャンディのような色合いに染めたユニークなコレクションを発表。クリエイティブディレクターであり共同創業者でもあるソムサック・シフーンムオンによると、同コレクションは「インスタ映え」の効果もあり、発売初日に50~60着のタイダイの商品が売れたと言います。
「小さいカプセルコレクションのプロジェクトという意味では、このような数を売り上げたことはありませんでした」。また、その日はウェブサイトへの流入も多く、Alex Millのシーズン全体で、最も売れた1日になったといいます。
DIY FOR TIE-DYE
DIYで染める
先述したブランドのほか、Madewell(メイドウェル)、Asos(エイソス)、LuluLemon(ルルレモン)なども新しいタイダイのアイテムをリリースしていますが、それらから購入したくない場合は、自分でつくることができます。ハンドメイド商品を取り扱うプラットフォーム「Etsy(エッツィ)」の担当者によると、DIYのタイダイキットの検索数は、昨年の同時期に比べてほぼ3倍になっているといいます。
1960年代のタイダイブームとともに人気となった、100年の歴史を誇る染料メーカーRit(リット)のクリエイティブディレクター、ジョナソン・スパガットは、Ritのインディアナポリスにある工場では、その生産量は顧客を満足させられるだけのスピードに追いついていないと述べています。4〜7月の期間での注文は、昨年の同時期に比べて推定800%も急増。同社では、染料が足りていない小売業者からの注文を優先させるため、オンラインでの直接販売を停止しました。
Ritでは1日に5万〜6万本の染料を生産しているといいますが、「生産するのに苦戦していますよ、需要がありすぎて全く追いつけないです」と、スパガットは話します。「Joann’sやMichael’s、Targetといった量販店に行けば、たいていの場合、棚は空っぽになっているでしょう」
また、スパガットによると、今年の夏は売上を牽引する色が変わったと言います。去年の夏は黒、チャコール、ネイビーが主流でしたが、今年は皆、アクアマリンやローズクォーツなど、明るく楽観的な色を求めているようです。「Ritが展開するピンクは、これまであまり売れたことがありませんでした。それが突然、トップ10に入るようになりました」
ペールトーンカラーも人気で、Instagram(@weworewhat)のインフルエンサー、ダニエル・バーンスタインが4月に自身のスウェットを染める方法を公開したこともあり、トレンドを後押ししています。
IT’S SELLING
自分で販売へ
DIYでタイダイにハマる人のなかには、ビジネスへつなげたケースもあります。Instagramアカウント@live_and_dye_laを運用する23歳の会計監査人のシャノンは、ビバリーヒルズの自宅で自分自身のためのプロジェクトとしてタイダイを始めました。その後、30歳の姉からもアイテムを欲しいと言われるようになり、もっとつくるようになったと話しています。今では、誰でもGoogleのフォームから注文ができるようになり、彼女がつくったマスク、パーカー、Tシャツはこれまで、全部で400枚売れたといいます。
ロサンゼルスに住んでいて、CBDを展開するFealsのコンテンツディレクターを務めるナンディタ・カーンナは、昨年の夏にタイダイをスタート。今年3月にUpstate(アップステート)の染色キットを購入し、趣味だったものを売ることへつなげました。
「私はバナナブレッドを焼くことではない、何か別のことを探していたんです」と、カーンナは笑いながら言います。Instagramにつくったアイテムを公開すると、すぐに彼女の友人たちがリクエストをDMで送ってきたといいます。
それ以来、カーンナは30ドルのTシャツと24ドルのソックスの販売を始めました。これで、材料費とUpstateの植物染料をまかなうことができるといいます。彼女は今、色あせたローズとインディゴの色合いを使って、地元の雑誌のポップアップストアのためにタイダイのバンダナを製作しています。
流行はさておき、先述のカーンナ、シャノン、Alex Millのシクフーンムオンの3人は、タイダイはメンタルヘルスによいと絶賛しています。
「誰かが頭をスッキリさせるために走りに行くような方法で、私は実際に染色が信じられないほどセラピー的なものであることを発見しました」とカーンナは言います。「私は常に秩序を求め、人生の中で完璧さを求めている人間なので、この“タイダイ”のプロセスは本当に楽しいものです」
This week’s top stories
今週の注目ニュース4選
- Rent the Runwayの実店舗がクローズへ。服のレンタルサービスを展開しているRent the Runwayは、ニューヨークの旗艦店、シカゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ワシントンD.C.の実店舗を閉店することを明らかにしました。「パンデミックの影響で決定せざるを得なかった」と、社長でCOOのアニューシュカ・サリナスは述べています。
- テック系の人材を主に募集。Amazonが、米国の6都市で3,500人の雇用を新たに増やす予定であることを発表しました。このニュースは、パンデミックが原因で失業率が全米で急上昇している今、特に注目すべきもの。今回の求人ではさまざまな部門での募集になるようですが、ダラス、デトロイト、デンバー、ニューヨーク・フェニックス、サンディエゴの都市での雇用が含まれます。
- 環境への配慮が恋愛も左右する。不要なCD、DVD、ゲーム、書籍などのアイテムを販売するためのオンラインマーケットプレイス「Decluttr」の調査によると、47%のミレニアル世代、Z世代は「リサイクルしない人とはデートしない」ことが分かりました。これからは、エココンシャスであることも高いアピールポイントになりそうです。
- ボートに乗りながら映画観賞。ロンドンではすでに多くのドライブイン映画館が登場していますが、今回はフロートイン映画館がお披露目に。水に面した巨大な高解像度のLEDスクリーン、ワイヤレスヘッドホン、そして16隻のエコボートに128人まで収容できる座席があります。冬はちょっと寒そう……?
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新たに公開されたQuartz JapanのPodcastの最新エピソードで、fermata inc.のファウンダーのAminaさん、中村寛子さんとの対話をお楽しみください。“女性のウェルネス”について語り尽くしています。