Deep Dive: New Consumer Society
あたらしい消費社会
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Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週木曜夕方の「Deep Dive」のテーマは、「あたらしい消費のかたち」。今日は、パンデミック下で急成長し、いまや米国2位のECプラットフォームとなったショッピファイ(Shopify)のこれからの課題に注目します。英語版はこちら(参考)。
オンラインで買い物する際、あなたも気づかないうちにショッピファイ(Shopify)を利用していることでしょう。この「気づかなさ」こそが、eBayを抜いてアマゾンに次ぐ「米国第2位のEコマース・プラットフォーム」と言われている会社の最大の特徴です。消費者にとってShopifyは「事実上目に見えない存在」であると、共同創業者兼CEOのトバイアス・ルーク(Tobias Lütke)は、Shopifyが株式を公開した2015年の株主に宛てた書簡で述べています。
アマゾンと違い、Shopify自体がショッピングする場所ではありません。しかし、最近では「Shop Pay」を導入するなど、ショッピング体験をより快適にする方向へと小さな一歩を踏み出しているShopify。Shopifyとはは、つまり加盟店が「最小限の手間と限られた技術ノウハウ」で独自のデジタルショップをつくるためのプラットフォームで、加入者が写真をアップロードして銀行口座をリンクするだけでオンラインでの商品販売を始められます。例えば、ドナルド・トランプのグッズを販売するサイトを運営も、ワシントンDCでの暴動後に閉鎖されるまではそうやって簡単に行われていました。
オンラインショッピングが急増し、TikTokやウォルマートなどの企業と新たな提携を結ぶなど、同社の勢いはパンデミックの最中に加速しました。なにしろ、パンデミックの影響でECの時代がやってきたのですから。
against Amazon
Amazonを超えるか?
2004年、ルークと友人たちは、スノーボードをECで販売するビジネスを始めたあと、2006年にShopifyを正式に立ち上げました。当時、利用可能なソフトウェアは複雑かつ高価で、大企業向けのものばかりでした。そこで彼らは、小規模な起業家のためのソリューションを作成し、それを販売することに転向しました。
現在、175カ国で100万人以上の事業者がShopifyを利用しており、ハインツ(Heinz)やオールバーズ(Allbirds)、レベッカミンコフ(Rebecca Minkoff)などの大規模なブランドも含まれます(基本サブスクリプションプランは月額29ドル、プレミアムサービスの「Shopify Plus」は月額2,000ドルから)。
しかし、ほとんどの加盟店は小規模なのが現状。事業者の半数以上を米国に抱えているShopifyですが、アマゾンで販売することデフォルトにするよりむしろ、起業家たちがオンラインストアをつくることができればいいという考え方に至りました。
Shopifyは、自身がアマゾンの競合であるとは謳っていませんが、少なくとも対抗馬としての存在であることについては喜んで宣伝しています。
2018年、ルークは株主に宛てた書簡の中で、巨大企業が権力基盤を固めるリスクについて警告しています。2019年には、Twitter上で 「Amazonは帝国を築こうとしており、Shopifyは反乱軍で対抗しようとしている」と発言。同社はまた、中小企業向けのローンや、第三者の物流業者のネットワークを利用して倉庫保管や配送を行う「フルフィルメントサービス」などの有料機能を導入しており、新興企業がオンラインで大手企業と競争するための強力な「武器」となるサービスを提供しています。
By the digits
数字で見るShopify
🛍 106万9,000:2019年末のShopifyのプラットフォーム上での加盟店数(PDF)
💰 51億ドル(約5,290億円):2020年のブラックフライデーとサイバーマンデーの週末における、Shopifyのプラットフォーム全体でのグローバル売上高
🧐 10億ドル(約1,037億円):Shopifyがフルフィルメントサービスに投資する額
💵 17ドル(約1,750円):2015年5月21日、Shopifyが初めて取引を開始した際の株価
👍 1,069ドル(約11万1,000円): 2020年12月31日のShopifyの終値
🤔 67%:ベンジンガ(Benzinga)が2021年初頭に調査した、Shopifyの株価が2022年までに2,000ドル(約20万7,400円)に達すると確信する投資家の割合
👩💻 7.4%:2015年第3四半期の米国小売売上高に占めるECの割合
🛒 14.3%:2020年第3四半期の米国小売売上高に占めるECの割合
サブスクリプション、支払い処理料金、フルフィルメントなどのアドオンサービスの料金から生じるShopifyの収益は、パンデミックによって急増しました。ECブームを押し上げたパンデミックの影響で、Shopifyには多くの新たな事業者が参加する結果となりました。
But can it crack teleportation?
極論すれば…
Shopifyはこれまでにも企業とのパートナーシップを築いていて、事業者がプラットフォーム上で販売する商品を簡単にリストアップできるようになっています。案件は増え続け、オンラインでのリーチを拡大中。2017年以降に取引を行った企業には、以下のようなものがあります。
Shopifyの狙いは、店舗の設置から顧客への商品発送まで、起業家が直面するECの課題を解決することです。2020年10月29日に行われた同社の決算説明会で、あるアナリストはルークに、Shopifyが取り組む予定の課題は何か?と質問しました。彼は次のように答えています。
「(起業家が直面する問題は)時間と資本配分の問題だったので、まずは全体を可能な限りシンプルにすることが考えられます。 つまり、わたしたちがフルフィルメントネットワークで課題を解決するための理想的な方法は、テレポーテーションを利用すること。テレポーテーションに関連する物理学を解明して、必要なときに必要なものを机の上に出すことができれば、それは素晴らしいことだと思います」
テレポーテーションはさすがに難しいものの、その代わりに、Shopifyには2019年に買収した倉庫の自動化と管理テクノロジーを開発する「6 River Systems」があります。この倉庫保管用のロボット対応プラットフォームが、フルフィルメントネットワークを拡大する同社の計画の要となっています。
What to watch for
BumbleがIPOを申請へ
女性から最初に声をかける“レディファースト”なマッチングアプリの「バンブル(Bumble)」が、今月15日(金)、株式公開を申請しました。「ティンダー(Tinder)」の元立ち上げメンバーであったホイットニー・ウルフ(Whitney Wolfe)が2014年に創設したバンブル。2020年1月29日から9月30日までの期間の売上高は3億7,660万ドル(約392億円)で、純損失は8,410万ドル(約87.5億円)を報告されています。2019年通年では、前年比36%増の4億8,890万ドル(約508億円)の収益を上げています。取締役会の構成を見ると70%以上が女性であるということも、同社の注目すべきポイントです。
(翻訳・編集:福津くるみ)
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