Deep Dive: Impact Economy
これからの経済
[qz-japan-author usernames=”mcorenqz”]
急拡大するEV市場に無二の存在として君臨するテスラ。その躍進のいまを7つのチャートでみてみましょう。毎週火曜夕方のニュースレターでは、気候変動をはじめとするグローバル経済の大転換点をお伝えしています(英語版はこちら)。
2003年、テスラはカリフォルニアに拠点を置く小さな自動車メーカーに過ぎませんでした。
部品は他社のものを使っており、最初のモデルである「ロードスター(Roadster)」は990ポンド(449キロ)相当のバッテリーを「ロータス・エリーゼ(Elise)」のシャーシに載せ替えただけの代物が、基本モデルでも9万8,000ドル(約1,065万円)もしたのです。
テスラはその後、世界中に工場を持つ一大メーカーに成長し、どのモデルも生産が追いつかず在庫はほとんどないという状態が続いています。市場価値は電気自動車(EV)メーカーとしてだけでなく自動車業界全体で首位に付けており、テスラは世界有数の大企業になったのです。
この背景には、EV市場の急拡大と他社の追随を許さないスマートな戦略があります。それでは、テスラの躍進の歴史をチャートと共に振り返ってみましょう。
a bigger slice of the pie
EV市場が拡大
世界の新車販売に占めるEVの割合は昨年に4.2%となり、前年からほぼ倍増しました。テスラの成功はEV市場の拡大なしにはあり得なかったはずです。
EV販売が伸びているのは、税制優遇措置などのインセンティヴに加え、燃費基準が厳しくなっているためです。また(テスラ車を筆頭に)航続距離が長く価格を抑えた新モデルが続々と登場していることも、市場拡大を後押ししています。
Accelerating almost everywhere
世界中で需要増
EVについては、パンデミックを受けた需要の落ち込みという予想が見事に裏切られました。昨年の新車市場は全体で14%縮小しましたが、EVに限ると40%増と大きく伸びています。
これは世界的な傾向で(米国はむしろ例外です)、特に欧州では販売が急増し、ドイツのEV市場の規模はいまや中国に次ぐ世界2位となっています。
the most popular models
一番人気は「モデル3」
EV市場の拡大にもっとも功績があったのはテスラで、2020年の販売台数は50万台近くに達しました。昨年に売れたEVの6台に1台はテスラ車ということになります。モデル別では「モデル3」が2位以下を3倍以上離して首位を独走しています。
Eating other automakers’ lunch
圧倒的な優位性
テスラの世界シェアは16.2%と、競合に大きく水を開けています。例えば、BMWのシェアは昨年に5.9%に低下しました。独走の一因として、(「日産・リーフ」と「シボレー・ボルト(Bolt)」は例外として)大手自動車メーカーのEVモデルがまだ少ないという現状があります。
ただ、今年はSUVやクロスオーバー、商用車の人気モデルのEV版が次々と発売される予定で、テスラもラインナップを拡充していく必要に迫られるはずです。コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー(McKinsey & Company)の試算では、市販EVの数は2022年には523モデルとなり、現在の倍に達する見通しです。
Tesla finally posted profits
ついに黒字化
テスラは過去何年にもわたり、増収ではあるものの赤字が続いてきました。ただ、2020年には初の黒字化を果たしています。価格を抑えた「モデル3」や「モデルY」の販売が好調だったことに加え、発電・蓄電関連事業(ソーラーパネル、バッテリー、エネルギー関連サービス)が20億ドル(約2,180億円)を叩き出して貢献しました。
また、二酸化炭素(CO2)の排出枠も重要な収入源となっています(競合の自動車メーカーの多くは、政府の環境規制に対応するために排出枠を購入せざるを得ないためです)。
Musk rallied the stock market
時価総額で業界首位
イーロン・マスクはかねて、テスラは世界最大の自動車メーカーになると宣言しており、2020年6月にはついに時価総額でトヨタを抜いて業界首位に立ちました。テスラの市場価値は数カ月後には8,440億ドル(約92兆1,000億円)を記録し、1社だけで世界の全自動車メーカーの時価総額の合計を上回るという事態が起きています。
テスラの株価はその後は落ち着き、また他社の株価も上がったため状況は変わりました。ただテスラ株は依然として高値で取引されており、これが多額の資金調達を可能にしています。
No one can raise cash like Tesla
抜群の集金力
テスラは2020年だけで120億ドル(約1兆3,100億円)超の資金調達に成功し、手元資金は実質的に2倍になりました。株価が高止まりしている現状は目の前にATMがあるようなもので、金融機関から融資を受けなくても、わずかな量の新株を発行すれば数十億ドル単位の現金が自動的に手に入ります。
事業を拡大するにはまず資金を用意しなければなりませんが、株価が低迷する自動車大手にはこれは簡単なことではありません。また、自動車メーカーの負債は業界全体では実に1.1兆ドル(約120兆円)に達しており、選択肢は限られています。つまり株価が高いままであれば、テスラが圧倒的な優位を保つ状況が続くことが見込まれるのです。
Column: What to watch for
新たなテスラキラー?
カナダ・バンクーバーのスタートアップElectra Meccanicaが手がけるEVがユニークなのは、三輪であること。CEOのポール・リベラ(Paul Rivera)は、「いま目にするEVはフルサイズの自動車・SUVか、あるいはスクーターのようなマイクロモビリティのどちらか。(三輪車は)他のすべての製品とはまったく異なる『中間に位置する』EVだ」と語ります。
同社のニューモデル「Solo」の価格は1万8,000ドルと従来のEVよりもはるかに安価。1回の充電で100マイルの走行が可能だとされています(2020年に販売されたEV走行距離の中央値は250マイル前後)。インテリアはプラスチック製で素朴ではあるものの、都市部での乗り物・商用車として、コンパクトで快適かつ優れたコストパフォーマンスを求める人にとっては十分すぎるスペックだといえます。Electra Meccanicaは、米アリゾナ州フェニックスに年間20,000台規模を生産する新工場の計画を発表しています。
(翻訳:岡千尋、編集:年吉聡太)
🎧 Podcastでは、月2回、新エピソードを配信しています。最新回では、アーバンジャーナリスト杉田真理子さんをゲストにお迎えしています。 Apple|Spotify
👀 Twitter、Facebookでも最新ニュースをお届け。
👇 のボタンから、このニュースレターをTwitter、Facebookでシェアできます。ニュースレターの転送もご自由に(転送された方へ! 登録はこちらからどうぞ)。