Culture:Disney+とキャンセルカルチャー

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Deep Dive: New Cool

これからのクール

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今年2月に「Disney+」配信番組リストに追加された『マペット・ショー』をめぐって、非難の声が上がっています。20世紀につくられた人種・文化についての否定的な描写をいま、配信者はどう取り扱えばいいのでしょうか。英語版はこちら(参考)。

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Image: DISNEY

ディズニーはストリーミングサービス「Disney+」で、2021年2月19日から『マペット・ショー』の全5シーズンを配信しています(ブルック・シールズとクリス・ランガムが出演したエピソードは欠番)。

『マペット・ショー』の初回放映は1976年。カエルの人形「カーミット」がゲスト出演のセレブリティと対話するTVショーは、ときに物議を醸してきました。例えば、1980年に公開されたエピソードでは、米国のシンガーソングライターのジョニー・キャッシュが南部連合国旗を前に歌唱を披露。Disney+で配信しているうち18エピソードについては、番組が始まる際に視聴者に警告・免責事項が表示されています。

このプログラムには、人種・文化に対する否定的な描写および、または虐待が含まれています。このようなステレオタイプは、当時もいまも、誤った認識です。わたしたちは、このコンテンツを削除するのではなく、悪影響を及ぼすことを認め、そこから学び、よりインクルーシブな未来をともにつくるための会話を盛り上げていきたいと考えています。

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Image: PHOTO VIA DISNEY

WHAT IS THE POINT?

ディズニーの狙い

ディズニーが目指すのは「世界中の人びとの豊かな多様性を反映した、感動的で意欲的なテーマをもつ物語の創造」です。「作品の表現力を高めるため」のイニシアチブ「Stories Matter」を立ち上げ、「20世紀のコンテンツ」を現代の視聴者に向けて配信する際には、今回同様の免責事項を表示させています。

この動きに対して、ネット上ではいつものように怒りの声が上がりました。『Fox News』や元米国大統領の息子たち、そして人気のある保守的なメディア関係者たちは、不条理主義者である人形劇のキャラクターを「なかったこと」にしようとしているとディズニーなどを非難し、「キャンセルカルチャー」の標的にしました。

実際のところ、ディズニーは『マペット・ショー』を検閲しているわけではありません。『Entertainment Weekly』は、数エピソードについては編集が加えられたものの、それは使用音源の版権の問題ゆえだったと伝えています。マペットが消されたり改変されたりしたわけではなく、数十年前のままの姿で放送されているといえます。

MAKE A DECISION

視聴者の意思決定

先述したジョニー・キャッシュを例にとれば、南部連合国旗が白人至上主義に関連付けられていることが広く理解されているいま、ディズニーが『マペット・ショー』においてその描写が登場していることにふれるのは、むしろ当然といえるでしょう。

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Image: REUTERS/MIKE THEILER

免責事項なしに配信すれば、その内容を承認しているととられても反論できません。『マペット・ショー』のすべてを否定せずとも、注意を促すことは可能です。番組放映から数十年、その間に市民社会が何に対して拒絶反応を示すようになったのか、関心を向けることだってできます。

今回非難されている「免責事項」は、例えばHBOシリーズの番組が始まる前に流れる「裸、殺人や暴力の警告」と大した違いはありません。視聴者に対して、自分が何を見ようとしているのかを知らせるだけで、その警告によって視聴者には意思決定する時間が与えられます。サービスを利用する子どもたちも、人種差別的なシンボルの前でコンサートを開くべきではないと知ることができます。

THE OPPOSITE OF CANCEL CULTURE

キャンセル、じゃない

ディズニーは、『ピーターパン』(ネイティブアメリカンにまつわる露骨なステレオタイプが登場)や『スイスファミリーロビンソン』(茶色・黄色の顔をしたキャラクターが登場)を含むいくつかのプログラムに対して、同様の免責事項を流しています。そして、これまでにコンテンツが完全に削除された例はありません(ただし、ディズニーは黒人の人種差別的なステレオタイプを理由に、1946年の映画『ソング・オブ・ザ・サウス』をすべてのプラットフォームから削除しています)。

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Image: REUTERS

ディズニーが抱える歴史あるライブラリーを考えると、同社はとりわけ「疑問を呈する内容」への対処が求められることになりそうです。もっとも、他の企業も同様の対処に追われており、ワーナーメディアの「HBO Max」は、『風と共に去りぬ』や『ブレージングサドル』のようないくつかの映画に免責事項を追加しました(ただし、映画そのものには変更は加えられていません)。

他者を傷つけるような内容を、隠すことなく、文脈に沿って説明すること。免責事項を入れることは、その定義上、キャンセルカルチャーの対象にはなりません。ディズニーはマペットたちの会話をストリーミング配信する権利をもっており、誰しもがカーミットとゴンゾとミス・ピギーを心ゆくまで観られるべきなのです。


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COLUMN: What to watch for

エミネムをキャンセル

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Image: REUTERS/Mario Anzuoni

Gen Zはエミネムを「キャンセル」しようとしていると、『New York Post』が報じています。そもそもこの論争が始まったのは、今年2月のこと。エミネムは2010年のヒット曲『Love the Way You Lie』でリアーナをフィーチャーしていますが、11年後のいま、この楽曲が女性に対する暴力を賛美していると非難するGen Zの声がTikTokで上がったのでした。彼らはとくに「もし彼女がまた出て行こうとしたら、ベッドに縛り付けて家に火をつけてやる」という歌詞が気に入らないよう。

これに対し、エミネムが人気絶頂だった時代を生きたミレニアル世代は、彼を擁護する動画をソーシャルメディアに投稿。また、『Love the Way You Lie』は、『Superman』や『Guilty Conscience』などに比べると描写がマシだという声もあります。一方、エミネムは『Tone Deaf』のリリックビデオで反撃し、Twitterにメッセージとともに投稿。あくまで、彼のステージネームはスリム・シェイディ、そしてエミネムですが、本名はマーシャル・マザーズ。本人は、リリックと対極する立場にいると考えられています。


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