Millennials:スニーカーは経済を回し続ける

Millennials:スニーカーは経済を回し続ける

Thursday: MILLENNIALS NOW

ミレニアルズの今

Z世代やミレニアル世代を惹きつけるトピックに事欠かないスニーカー業界。拡大し続ける市場はどのように変化し、若者たちを夢中にさせ続けているのでしょうか? また、スニーカー業界の新しいストラテジーとは?

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ストリートだけではなく、ここ数年はラグジュアリー業界も進出し始めるなど、新たな道が切り拓かれているスニーカー。また、根強いスニーカーコレクターは、リセール業界においてもなくてはならない存在になっています。

COVID-19のパンデミックによって人々の購買動向は変化していますが、スニーカー業界は変わらず強いようです。

たとえば、『PYMNTS』によると、ニューヨークを拠点にスニーカーを展開するFoot Locker(フット・ロッカー)は、8月1日に終了した第2四半期の店舗売上高が18%増加したと報告。誰もが今年の上半期はスニーカーの売上が低迷するだろうと予測していましたが、予想に反した結果となりました。

SNEAKER INDSUTRY

拡大する市場

調査会社Statistaのレポートによると、2019年のフットウェア市場の売上高を各国別にみると、米国が約912億ドル(約9.6兆円)で世界最大の市場になりました。中国は約647.7億ドル(約6.8兆円)と2位につけていますが、一方で約133億足のシューズを生産しており、生産量としては1位になっています。

なお、調査会社Grand View Researchによると、2025年のフットウェア市場の売上高は世界で2,699億ドル(約28.4兆円)に達すると予測されています

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世界での売り上げシェアを年代別で見ると、2019年では25~34歳の占める割合がもっとも多く、33.3%を占めています。また、18〜24歳は23.2%で、若者世代からも高い支持を得ていることが伺えます。

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スニーカー業界といえば、大手企業がひしめき合っていますが、2019年、Nike(ナイキ)はフットウェア部門の売上高が全世界で約240億ドル(約2.5兆円)と、Adidas(アディダス)、Puma(プーマ)を抑えて圧倒的なリードを保っています

また、同年、TJXは417億ドル(約4.4兆円)の売上高でアパレル/フットウェア小売業の世界トップ企業に。アウトドアを含むオールジャンルのフットウェア企業に関しては、ドイツのDeichmannが2019年に58億ユーロ(約7,100億円)で、世界最大の収益を計上しています。

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そして、2017年の世界のスニーカー市場全体の価値は約625億ドル(約6.6兆円)で、2024年には978億ドル(約10.3兆円)に達すると予測されています

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FOR YOUNG GENERATION

若者のスニーカー好き

6,000万人のユーザーをもつ米ソーシャルコマースマーケットプレイス「Poshmark」の新しいレポート「2020: The Year of Social Shopping」(8,500人以上の米国とカナダの消費者を対象とした調査の分析)によると、同サイトのユーザーの20%を占めるZ世代は、定番ブランドであるBrandy Melville(ブランディ・メルヴィル)、高級ブランドではGucci(グッチ)に加えて、Adidasをお気に入りのブランドの1つに挙げています。

同プラットフォーム最大のシェアを占めるミレニアル世代のあいだでは、Nikeが人気で、Madewell(メイドウェル)とAnthropologie(アンソロポロジー)と並んでラインナップされています。

また、同レポートは、Z世代が全世代の中でもリセール品やファストファッション、ラグジュアリー品へ偏向していることを示しており、彼らが常に新鮮なルックを求めていることがわかります。

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さらに、投資銀行のPiper Jaffray(パイパー・ジャフレー)が半期ごとに実施した最新の調査「Taking Stock With Teens」でも、平均年齢15.8歳の約9,500人の回答者の消費動向をリサーチした結果、NikeやAdidasといったアスレチックブランドが上位にランクインしていることが分かっています

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近年のアスレジャー人気により、ヤングセレブをはじめ、若者にとってスニーカーブランドは必須の存在になっているのです。

LUXUARY MARKET

ラグジュアリーも席巻

スニーカーブームの煽りだけでなく、昨今のストリートカルチャーとラグジュアリーとが融合するトレンドから、先述したGUCCIをはじめ、BALENCIAGA(バレンシアガ)やCHANEL(シャネル)、Dior(ディオール)、Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)など、ラグジュアリーファッション業界でもZ世代やミレニアル世代へ向けて、多様な価格帯でスニーカーを販売するようになりました。

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2018年4月、Versace(ヴェルサーチェ)は、ロサンゼルス拠点に2015年に設立されたスニーカーのマーケットプレイス「GOAT(ゴート)」とコラボレーションし、シューズデザイナーのサレへ・バンバリー(Salehe Bembury)がデザインした「Chain Reaction(チェーン・リアクション)」を発表。同サイトでエクスクルーシブに展開され、920ドル(約9万6,750円)という高額な価格設定にもかかわらず、24時間以内に完売したといいます。

消費者からすれば、スニーカーは高級ブランドのハンドバッグのように利益率が高く、幅広い層にアピールでき、コストパフォーマンスがよく、さまざまな場面で着用できます。『Business of Fashion』によると、スニーカーの開発プロセスには最初のうちは費用がかかりますが、既製服よりも高い割合で完売する傾向があり、店舗でも販売スペースを取らないため1平方フィートあたりの売上は高くなるといいます。

スニーカーとEコマースとの相性のよさも、値段が多少高くても売れる理由の一つとして挙げられるでしょう。ラグジュアリーオンラインサイト「Net-a-Porter(ネッタポルテ)」のグローバル・バイイング・ディレクターであるエリザベス・フォン・デル・ゴルツ(Elizabeth von der Goltz)は、2018年の『Business of Fashion』のインタビューに対して、デザイナーズスニーカーがスニーカーの売り上げ全体の3分の1を占めている話しています

2018年春夏のラグジュアリースニーカーの売上高は、1年前と比較して50%増加しているともいいますが、同じく、ラグジュアリーオンラインサイト「MatchesFashion(マッチズファッション)」では、2017年から2018年にかけて高級スニーカーの売り上げが前年比で2倍に伸び、全体の売り上げが44%増加したと、同サイトのバイイングマネジャー、キャシー・スマート(Cassie Smart)は述べています。

RESALE BUSINESS

変わるリセール業界

そして、スニーカーと切り離せないのが、リセール業界。投資銀行のCowenは、2019年に米国においては20億ドル(約2,100億円)の価値があると評価し、2025 年までに60 億ドル(約6,300億円)の市場になると予測しています

しかし、COVID-19によるパンデミックによって、当初はその需要が危ういものになりました。

VOGUE BUSINESS』によると、2020年の最大のリリースの一つとされる「Off-White × Air Jordan 5」のリセールバリューは、パンデミックが発生した2月から3月の1カ月間でほぼ半減したといいます。2月15日に発売された後、224ドル(約23,560円)で販売されていたこのスニーカーの価値は、2月には1,699ドル(サイズ10)という高値に。しかし、それ以来、その価値は下落する一方で、3月末には653ドルという低価格になりました。

専門家は、パンデミック当初の消費者心理として、スニーカーに対する優先順位が低くなってきていることは当然のことだと言います。マーケットリサーチ会社Mintel(ミンテル)のシニア・リテール・アナリストであるチャナ・バラム(Chana Baram)は『VOGUE BUSINESS』に対して、「最新のドロップやコラボレーションのことを考えている人はほとんどいないでしょう。多くの人は仕事や経済のことを心配していて、お金を使うよりも節約したいという気持ちになるはずです」と語っています。

とはいえ、一部の限定スニーカーやレアなスニーカーは、パンデミックの影響を受けていないようです。カニエ・ウェスト(Kanye West)が手掛け、2014年2月に発売された「Nike Air Yeezy 2 Red October」の価格は、今年1月の8,000ドル(約84万円)から3月には9,500ドル(約99万円)まで上昇していました(現在は価格が変動しています)。

PHOTO VIA STOCKX
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スニーカーカルチャーブランドB/R Kicksのストラテジー・ディレクターを務めるジョン・マルセロ(John Marcelo)は『VOGUE BUSINESS』に対して、「パンデミックにもかかわらず、バイヤーはスニーカー、特にレアなスタイルに興味をもつだろうと考えている」と話します。

また、ロンドンを拠点に活動するDJで、スニーカーヘッズでもあるキッシュ・カッシュ(Kish Kash)は、「インフレした価格でスニーカーを購入している人の多くは、履くために購入しているのではなく、コレクションするために購入している」と述べています

FOCUS ON IT

投資家も注目

パンデミックによって実は拡大しているリセール業界は、ブランドや小売業者にとって新たな流通チャネルとして注目されています。

Cowenのアナリスト、ジョン・カーナン(John Kernan)は、パンデミック期間にスニーカーのリセール市場が加速したと『Yahoo! Finance』に語っています。「パンデミックによって、“スニーカーヘッズ”はよりリセール業界に関与するようになったようです。市場は新しい消費者を獲得しています」

2019年2月、Foot LockerはGOATに1億ドル(約105億円)を投資。Eコマースサイト「Farfetch(ファーフェッチ)」は2018年12月、LVMHが出資するマーケットプレイスの「Stadium Goods(スタジアム・グッズ)」を2億5,000万ドル(約263億円)で買収しています。NikeやAdidasのようなスポーツアパレル企業もこれらのサイトで直接商品を販売し始めており、リセールのプラットフォームがブランドパートナーにもたらす価値を実証しています。

PHOTO VIA GOAT
PHOTO VIA GOAT

今、若者から多大な支持を得るGOATは、投資家も注目するプラットフォームでもあります。エディ・ルー(Eddy Lu)がCEOを務める同社は今年9月、新たに1億ドル(約105億円)を調達し、企業価値はなんと17億5,000万ドル(約1,845億円)になりました。

2019年にローンチしたAR(拡張現実)機能では、会員ユーザーは自身のモバイル端末からバーチャルでシューズを試着できるようになりました。同社は、コミュニティをサポートするための機能への投資も視野に入れているといいます。

GOATのライバル企業でもあるStockX(ストックX)も、昨年末、1億1,000万ドル(約116億円)のラウンドで10億ドル(約1,050億円)の評価額を得ています。

さらに、10月12日、eBay(イーベイ)は、Sneaker Conを運営するブランドの子会社であるSneaker Con Digitalと提携し、スニーカー販売における真贋鑑定を提供することを発表。対象となるのは、新品かつ100ドル(約1万500円)以上で販売されるスニーカーで、10月より部分的にスタートしていくといいます。

eBayはすでに2019年には600万足のスニーカーを販売しており、活況を呈するスニーカービジネスをリードしています。このリセール市場への参入がどのようになっていくのかは見どころでもあります。


This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. IKEAが家具を買い取り、中古品として再販へ。IKEAは10月13日、「2030年までに、循環型で気候変動に配慮したビジネスを実現する」という目標の一環として、「Buy Back(バイバック)」と題した取り組みを実施すると発表しました。これは、顧客が家具を売ると、店舗で使えるクーポン券を手に入れることができるというもの。なお、クーポン券の金額は、売った家具の状態によって異なるといいます。同プログラムは27カ国で導入され、11月24日からスタートする予定。
  2. コロナウイルスの影響でうつ病や不安感が増加。今年9月、ミュージシャンユニオンの調査によると、英国のミュージシャンの3分の1が雇用の不確実性や経済的苦難を抱えて支援の不明確さに直面しており、「この業界を離れることを考えたことがある」ことが明らかになりました
  3. TikTokで見る新たなスケートカルチャー。何十年もの間“男性の世界”であったスケートカルチャーですが、TikTokのスターの多くは女性やクィアです。今では、#girlswhoskateや#skatergirlなどのハッシュタグが常に増え続けており、トリックを披露したり、スケートを楽しむ動画が投稿されています
  4. ジェンダーニュートラルにフォーカスした、Adidasの新コンセプトショップ。2019年にロンドンのオックスフォード・ストリートにオープンした旗艦店とは異なり、ソーホーに10月9日オープンしたコンセプトストアは、Adidas Originalsの18〜24歳の顧客をターゲットにしています。Mckinseyによると、Adidas UKの副社長クリス・ウォルシュ(Chris Walsh)は、この層を取り込むために、同社は包括性とサステイナビリティに焦点を当ててきたといいます。

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