Thursday: MILLENNIALS NOW
ミレニアルズの今
今、世界を揺るがしているソーシャルプラットフォームといえば、中国のByteDance(バイトダンス、字节跳动)が展開する「TikTok」(ティックトック)。若者がなぜそこまでこのソーシャルメディアに夢中になるのか、 TikTokがもつ魅力をユーザー目線で追います。
2016年9月のリリースからまだ4年しか経っていないにもかかわらず、「TikTok」は世界を巻き込む、非常に強い影響力をもつ一大プラットフォームへと大成長しました。
トランプ政権は先日、安全保障上の脅威になっていることを理由に、米国国内でのTikTokのダウンロードや更新の禁止を求めましたが、ミレニアル世代の47%とZ世代の59%は、TikTokを禁止すべきではないと回答。一部のユーザーはTikTok上で“反乱”を起こし、トランプ大統領の2020年キャンペーンアプリに対する否定的なレビューを投稿することで報復しました。
米ソフトウエア大手のOracle(オラクル)と米小売り大手のWalmart(ウォルマート)が提携し、同アプリの米国事業をサポートすることが決定し話題にもなりました。“大人”たちは国を絡めた政治的な視点から、TikTokを巡って熾烈な戦いを繰り広げています。
しかし、実際のユーザーの多くは“若者”です。彼らにとって、TikTokは自身を表現し、人とのつながるための場所。とくにパンデミックによって社会的に孤立するなか、このアプリは若者の生活と切り離せない存在になっているのです。
MUST-HAVE
若者の必須アプリ
調査会社「GlobalWebIndex」によると、現在、世界のTikTokユーザーの41%は16歳から24歳で、56%が男性、44%が女性です。また、TikTokの全世界のオーディエンスの約50%は34歳以下で、18歳から24歳は26%の割合に。
2019年のTikTokの利用時間全体の80%は、中国のユーザーが占めているといいます。また、米国の月間アクティブユーザー数は1億人を超えており、Z世代とミレニアル世代がその数字を支えています。
最新の調査では、ミレニアルズ世代のおよそ4分の1、Z世代に至っては半数以上が利用していることがわかりました。また、今年2月時点では両世代において35%だったアプリの使用率は、パンデミックの影響で4月には52%に増加しています。
ダウンロード数も伸びています。調査会社のSensor Towerによると、全世界でのダウンロード数は2020年第1四半期、App StoreとGoogle Playで3億1,500万以上に。4月末の段階で合計20億回を上回ったといいます。
アプリが禁止される前のインドでは、6億1,100万ダウンロード(全体の30.3%)を記録。中国のインストール数(中国版であるDouyin)は第2位で、現在までに1億9,660万件(全ダウンロード数の9.7%)を記録しています。
GET INFO
ニュースはTikTokで
35歳以下の若い世代が、ほかの上の世代とは違ったやり方で情報やニュースを得ている点にも注目してみましょう。
『YPulse』によると、米国ではZ世代の27%とミレニアル世代の26%が、ソーシャルメディアが主要なニュースソースだと回答。とはいえ、それぞれの世代が利用するプラットフォームはまったく異なります。
Z世代はInstagram、YouTube、Snapchat、TikTokを使ってニュースを入手する場合が多くなっています。Reuters Instituteによると、25歳未満がニュース摂取に最も利用しているアプリは、ほとんどが動画優先のプラットフォーム。Z世代はテキスト(43%)よりも動画(57%)でニュースを得ていると答えています。
一方、ミレニアル世代がニュースに利用しているソーシャルプラットフォームのトップは、依然としてFacebook。Z世代にとってはすでに化石となりつつありますが、ミレニアル世代はより信頼して使用しているという結果になっています。
TikTokに関しては、Z世代の51%が同アプリからニュースや情報を得ていると回答していることから、TikTokに対する依存度が高いことがうかがえます。
『FOX Business』によると、“ニュース”に関連したハッシュタグや #news は約1年間で58億回見られているといいます。その他、ニュースハッシュタグ #tiktoknews は約37億回視聴、#technews は約1億3,700万回視聴されています。
こういったニュースの一部には、主要なネットワーク、政治的なスピーチ、インタビュー、その他の政治的なイベントからの簡単なクリップが含まれています。しかし、その多くは、リベラル派と保守派の若者たちが、その日のニュースについてそれぞれの見解を述べている解説動画です。短い尺に慣れている若者にとって、「15秒」という時間に込められたメッセージが、強く脳裏に残るのかもしれません。
アプリのニュースコンテンツを頻繁に利用している17歳の高校3年生のローガンは、『FOX Business』に対して「TikTokは自分があまり知らないトピックへの興味を掻き立てることが多く、社会正義についてのビデオを見ると、そのトピックに興味をもつようになります。でも、見ているものの真実を常に知っているとは限らないので、ファクトチェックが必要です」と話しています。
WITH MUSIC
音楽との蜜月関係
TikTok上で動画を投稿する際、音楽は重要な役割を果たします。
米国のZ世代の52%がTikTokやTrillerといった動画アプリを毎月利用しており、そのうちの48%が音楽アーティストに関するビデオを視聴していることが、MRC Data/Nielsen Musicによる調査「U.S. Music 360レポート」(調査期間:6月8日〜7月6日)によって明らかになりました。
『billboard』によると、TikTokによって、アリゾナ・ザーヴァスの「Roxanne」とトーンズ・アンド・アイの「Dance Monkey」は「ビルボードホット100」のトップ10にチャートイン。セイントJHN、サーフェシズ、トレバー・ダニエルは、同アプリのおかげで人生が変わったといいます。
TikTokでは、インフルエンサーたちによるリップシンク動画も人気です。たとえば、19歳のベラ・ポーチは、プラットフォーム上で現在3,060万人のファンを抱えていますが、対するK-POPスター、BTSとBLACKPINKのフォロワーはそれぞれ2,110万人と1,820万人。曲を“宣伝”している若いインフルエンサーの方が、彼らがリップシンクするミュージシャンよりも人気があるともいえます。
RCA Recordsのシニア・デジタル・マーケティング・ヴァイス・プレジデントであるタレク・アル・ハムドゥーニは『billboard』に対し、「TikTokを使うことは、ビジネスの要である非常に若い音楽リスナーにリーチするための素晴らしい方法です」と述べています。
WANTS TO BE
インフルエンサー希望
TikTokは、ほかのソーシャルプラットフォームと違って、“ゆるさ”や“素を見せること”で共感を得やすいのも魅力のひとつかもしれません。こういったメリットを使うことで、「TikToker」を目指す若者は多くいます。
『DIGIDAY』は、「TikTokは、起業家やインフルエンサーになりたいと思っている世代にとってのプラットフォーム。YouTubeよりもTikTokの方が、フォロワーをつくるのは簡単」とする若者向けマーケティングコンサルタント会社GirlZのCEO、アディソン・ブレグマンの言葉を紹介。
また、TikTokは「志をもったZ世代のインフルエンサーが自分の投稿をバイラルさせやすい」とコミュニティプラットフォーム「Zebra IQ」のCEO、ティファニー・チュンはコメントしています。
たとえば、現在、TikTokでフォロワー数1位を誇るのは、ダンサーでもあるチャーリー・ダミリオ。米・コネチカット州ノーウォーク出身の16歳で、現在フォロワー数は8,970万人。69億の「いいね!」を獲得しています。
彼女は開始から1年足らずでフォロワーを2,400万人集め、2020年のスーパーボウルでのSabraの広告に出演するまでになりました。また、彼女は「TikTokで有名になった」と同時に、ファッションの世界への道を切り開いた最初の注目すべき人物とも言われています。
ダメリオは現在、元ソニー・ミュージック幹部が立ち上げたマネジメント会社Outshine Talent(アウトシャイン・タレント)とnited Talent Agency(ユナイテッド・タレント・エージェンシー)と契約しています。ちなみに、姉で19歳のディクシー・アメリオも3,930万人のフォロワーを誇るインフルエンサーです。
また、TikTokを中心としたインフルエンサー同士の“繋がり”も拡大しています。ロサンゼルスを拠点に、TikTokerが集まるコンテンツクリエーター集団「Hype House」も作られました。
Hype Houseは、チェイス・ハドソン(別名:リル・ハディ)とトーマス・ペトローが中心となり、2019年12月に設立。現在、19人のメンバーがいて、アレックス・ウォーレン、チャーリー・ダミリオ、ディクシー・アメリオ、ライランド・ストームズ、アバニ・グレッグなど、TikTokで一躍有名になった人物が揃います。
彼らの目的は、TikTok、YouTube、Instagramのための動画制作を協力し、お互いのプラットフォームや個人のブランドを促進すること。まだ10代が多いチームですが、「助け合い」の精神でタッグを組んでいるようです。
FOR SOCIETY
社会のために
TikTokを使う若者、特にZ世代は、政治や社会的貢献に対する意識が高いことでも知られています。
2019年の「Irregular Labs」のレポートは、Z世代の4分の3近くが、政治的・社会的に関与していることが自分のアイデンティティにとって非常に重要であると考えていることを明らかにしました。
Z世代とミレニアル世代は、気候変動や銃規制、人種差別問題に対する自らの信念と情熱を共有するために、大規模な抗議行動を組織・参加してきました。
その最たる例が、Black Lives Matter(BLM)。アメリカを中心として繰り広げられた活動の多くは10代の若者や若年層によって組織されたもので、現在も変化を求める声を上げ、街頭で抗議活動を行っています。
『Teen Vogue』は、致命的なパンデミックの最中にあっても多くの若者が命がけで抗議活動を行っていることの重要性を指摘しています。
Views on Americaのレポートによると、13~18歳の55%が何らかのかたちで #BlackLivesMatter に参加したことがあることがわかりましたが、これらの若い世代は、街頭デモなどの物理的な行動だけでなく、オンラインでの活動にこそ意味を見出しています。
こうしたデジタル・アクティビズムを、自己満足のために社会運動に参加する「スラックティズム」として、怠惰だとみる向きもあります。しかし、2015年の調査によると、62%の若者が、自分の声はオフラインよりもオンラインの方が聞き取りやすいと考えており、アクティビズムをデジタルに持ち込むことで真の変化を起こす方法を見つけようとしている人が増えていることが明らかになっています。
TikTokにおける #blacklivesmatter は、約22億回再生されています。投稿されているコンテンツは「安全に抗議する方法のヒント」から、現場での抗議活動に参加するよう促すものや、人種差別に対する教育リソースまでさまざま。まるで、それ自体がひとつのプラットフォームのようです。
先出のTikTokフォロワー数第1位のインフルエンサー、チャーリー・ダメリオも、積極的に活用。BLMについて語り、寄付を呼びかけ、人種差別を知るための知識を投稿しています。彼女は「インフルエンサーとしてプラットフォームを与えられた以上、今、世界の人種差別問題についてみんなに知らせなければならない」と、CNNに対して述べています。
LEARN FINANCE
お金を学ぶ
TikTokは、「パーソナルファイナンス」を学ぶ場所としても利用されています。
『TODAY』によると、「Her First 100K」の創設者である26歳のトリ・ダンラップは、7月中旬にTikTokでパーソナルファイナンスのヒントをシェアし始めたばかりですが、すでに55万人以上のフォロワーを獲得しているようです。
ダンラップは貯蓄や投資の知識を噛み砕いて説明する動画を公開していますが、学校では得られない、金融に関する教育をZ世代が望んでいることの顕れだと言います。
100万人のフォロワーを抱える32歳の元ファイナンシャル・アドバイザーのハンフリー・ヤンは、投資などの概念を説明した動画を公開。ハンフリーは、「そんなに多くの人々が、パーソナルファイナンスに興味をもっているとは思わなかった」と、『TMRW』に対して述べています。
米国心理学会の2018年の調査によると、Z世代の81%が、お金は自分にとって大きなストレス要因であると答えています。TikTokのようなソーシャルプラットフォームで手軽に学び、日常に取り込むことで、彼らは少しばかりの安心を得ているのかもしれません。
This week’s top stories
今週の注目ニュース4選
- 大麻ベイプ企業がブームに。世界的なパンデミックの影響で大麻への関心が高まり、デバイスメーカーは記録的な売上を記録しています。数社が「TechCrunch」に語ったところによると、スタートアップから大手メーカーまで、パンデミックが始って以来、自社の売上が急上昇しているとのこと。一部の企業のCEOは、消費者の需要が高まったことから、国家レベルでの合法化が推進されるのでは、と見ています。
- Nordstromが、毛皮などを取りやめへ。米・大型百貨店チェーンのNordstromはHumane Societyと提携し、リアルファーおよびエキゾチックレザーを使用した商品の店舗/オンラインでの販売禁止を決定しました。クロコダイルやパイソン、オーストリッチなどのエキゾチックレザーの販売禁止は、米国を拠点とする小売業者として初めてのケースになるといいます。
- グレタさんだけではない。地球を救うために活動している若きZ世代のアクティビストは、グレタ・トゥーンベリだけではありません。「VICE News」では、ジンバブエ、アラスカ、中国など、気候変動の影響を直接受けている地域で活躍する、若い活動家たちに話を聞いています。
- ビリー・アイリッシュ、新作ドキュメンタリーを発表。R.J. カトラーが監督を務めた新作『Billie Eilish: The World’s a Little Blurry』が、2021年2月に劇場公開されることになりました。同作は、Apple TV+でも公開が予定されています。
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