Deep Dive: Impact Economy
始まっている未来
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毎週火曜の「Deep Dive」では、今世界が直面しているビジネスの変化を捉えるトピックを深掘りしています。今日は、「これからの会社のあり方」の一例として、先日急逝したザッポス(Zappos)のCEOのトニー・シェイも言及していた「B Corp」が企業にもたらす価値をお伝えします。
あなたもきっと、「B Corporation」という言葉に聞き覚えがあるはずです。「B Corp」(ビーコープ)は2006年に生まれたコンセプトで、2020年現在、世界で3,200を超える企業がその認証を受けています。数こそ少ないものの、認証を受けた企業のリーダーたちは、企業活動において「利益と目的(profit and purpose)」をバランスよく達成することをミッションとしています。
あるいはB Corpのことを知らなくとも、B Corpが手がける製品を知っている人は多いはず。最近では、ボディショップ(Body Shop)のほか、英国メディアの『Guardian』がB Corp認証を受けました。ほかにもベン&ジェリーズ(Ben & Jerry’s)やスムージーメーカーのイノセント(Innocent Drinks)、キックスターター(Kickstarter)や家庭用洗剤メーカーのSeventh Generation、アパレルブランドのアスレタ(Athleta)、アイリーンフィッシャー(Eileen Fisher)、パタゴニア(Patagonia)が名を連ねます。ダノンヨーグルトやエビアンウォーターの製造元であるフランスの食品大手ダノン(Danone)も、そのひとつです。
先日急逝したザッポス(Zappos)のCEOのトニー・シェイは、B Corp認証を得るための手引き書ともいえる『The B Corp Handbook』に寄せて、「短期的な利益を追求するだけでなく、『よいことを為すための力』としてビジネスを利用することが、消費者や従業員、地域社会、環境、ひいては自社の長期的な利益につながる」と語っています。
「B corpであること」は、目的へと邁進するあらゆる企業を鼓舞してくれる──。今回は、昨年10月にロンドンで開催されたカンファレンス「B Inspired」や『Quartz』によるインタビューのなかから、B Corp認証を受けた企業を率いるリーダーたちが、それによっていかに自社やその製品、あるいは自らのリーダーシップのスタイルを変えられたのかについて語ってくれた内容を、紹介します。
it encourages great hires
意味ある雇用を生む
B Corpの認証は、企業にとって3つの意味をもたらします。
- 自社のカルチャーや慣行が健全かどうかを深く掘り下げること
- その記録が、B Corpの運営団体「B Lab」 によって検証されること
- サステナビリティに関する基準を維持または改善することを明文化し誓約すること
では、これら3つのうち、いったいどれが「消費者にとって重要」なのか? その問いに対して「『どれでもない』と断言できます」と言うのは、英国で人気のマタニティ&キッズブランド「ジョジョ・ママン・ベベ(Jojo Maman Bébé)」の創設者兼CEOのローラ・テニソン(Laura Tenison)です。
1993年に同ブランドを設立したテニソンは、消費者は「目的」には注意を払わないのだと言います。
「ソーシャルメディア上でわたしたちの慈善活動やエコへの取り組みに関する情報を伝えたところで、消費者から反応を得られることはほとんどありません。みな、『かわいくてしょうがない』だとか『赤ちゃんを抱っこしたい』と思わせるような話題を求めているのです」
しかしながら、彼女は、2016年にB Corp認証を受けたことで、同社のあらゆる部署における採用が増えたとも言います。「B Corpになったことで、入社を希望する従業員の質は向上しています」と言うテニソン。彼女は、「目的意識」が管理職のみならず、新入社員にとっても重要であると気づかされたのだと説明します。
「小売店や流通センターで働く従業員の多くは、決してスキルが高いわけではありません。しかし、彼らもまた、『自分は誰のために働いているのか』を知りたがっています。そして、実際のところ、彼らのような社員こそが、そうした価値を会社内外に言い広めてくれるのです」
It galvanizes staff and investors
はたらく人に活気を
ピッパ・マレー(Pippa Murray)は、創業間もない自身の会社でB Corp認証を得る手続きには、大いに苦労したと話してくれました。
マレーは、ピーナッツバターをはじめとするナッツ製品を製造する「ピップ&ナット(Pip & Nut)」を2013年に設立、19年にB Corp認証を受けました。取り組むにあたって、彼女は当時12人だったチーム全員に作業を分担し、毎年の目標にB Corp認証を得るために求められる要件をプロットしていきました。
マレーによると、B Corp認証を目指すことが、自分たちにとってどんな投資家がふさわしいかを判断するのに役立ったといいます。
同社の事業計画書には、B Corp認証を目指すこと、そしてそれがガバナンスに常に組み込まれることが明記されています。「取り組みを理解し熱心な投資家もいれば、そうでない投資家もいます。そんななかで、どんな人たちに事業に参加してもらうべきかをチェックする強固な基準になりました」
It’s helped in hitting diversity goals
多様性を達成する
「目的について話すこと」と、「それを明文化して外部に対する説明責任を果たすこと」は、まったくの別物です。
英国に本社を置くエネルギー企業のバルブ(Bulb、2016年にB Corp認証を取得)の共同設立者兼CEOであるアミット・グドカ(Amit Gudka)は、B Corpであることで「自分たちの行動規範のトップに多様性を据えている」ことを確認し、「常にデータをもとに透明化する」ことを意識し続けられるようになったと言います。
2019年12月の同社ブログでは、多様な教育を受けた人々を雇用するなど、Bulbがダイバーシティの観点から改善していることが明らかにされています。しかし、グドカ自身も指摘するように、障害者雇用をはじめ、まだ改善の余地がみられるのも事実です。
「自分たちがどれだけ実践できているか、まだ自慢できるものではありません」と彼は言います。「しかし、B Corp認証は『勇気ある決断』ができるよう、背中を押してくれるのです」
to make braver decisions
意志決定のための勇気
2018年にB Corp認証を受けた英国のスムージーメーカーのイノセントには、ちょっと変わった起業ストーリーがあります。
遡ること1999年、創業者たちは音楽フェスにスムージー屋を出店、自分たちが「昼間の仕事」を辞めて起業すべきどうかを購入者に「投票」してもらったのです。果たして次の日、彼らは仕事を辞めて起業を選びました。そして10年後の2009年にはコカ・コーラの出資を受け、さらに10年後、コカ・コーラ所有下でB Corpの認証を得ることになります。
2013年から同社CEOを務めるダグラス・ラモント(Douglas Lamont)によると、自社にとっての「目的」が、B Corp認証を得ることで、より明確になったと言います。そして、自らも「より勇敢なリーダー」になったのだと語ります。
「CEOをはじめチームを率いる立場にいると、何をするのが正しくて何をするのが間違っているのか、あるいはこれがビジネスにどのような影響を与えるかといった、答えのない問いにしばしば直面します」とラモントは言います。
「B Corpであることで初めて、ただ目的に取り組み、実行することができたのだと思います。ボランティア活動を実施するにしても、ジェンダーニュートラルなポリシーを実施するにしても、長い間躊躇していたすべてのことに対して、勇気ある決断を下せるようになりました」
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