Africa:たたかう若者たちの武器

Africa:たたかう若者たちの武器

Wednesday: Africa Rising

躍動するアフリカ

デモはまだ終わっていません。そして、痛ましいことに死者も出ています。今日の「Deep Dive」ニュースレターは、ナイジェリアの悪名高い警察組織「SARS」に抵抗して行われていた抗議活動を支えていた、テックや組織について。英語版はこちら(参考)。

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Image: REUTERS/TEMILADE ADELAJA/FILE PHOTO

それはCOVID-19ではなく、“暴力”に対するロックダウン下で起きた悲劇でした。20日(現地時間)、ナイジェリアの最大都市ラゴスで、複数のデモ参加者が治安部隊とされる集団によって殺害されたのです。

ナイジェリアでは、警察の特殊部隊「対強盗特殊部隊(SARS)」に抗議する大規模なデモが、約2週間前から各地で行われてきました。

デモは、11日(現地時間)にSARSの解散が発表されても止みませんでした。州内の各都市の活動がさらに激化するなか、ラゴス州知事のババジデ・サンウォオル(Babajide Sanwo-Olu)は20日、「必要不可欠な仕事をする人を除き、ラゴスでの常時外出を禁止」する命令を下します。

発砲が起きたのは、その数時間後のことでした。外出禁止令を無視して座り込みなどのデモ行為をしていた1,000人以上の若者に向けて、AFPによると「正体不明の男たち」が、発砲を開始しました。

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Image: REUTERS/TEMILADE ADELAJA

Online and offline

若者たちの武器

ナイジェリアの若者たちによる抗議活動は、オンライン、オフライン双方で大規模に展開されてきました。

彼らの矛先となるSARSによる「悪行」は、さまざま報告されています。

ノートパソコンやスマートフォンを持っているというだけで、その若者をオンライン詐欺師であると告発・拘束し、釈放するかわりに(任意で)法外な保釈金を要求、ときには銃を突きつけATMでの引き出しを強要。SARSのターゲットは若い女性にもおよび、売春婦(ナイジェリアの一部地域で違法とされている)であると決めつけ証拠が乏しいまま拘留。拘留中に性的暴行を受けたという複数の報告もあります。

現在も続く抗議活動において象徴的な点は、若者がオンラインとオフラインの間をシームレスに接続していることにあります。彼らは主に「Twitter」と「WhatsApp」を用い、全国各地に抗議の波を集め、動員してきました。例えば、ある場所で抗議行動を主催しようとするとき、Twitterで場所を共有し“援軍”を要請するのです。

あるいは、オンライン上で事前に“戦略的な場所”を指定し、人々に抗議に来るように呼びかけるケースもあります。例えば10月12日午前6時前には、何千人もの若者たちが、ラゴス市の高級住宅街レキとビジネス街とを結ぶ料金所を閉鎖しようと集合しました。結果、何マイルにも及ぶ交通渋滞を引き起こし、市内の活動に深刻な混乱をもたらしたのです。

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Image: REUTERS/SEUN SANNI

同様の抗議行動は、州外にも拡大しています。それらを組織化する重要なツールとして活用されているのが、ソーシャルメディアです。何百万人ものナイジェリア人の若者にとってSARSの振る舞いは、個人的に体験し、あるいは経験したことがある人を知っているというほど身近なものだったのです。

they are decentralized

分散化こそ、力

ソーシャルメディア分析会社Afriques Connectéesによると、ハッシュタグ〈#EndSARS〉をつけたツイートは、先週末だけで2,800万件にも及びます。

このハッシュタグキャンペーンは、国内だけでなく、世界に向けても発信されたものでした。英・プレミアリーグのサッカー選手にはじまり、カニエ・ウェスト(Kanye West)やP・ディディ(P Diddy)のようなヒップホップスターから、オスカーを受賞したハリウッド女優まで、著名人がハッシュタグを共有し、TwitterやInstagram、Facebookで支援しています。

発信の相手はセレブだけではありません。ナイジェリアの若者たちは、国際的な報道機関がこの問題にスポットライトを当てない限り、当局はこの重要な社会問題に対して無関心なままだと考えています。そのため、ハッシュタグ付きツイートの多くはBBCやCNN、アルジャジーラ、ニューヨーク・タイムズなど大手メディアの注目を集めることを目指していました。結果、これらのメディアのほとんどが、2012年1月の「ナイジェリアを占拠せよ(Occupy Nigeria)」以来の取材を実施しています。

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Image: REUTERS/TEMILADE ADELAJA

抗議活動には名の立った個人も参加しています。が、活動の多くがオンライン上で有機的に行われており、キャンペーンを率いる「リーダー」となる人物がいないことは、注目すべき事実といえるでしょう。

従来のナイジェリアにおける抗議行動は、「全国労働会議」や「学生組合」のようなグループが中心となって行われていました。が、政府側はこれらのグループの指導者と「交渉」することで抗議行動を収束させようとしてきました。結果生まれるのは、不当な妥協です。

「今起きている抗議活動は“分散化”されている。『指導者』や典型的な『活動家』によって指示されてはいない」と、自身アクティビストであり、デジタル権利擁護企業Paradigm Initiativeのファウンダー、ベンガ・セサン(Gbenga Sesan)は言います。

Crowdsourcing and crowdfunding

適材適所

組織と同様に、資金もまた、分散化されています。

抗議活動の費用は、主に国内外に住むナイジェリア人による寄付で賄われています。また、国内のテック系スタートアップ(そのほとんどが若者を中心とした企業)も、このキャンペーンを担っています。実際に寄付するだけでなく、例えばあるフィンテック系スタートアップはクラウドファンディングのプロセスを容易にするための寄付リンクを設けています。

あるいは、抗議行動をきっかけに結成された若いフェミニストのグループ「フェミニスト連合(Feminist Coalition)」は、現金およびビットコインによる寄付として、4日間で約5万5,000ドル集めました。

これらの寄付金は、抗議者に食料や水を提供することに充てられているようです。抗議会場では、応急処置をはじめとする医療行為のための医療品が入手できるようになっており、病院代の支払いにも使われています。

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Image: REUTERS/TEMILADE ADELAJA

若い弁護士たちの活動も目立っています。彼らの無償の活動は、判決が出ないまま法的なサポートを得られず不法に拘留されることが横行していることを考えると、大きな機能を果たします。

弁護士の一人であるモエ・オデレ(Moe Odele)は、「今日は400人以上のボランティア弁護士が待機している」と教えてくれました。「ナイジェリアの上級弁護人や経験豊富な刑事訴訟弁護士が進行役となり、弁護士のためのトレーニングセッションを行ったところです」

ナイジェリアは、1980〜90年代にかけて、残忍な軍事政権が支配していました。ゆえに、ある世代のナイジェリア人にとって、公共の場での抗議行動は想像もつかなかったことでしょう。しかし、35歳以下の若者は、そうした独裁政権を経験したことがありません。彼らは恐れずに発言し、デジタルツールを活用して自分たちの声を伝えて続けています。

TwitterやWhatsappは、この国の低速ネットワークでも十分機能します。ゆえに、ナイジェリアに限らず、アフリカ大陸全体において政治への意識を高める重要なプラットフォームとなっています。一方で、アフリカ各国の政府は、法律を持ち出しオンライン検閲計画を強化して対応しようとしています。

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headlines from Quartz Africa

今週のヘッドライン

  1. 電気のない生活に逆戻り。国際エネルギー機関(IEA)の発表した最新データによると、COVID-19による経済的影響を受け、アフリカで電気のない生活をしている人口が2016年の水準に戻ると予測されています。同推計によると、アフリカ最大の経済大国ナイジェリアでは1億人以上の人々が基本的な電力サービスを受けることができず、失業率の急上昇と景気後退が迫っているとされています。──October 21
  2. 世界基準の「コンセント」。南アフリカを訪れたことがある人であれば、ノートパソコンを使おうにもこの国特有のソケットにアダプタが収まらず、途方に暮れたことがあるはずです。その電気プラグとソケットが、引退しようとしています。最新の国際規格に基づいた新しいプラグとソケットは、ヨーロッパタイプの2ピンプラグに対応しています。──October 17
  3. 科学者たちの危惧。ケニアの地溝帯の湖の高水位が止まりません。特にバリンゴ湖とナイバシャ湖の周辺では、浸水被害が相次ぎ、地域住民が避難を余儀なくされています。アフリカの地溝帯には多くの湖があり、ケニア東部には、8つの湖が連なっています。国際的に重要な湿地帯として認められており、重要鳥類保護地域でもあるこれらの湖ですが、今年はバリンゴ湖の水位上昇によるものだけでも5,000人以上が避難し、学校、病院、ホテル、道路が被害を受けています。──October 17

(翻訳・編集:年吉聡太)


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