Borders:廃れたモールは、オフィスになる

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Deep Dive: Crossing the borders

グローバル経済の地政学

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商店にせよオフィスにせよ、「物理的スペース」はCOVID-19で縮小を余儀なくされています。グローバル企業は、そのワークスペースを考え直しているようです。毎週水曜夕方のニュースレター「Deep Dive」では、国境を越えて動き続けているビジネスの変化を追います(英語版はこちら)。

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Image: REUTERS/MIKE BLAKE

人気ゲーム「フォートナイト」などで知られるエピックゲームズ(Epic Games)が、米ノースカロライナ州にあるショッピングモールのケリー・タウン・センターを買収すると発表しました新たなグローバル本社として再開発していく計画です。

ケリー・タウン・センターの敷地面積は87エーカー(約35.2ヘクタール)で、延べ床面積は98万平方フィート(約9万1,000平方メートル)に上ります。デベロッパーは当初、既存の建物は取り壊して新たな多目的施設を建設する方針を示していました。

エピックは再開発プロジェクトの具体的な内容は明らかにしていませんが、2024年にはノースカロライナ州ケーリーにある現在の本社から移転する予定だといいます。

Driven by retail declines

物件トランスフォーム

ショッピングモールを取得した企業はエピックだけではありません。米国ではモールの集客力の低下、消費者信頼感の落ち込み、電子商取引の拡大、小売り分野を中心とした商業不動産全般でのトレンドの変化が起きており、今回の買収はこの大きな流れの一部だといえます。

不動産投資信託会社メイスリッチ(Macerich)は2019年、ロサンゼルスにある築35年のショッピングモール、ウエストサイド・パビリオンを再開発すると明らかにしました。50万平方フィート(約4万6,500平方メートル)のオフィス物件を建設する計画で、すでにグーグルと14年間のリース契約を結んでいます。

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Image: REUTERS/GENE BLEVINS

一方、マサチューセッツ州ケンブリッジの複合商業施設ケンブリッジサイドは、3階の14万平方フィート(約1万3,000平方メートル)相当をオフィススペースに改築しました。ニューヨークのフルトン・センター、サンフランシスコのウェストフィールド・サンフランシスコ・センター、シカゴのウォーター・タワー・プレイスなどにも、コワーキングスペースが登場しています。

商業施設では空きスペースが増えており、商業不動産データ会社コスター(CoStar)によれば、小売店の店舗閉鎖計画は昨年だけで1万2,200軒を超えました。売り場面積では1億5,900万平方フィート(約1,477万平方メートル)に相当します。

小売り分野に占めるショッピングモールの割合は8%にとどまりますが、コスターは予定される閉鎖の3分の1以上はモール内の店舗になると予測しています。閉鎖の多くは衣料品店であるためで、この傾向は今年も続く見通しです。同社のコンサルタントのロビン・トランサム(Robin Trantham)は、「小売店舗の空室率は今後も上昇していくでしょう」と言います。

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ショッピングモールではさまざまな業種のテナントがパンデミックの影響を受けました。百貨店、衣料品店、家電量販店はいずれも実店舗での販売が落ち込んでいるほか、映画館、ジム、レストランはソーシャルディスタンシングなどの感染対策のために営業が難しくなっています。

トランサムは、パンデミックを受けて小売り物件をオフィススペースに変えるという業界の流行に拍車がかかったと説明します。なかでも、手頃な価格エレベーターへの依存度が低いという理由で低層ビルが人気を集めています。

トランサムは「ショッピングモールはクリエイティブで広いオフィスを手に入れるためのいい機会になります。職場での安全対策として今後に求められる従業員1人当たりの占有面積を増やすことも可能です」と話します。

米国ではショッピングモールを住宅やオフィスなど別の用途に改築する工事が多数行われています。ジョージア工科大学の都市デザイン学教授エレン・ダナム=ジョーンズ(Ellen Dunham-Jones)はカリフォルニア州の地元紙『East Bay Times』の取材に対し、進行中の工事以外にも、これまでに100件以上のショッピングモール再開発プロジェクトが決まった述べました

Key elements to future success

モールの未来

コスターと金融大手バークレイズのリポートによれば、住宅やオフィス、ホテルなども入った多目的施設は、小売店のみのショッピングモールよりも商業的に成功する可能性が高いようです。

適切な組み合わせを見つけることは難しい挑戦ですが、デベロッパーにとってビジネス面での利点は明らかです。トランサムは「多目的施設の小売店舗は周辺の他の物件と比べて賃料が高くなっています」と指摘します。

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Image: REUTERS/MARANIE STAAB

ショッピングモールの生き残りを巡っては、パンデミックによって経済的な打撃を受けなかった層を中心とした周辺住民の購買力も重要な要素になります。

また、オフィスや住居などに改装される前に、より緊急性の高い転用例もあります。『Wall Street Journal』の報道によると、一部の州では経営破綻した百貨店シアーズ(Sears)の店舗がCOVID-19のワクチン接種に使われていますニュージャージー州ロックアウェイのロックアウェイ・タウンスクエア・モール内の旧店舗は、巨大なワクチン接種センターに変身を遂げました。


What to watch for

撤退する「国産」アプリ

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2012年にインドで誕生したメッセンジャーアプリ「Hike Messanger」(Hike)。今月6日、ファウンダーのカヴィン・バーティ・ミッタル(Kavin Bharti Mittal)はアプリをクローズし、今後はソーシャルメディアおよびゲームに方針転換することをTwitterで発表しました。メッセンジャーサービスにおける最大の強者といえばフェイスブックが所有する「WhatsApp」で、現在のユーザー数はインドで4億以上、世界では20億を数えます。国産サービスであるHikeに寄せられていた期待は大きく、2016年には1億人以上のユーザーを獲得。中国テンセントと台湾Foxconnが主導した資金調達ラウンドで1億7,500万ドルを調達したのち、「ユニコーンクラブ」の仲間入りを果たしていました。方針転換を伝えるツイートの4日後、Mittalは「インドが国産のメッセンジャーをもつことはないだろう。(国が西側企業を規制でもしない限り)グローバルネットワークはあまりに強大すぎる」と呟いています

(翻訳:岡千尋、編集:年吉聡太)


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