Deep Dive: Future of Work
「働く」の未来図
Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週木曜午後のニュースレターでは、「働くこと」のこれからについてアイデアや出来事を、世界のニュースから選りすぐってお届けしています。今日は3つのチャートで米国の「人手不足」の現状をみていきます。
パンデミックは、米国のレストラン業界に大きな打撃を与えました。全米レストラン協会によると、昨年のパンデミックの影響で、米国内の11万軒以上のレストランが恒久的または長期的に閉鎖され、パンデミック前と比較して約250万人の雇用が失われました。
しかし、ビジネスは回復しつつあります。
パンデミックの自宅待機が明け、人びとは外に出て食事をしようとしています。全米レストラン協会が分析した調査によると、5月のレストランおよびバーの総売上高は673億ドル(約7兆4,790億円)で、昨年2月の662億ドルを上回りました(ただし、インフレ調整後ではパンデミック前の水準を約3%下回ります)。
いま、レジャー・ホスピタリティ分野は働き手不足に直面しています。米国労働統計局によると、5月には飲食サービス業で18万6,000人の雇用が創出されましたが、この部門の雇用はパンデミック前の水準と比較すると12%減少していることになります。
従業員不足の理由としては、採用ペースの遅さやコロナウイルスへの不安などが挙げられますが、こうした状況下で、個人経営の店からマクドナルドのような大手チェーン店まで、レストランはより高い賃金やボーナスを提供して従業員を呼び戻そうとしています。
Is automation playing a factor?
DX化も影響している?
人手不足であっても、レストランは新型コロナ以前より多くの試みを行っています。パンデミックの際には、すべてのレストランがウェブサイトを立ち上げたり、フードデリバリーアプリを利用したりと、何らかのかたちでオンライン化を進めなければなりませんでした。そして、これらの試みによって、配膳や皿洗いのスタッフは不要になりました。調査会社Forresterのアナリスト、スチャリタ・コダリ(Sucharita Kodali)も、「これが、少ない従業員で済む理由のひとつだ」と述べています。
雇用者数と売上高の数字が乖離しているのは、小売業がECに移行したことを反映していると、求人情報サイトGlassdoorのエコノミスト、ダニエル・ツァオ(Daniel Zhao)も説明しています。レストラン業界の雇用者側が労働力不足に対処するべく、より自動化を進めようとしているかどうかは、まだ明らかではありませんが、「アメリカ人が外食を増やし、テイクアウトやデリバリーの注文が減れば、雇用主が自動化に頼るのは難しくなる」と、彼は言います。
エコノミストたちは、業界の自動化が進んでいるかどうかを把握するには、パンデミック後のニューノーマルにレストランがどう適応するかを見守る必要があると語っています。
workers gain leverage, for now
従業員は「いまは有利」
レストランの雇用は、パンデミック前の水準に戻るのでしょうか。
ホスピタリティ・レストラン業界のワーカーの離職は、過去最高のペースで進んでいます。そのなかには、よりよい仕事に転職している者もいるでしょう。「そうだとすれば、レストランで働くワーカーの数は恒久的に減少するかもしれません」と前出のエコノミスト、ツァオは言います。
一方で、そうした背景で向上した労働者の影響力も長続きはしないだろうと、左派系シンクタンクEconomic Policy Instituteのエコノミスト、ハイディ・シーアホルツ(Heidi Shierholz)は説明します。というのも、賃上げをする企業がある一方で、ボーナスを支給する企業もあります。Indeedのデータによると、契約時のボーナスは昨年5月と比較すると、約2倍に増加しています。シーアホルツは、この賃金の伸びは、不況がなかった時期と比べてもほぼ同じであると言います。
「ワーカーが不足している分、ワーカーにパワーが移る。それによって、ワーカーには多少の選択の余地があるだろう。しかし、物事は通常に戻るもので、雇用主に対するワーカーの地位を恒久的に変えたものは何もない」(シーアホルツ)
では、ワーカーがその交渉力を永続的に確保するためには何が必要なのか。シーアホルツは、連邦最低賃金を15ドルにすることや、労働組合の参加を促進する団結権保護法(PRO法)を成立させるなど、政策を変える必要があると言います。「局所的な労働需要の急増では、40年にわたり政策が雇用者側の力を維持してきた状況を変えることはできない」
COLUMN: What to watch for
ワクチン義務化の是非
モルガン・スタンレーは先週、7月12日以降、ワクチンを接種していない従業員(および顧客)のニューヨーク・オフィスへの立ち入り禁止を発表し、全米で議論を巻き起こしました。CNNに「銀行は対面式のビジネスであり、競争の激しいウォール街では、Wi-Fiの接続速度が遅いために取引を失うようなことは誰も望んでいない」とする論説も掲載されているとおり、金融サービス業界は、ワーカーをオフィスに戻すことに躍起になっているのです。
米国雇用機会均等委員会(EEOC)によると、米国障害者法などの連邦差別禁止法は「人種、肌の色、宗教、性別、出身国などに基づいて、従業員に差別的な影響を与えたり、不均衡に排除したりするようなワクチン接種義務を課すことはできない」としているといいますが、米国の大手企業はワクチン接種についてさまざまな姿勢をとっています。いくつか紹介しましょう。
ゴールドマン・サックス:ワクチン接種状況の報告義務
ブラックロック:ワクチン接種未完了者のオフィス立ち入り禁止、ならびにワクチン接種状況の報告義務
キャセイパシフィック航空:ワクチン接種義務
(翻訳・編集:年吉聡太)
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