Deep Dive: New Cool
これからのクール
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Quartz読者のみなさん、こんにちは。世の中にはさまざまなマッチングアプリがありますが、「マッチング疲れ」に悩まされている人たちも多いでしょう。その疲れを軽減させるには、どのようにしたらいいのでしょうか? “コア”なユーザーたちと、新機軸のサービスを提供する責任者に話を訊きました。英語版はこちら(参考)。
オンラインデートを試したことがある、という人と話してみれば、その多くがすぐに不満を言い始めることでしょう。ルーティンと化した長時間のスワイプを繰り返すと、出てくるのは人びとのバケーション中の写真ばかり。紛らわしい経歴、終わりの見えない会話、突然終わる会話。気持ち悪いコメントに、見たくもない写真、などなど……。
「本当に意気消沈した気分になることもあります」と言うのは、シアトルに住むHRビジネスパートナー、ガブリエラ・ゴールド(Gavriella Gold)。ガブリエラは、2017年から「Bumbleや「Tinder」「Coffee Meets Bagel」などのマッチングアプリを使っています。「正直、多くの時間と投資が必要な課外活動をしているようなものです」
COVID-19のパンデミック中、多くの独身者にとってオンラインデートは出会いのための唯一の選択肢でした。ゆえに、マッチングアプリを利用した際の疲労感はいや増すようになっています。そこで、企業は新しい機能、専門的なアプローチ、ユーザーが何時間もスワイプしなくても済むような方法で、利用者を疲れさせずにエンゲージメントを高めようとしています。
WHY AM I SO TIRED?
「疲れ」の原因は?
ユーザーが「実りのないスワイプ」をする一方で、企業はより多くのデータを取得し、広告収入や、あるいはサブスクリプションという持続的な収入を得られるのでしょう。しかし、企業がユーザーの「マッチング疲れ」を軽減することに労力を使えば、誰もが得をすることになるはずです。
ユーザーにとって、よりよい体験やより成功しうるマッチング、よりよい人間関係につながり、プラットフォームやアプリを他の人に勧める動機付けになることでしょう。一方、企業にとっても、よりよいデータ、よりよいレビュー、より幅広いユーザーベースを得ることができ、市場シェアの拡大にも繋がります。
現代のオンラインデートは、ウェブサイト「kiss.com」のデビューとともに1994年から始まり、その翌年に「Match.com」が続きました。Pew Researchが発表した2020年の報告書によると、米国の成人の30%がマッチングサイトやマッチングアプリを利用したことがあると答えており、パンデミック前には、この業界は30億ドル(約3,161億円)の価値があると推定されていました。
多くの人にとって、こういったウェブサイトやアプリの目的は、一貫して「愛と長期的な関係」を見つけることでした。その後、スマートフォンが普及したことで、モバイルファーストのマッチングアプリは、位置情報を使ったプロフィールを作成したり、ソーシャルメディアのプロフィールを統合したりすることができるように。また、ユーザーは、音声やビデオメッセージを交換したり、ARを介して交流したりすることも可能です。
ユーザーのマッチング疲れに関しては、オンラインデートが始まると同時に話題に上っていました。大きな問題は、「一貫性がないこと」。有意義な体験をするたびに、ユーザーはレスポンスの欠如、欺瞞的なプロフィール、詐欺、人種差別的なコメント、差別、嫌がらせ、そして魅力的とはいえない陳腐なプロフィールに遭遇します。 企業はこういったネガティブな「結果」を減らし、場合によっては、ロマンティックではない社会活動やトピックに拡大するための使い方として、プロダクトを位置づけています。
NO MEANING
無駄なスワイプ
「TinderやBumble、その他のアプリは、間違いなく人の外見を重視していると感じました」と言うのは、TinderやBumbleのほか、「Hinge」や「Happn」「Friendsy」を利用したことのある、ニュージャージー州を拠点とするデジタルメディアプロデューサー、マット・ブッカー(Matt Booker)です。
「ゴースティング(やり取りして急に消えること)や退屈な人が多い状況になってしまうのは、実際に人と話し、相手を知りたいと思っているユーザーには向いていないからです。どちらにスワイプするかを決めるときは、その人がどう見えるかに焦点が当てられています」
高級旅行代理店に勤めるエリカ・ウィルキンソン(Erica Wilkinson)の考えも、マットと共通しています。彼女は2017年以来、断続的にマッチングアプリを使ってきました。ウィルキンソンは、男性との楽しい会話を長く続けていこうとしたものの、疲れ果てて燃え尽きてしまったようです。とくに彼女が住むコロラドスプリングは保守的な傾向にあるため、彼女自身の左寄りの価値観は少数派で、なおのこと話の合う人を見つけるのは難しかったのだと言います。
「感情的なエネルギーと時間が必要だし、週に10〜12時間もBumbleに費やすくらいなら、なにか別の趣味でももった方がマシです。だから、わたしはすべてを放棄しました」
彼女は最終的に、自身の個人ウェブサイトにデートのプロフィールを設定しましたが、まだデートするに至っていません。「(ウェブサイトにプロフィールを設定したほうが)心が穏やかだし、消耗せずにすみます。その点では大成功ですが、デートの機会を得ることに関しては、それほどでもありません」
Narrowing the pool
ターゲットを絞る
TinderやBumbleのような多くのアプリやウェブサービスは「マッチするかもしれない相手を可能な限り多く提供する」という思想に基づいていますが、マッチする可能性のある相手を絞り込むことで、ユーザーの関心を高めようとしているアプリもあります。ターゲットを絞れば、同じ趣味嗜好をもったユーザー同士で、より有意義かつ人間的なつながりをもてるというロジックです。
マッチグループ(Match Group)は、後者のような、ユーザーを特定するいくつかのアプリを展開しています。ざっと見ただけでも、黒人の独身者向けの「BLK」、ラテン系向けの「チスパ(Chispa)」、GenZとミレニアル世代のクリスチャン向けの「Upward」、50歳以上のユーザー向けの「OurTime」。さらに、そのほかのものとして、ミレニアル世代のユダヤ人向けのものだったり、スウィンガー向け、LGBTQ+コミュニティやゲイとバイセクシャルの男性、ヒゲ好きの人、農業従事者を対象にしたものもあります。
また、人気の高いマッチングプラットフォームでは、とくにアジア系の男性や黒人女性に対する差別についての議論も活発です。こうしたユーザーにとっては、オンラインデートの煩わしさが原因で、マッチする相手の数が減ったり、拒絶感を募らせてしまったりすることもあります。一方で、ニッチなコミュニティは、経験や興味を共有するための主要なテーマがすでにあるので「より歓迎されている」と感じることができるのです。
「ニッチなコミュニティをつくることに対する考えとゴールは、主流のアプリに見られる差別の一部を排除することです」と、BLKのマーケティングの責任者であるジョナサン・カークランド(Jonathan Kirkland)は述べています。
BLKには、話題の文化的・社会的な問題についてのディスカッションフォーラムや、黒人女性ソムリエとのバーチャルワインテイスティングなど、ユーザーのエンゲージメントを高めるための「非デート機能」も搭載されています。
BLKのユーザーは、こうした選択肢を利用することで、一般的なデートよりもリラックスし、プレッシャーを感じることなく、必ずしもロマンティックだとは限らないつながりをつくるチャンスを得られると感じているようです。
カークランドは、こうも言います。「(マッチングアプリは)本当の意味での『ソーシャルネットワーキング・プラットフォーム』になりつつあります。左にスワイプしたり、右にスワイプしたり、メッセージを送ったりするだけではない、エンゲージメントや体験を生み出しているのです」
Designed for success
成功のためのデザイン
Tinderのスワイプ機能は、素早い判断と決断を促す「ゲーム」のように感じられるかもしれません。一致した相手は通知やGIFアニメーションで表示され、拒否された相手は非表示になります。ユーザーは、見るべきプロフィールの数が無限にあるように感じることができますが、無視される方法も無限にあるのです。
一方、Hinge(日本では現在使用不可)は、“The dating app designed to be deleted”(消されるためにデザインされたデートアプリ)というメッセージを掲げ、ユーザーのサイトとの関わり方を変えることで、デートの疲れを軽減させようとしています。『Quartz』が話を聞いた何人かのユーザーは、プロフィール欄を作成するための気の利いた説明文を用意したり、何度かメッセージを交換したあとで実際に会うように促されることで、マッチングの可能性が高まったと語っています。
また、Hingeは、ユーザーに対し、時間をかけて相手の何がおもしろいと思ったかを特定してもらうことで、マッチする可能性のある相手についてより十分な情報を提供できるようにしているといいます。こうして、相手が自分にとって興味があるのか、共通点は何かを理解し、より充実した会話ができるようになるので、疲れを軽減させることができたのです。
シカゴに住むアレックス・オルファノス(Alex Orfanos)は、出会いを求めて、週のうち何時間もの時間をBumbleやTinderに費やしていました。しかし、Hingeのプロフィールデザインには、自分の価値観を表現したり、他の人のことを知ることができる「複雑さ」があると言います。
オルファノスとって、相手の人生や価値観に関する背景の情報を得ることは、1年分のサブスクリプション料である50ドル(約5,300円)を払う価値がありました。「Hingeの説明文であれば、個性を生かしながら自己紹介ができます」と彼は言います。オルファノスは昨年の3月上旬、キャサリンという女性と知り合い、2人は今年の夏から一緒に住む予定だといいます。
2012年にローンチした女性向けのマッチングアプリ「Coffee Meets Bagel」は、TinderやBumbleに比べて地域を限定してサービスを展開していて、毎日限定数の「ベーグル(紹介してもらえる異性のこと)」をユーザーに提供しています。シアトルを拠点に活動しているゴールドは、メッセージを送りたい相手をよりよく見極めるために、この回答が役立っているとコメント。「最初に十分な情報を得て、この人と交際する価値があるかどうかを半信半疑ながらも判断したいのです」
BEYOND THE SWIPES
次は遠距離恋愛向け?
COVID-19のパンデミックのあとも、オンラインデートは独身者がパートナーを見つけるためにもっとも重要ではないとしても、必然的に重要な手段であり続けるでしょう。
しかし、ほとんどの人にとっては、オンラインデートは主に、直接会って相手を見つけるためのツールであることに変わりはありません。オンラインデート自体が将来にわたって刺激的で有意義な経験になるためには、より良いシミュレーションをするか、もしくは「In Real Life(現実世界)」の経験を結びつける必要があるでしょう。
先出のウィルキンソンには、もっとシンプルなアイデアがあります。彼女は、アプリ自体が会話を始めることだけに焦点を当てるのではなく、恋が盛り上がるような関係を促し、維持してくれるようになってほしいと思っているのです。
「もし誰かが、最高にクールな遠距離恋愛アプリを発明できたら、すぐに10億ドルだって稼げると思います」と彼女は言います。「誰もが、遠距離恋愛がいかに難しいかについて話しています。わたしは、人びとの創造性が、(遠距離恋愛ツールの定番だった)Skypeよりも直感的な答えをつくり上げるのを信じています」
COLUMN: WHAT TO WATCH FOR
時代遅れな絵文字
ミレニアル世代とGenZのカルチャーギャップに関する論争は、「TikTok」を通じてさらに勢いを増しています。最近では、ミレニアル世代に愛用者が多い「スキニージーンズ」がディスられただけでなく、GenZにとって「😂」の絵文字はもはやクールではないというトピックが話題になりました。「この絵文字だけは使わない」と『CNN Business』に語るのは、21歳のワリード・モハメッド。「母親や年上の親族を含め、年上の人が使っているのを見たので、しばらく前に使うのをやめました」
多くのGenZがいま、その代わりとして「笑い」を伝えるために使っているのは、スカルの絵文字「💀」。スラングのフレーズである“I’m dead”や “I’m dying”を視覚的に伝えるもので、何かしらの「とてもおもしろいこと」を意味するようです。ほかには泣いている絵文字「😭」、または単に「lol(笑)」や「lmao(爆笑)」と文字で書いて、笑っている様子を伝えているようです。
(翻訳・編集:福津くるみ)
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