Deep Dive: New Consumer Society
あたらしい消費社会
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毎週木曜夕方の「Deep Dive」のテーマは、「あたらしい消費のかたち」。ハンドメイドグッズのプラットフォームである「エッツィー(Etsy)」が急成長した背景には、パンデミックでの「マスク不足」がありました。英語版はこちら(参考)。
2020年第2四半期、パンデミックが本格化するなか、世界中で不足するマスクなどのPPE(個人防護具)を求める声が上がっていたのを覚えているでしょうか。
当時、ハンドメイドグッズのプラットフォームである「エッツィー(Etsy)」では、マスクが流通取引総額に占める割合は、実に14%でした。第3四半期までにその割合は11%になり、第4四半期には4%に落ちましたが、しかし、そのころには何百万人もの「一度きりのマスク購入者」がすでに、Etsyのリピーターになっていたのです。
a great signal
Etsyに戻ってくる
先日、Etsyは、アナリストの予想を大幅に超える第4四半期の収益を報告しています。収益は、前年同期比129%増の6億1,700万ドル(約673億円)、純利益は1億4,850万ドル(約162億円)で、前年同期比で375%の増益だったようです。2020年を通年でみると同社の利益は2倍以上になり、流通取引総額は106%の成長となりました。
第3四半期に同サイトでマスクだけを購入した300万人の顧客のうち半数近くが、第4四半期に他のアイテムを購入するために、Etsyに戻ってきたといいます。CFOのレイチェル・グレーザー(Rachel Glaser)は、このような動きが、同サイトの購入者を維持する力と今後の成長のための「素晴らしいメッセージ」だと話しています。
「これは、新たな購入者とサイトに戻ってきた購入者が、Etsyを探求し、わたしたちが取り扱っている製品の幅をより理解していることを示しています」と、グレーザーは2月25日に行われたアナリストとの決算説明会で述べました。
Etsy’s pandemic success
パンデミックでの成功
スモールビジネスやインディペンデントなアーティストが主なターゲットだったEtsyの利用者が増えた背景には、パンデミックの影響によるオンラインショッピングへのシフトと、パンデミックで失業してしまった人びとを中心とした「起業家精神の成長」が大きく寄与しています。当初はヴィンテージ品やハンドメイドグッズが販売されていたEtsyですが、昨年はホームファニッシング、イベントデコレーション、そしてもちろん、何百万もの手づくりマスクへと拡大しました。
Etsyは現在、ウォルマート(Walmart)、ターゲット(Target)、アマゾン(Amazon)に次ぐ第4位のECサイトになっています。ここでは、最新の決算報告書のなかから、その他のハイライトをいくつかご紹介します。
- Etsyでの購入者の半数近く(48%)が昨年、2回以上の購入をしており、1ユーザーあたりの平均購入数は5回にまで伸びている。
- 英国では、とくに購入者と販売者の両者が地元で取り引きした場合、ロックダウンの延長が要因になり売上が伸びた。
- Etsyのホームファニシングの売上は、ステイホームによる「模様替えブーム」の恩恵を受けているが、同社は市場全体の「ごく一部」にとどまっている、とEtsyのCEOであるジョシュア・シルバーマン(Joshua Silverman)はコメント。
- ウェディングカテゴリの売上高は2020年、前年比30%増だった。決算説明会でシルバーマンは、人と対面することが再び安全になれば、イベントカテゴリは「成長のポテンシャルが高い」と述べている。
What’s next for Etsy?
次のステップは?
2021年のEtsyの好調なスタートには、バーニー・サンダースの影響も少なからずあるようです。先日行われたジョー・バイデン米大統領の就任式の際、サンダース上院議員が着用していた手づくりのミトンに注目が集まり、人気のあるミームになりました。このオリジナルのミトンをつくった学校の先生であるジェン・エリス(Jen Ellis)には、リクエストが殺到しました。
グレーザーによると、このミームのおかげで、Etsy上では同様のミトンやサンダースのイラストをあしらったアイテムの「大放出セール」につながったといいます。米国最高裁判事のルース・ベイダー・ギンズバーグが亡くなった際にも、彼女のイメージを冠した商品を求めて同じようなことが起こりました。1月下旬には、イーロン・マスクがEtsyで自分の犬用の手編みのウール製品を購入したとツイートしたことから、同社の株価は急上昇しました。
Etsyは、2021年第1四半期の売上高を5億1,300万ドル(560億円)から5億3,600万ドル(約582億円)と予想しており、アナリストの予想では3億8,300万ドル(約418億円)となっています。しかし、同社は通年のガイダンス提示を辞退しました。
「2021年のEtsyの成長は、他のEコマースと並んで昨年の高水準から減速する可能性が高いです。しかし、Eコマースを凌駕して市場シェアを獲得するという野心をもち、消費者の心のなかに『トップ・オブ・マインド(第一想起)』を築き、長期的に事業に投資するという信念がこれまで以上にあります」と、シルバーマンは『CNBC』に語っています。
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COLUMN: What to watch for
突然やってきたNFT
Twitterのジャック・ドーシー(Jack Dorsey)が、2006年に初めて投稿したツイートを販売したり、ミュージシャンのグライムス(Grimes)が、約600万ドル(約6.55億円)相当のデジタルアート作品を「Nifty Gateway」で販売するなど、今年は、「デジタル資産」であるノンファンジブル・トークン(NFT)が急速に成長するでしょう。アバターのスキンなどのデジタル資産を販売することは新しいことではありませんが、今後は「クリプトアーティスト」の活躍が広がる可能性があります。「Nonfungible.com」によると、2020年7月には、NFTの総売上高は1億ドル(約109億円)を超えたといいます。
もともとコレクターの多いスニーカー業界では、NFTが大きな話題になっています。ヴァーチャルスニーカーブランド「RTFKT Studios」は先日、18歳のクリプトアーティスト、FEWOCiOUSとのコラボレーションを発売。3つのスタイルのスニーカーを合わせて600足以上が販売され、合計310万ドル(約3.38億円)以上の売り上げを記録したといいます。
(翻訳・編集:福津くるみ)
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