Africa:#3 ボダボダとM-Pesa

Africa:#3 ボダボダとM-Pesa

Quartz Japan読者のみなさん、こんばんは。「Weekly Africa」も3号目です。 7月いっぱい、火曜の夜はアフリカのビジネスニュースやスタートアップ動向、その他の「アフリカのいま」を知るための情報をお届けしていきます。

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Image: REUTERS / NOOR KHAMIS

Weekly Africa Insight

草の根インフラ

ケニア・ナイロビの住民は、「ボダボダ」(boda boda)と呼ばれるバイクタクシーに愛憎入り交じった想いを抱いています。

交通ルールを無視するボダボダは、ときに歩道を走って歩行者を怖がらせるし、ひとたび事故に遭えば他のバイクライダーを動員し暴徒的な正義を振りかざす、脅威の存在です。一方で、ソーシャルディスタンスを取ろうとしている人は、それらが与えてくれる快適な生活に大きな価値を見出しています。家に居ながらにして、ボタンひとつで必要なものを注文し、数分後には配達完了。渋滞に巻き込まれる時間も短縮できます。

また、ボダボダは何十万人もの雇用を創出しています。わたしの顔なじみのライダーは、ボダドライバーとして稼いだお金で4人の子どもたちを大学に通わせています。彼が自ら培った効率性と信頼性、そして街に対する深い知識を頼りにした注文は多く、数日前から配達の予約がいっぱいになることも。彼は悪名高い市議会からの嫌がらせを受けないよう繁華街を避ける時間帯や、ラッシュアワーに避けるべきルートもすべて把握しています。

最近、ナイロビでは、ボダボダが悪い意味でニュースになっているようです。ロックダウン中にデリバリーがあたりまえになり、犯罪が増加しているのです。政府の国立犯罪研究センターは、何千件もの殺人危険運転致死傷暴力的な強盗誘拐などを、ボダボダライダーのせいにしています

しかし、ボダボダはナイロビを語る上で欠かせない存在です。都市の人口が増加する一方で、交通インフラは十分に成長していません(アフリカで最も忙しい都市だというのに、何時間も立ち往生する交通渋滞に陥ることも少なくないのです)。そして、そのプレッシャーを軽減するのにボダボダは大いに役立っているのです。

M-pesaの登場によって、利用者は月末、公共料金の支払いのために何時間も並ぶ必要がなくなりました。それと同じように、ボダボダはわたしたちの生活の些細な不便さを解消してくれました。

ひとつはっきりしているのは、インフラが追いつかない限り、ボダボダは普及するということでしょう──ラゴスのような都市でそうであるように


STORIES THIS WEEK

アフリカ1週間

  1. フットボールが、アイデンティティの問題を提起する。先日閉幕した2020年欧州サッカー選手権でブレイクしたスター選手の一人、ブカヨ・サカ(Bukayo Saka)は、ナイジェリア人の両親のもと、ロンドンで生まれ育ちました。ナイジェリアの国民はこのイングランドのサッカーヒーローに強く共感しています
  2. アフリカのユニコーンが継ぐもの。アフリカ大陸には現在、評価額が10億ドルを超えるフィンテックおよびEコマース企業が4社あります。そのうち3社はナイジェリア、1社はエジプトの企業です。これらの巨大企業と背後に控えるスタートアップが、アフリカの“次”のテック系起業家に道を拓いています
  3. AfCFTA成功のカギはフィンテックにあり。アフリカのフィンテック企業は、金融サービスをより効率的にするデジタルシステムやインフラを構築し成功を収めています。今年初めに発足したアフリカ大陸自由貿易圏にとっても、これらのフィンテック企業はソリューションを提供するのに適した立場にあるようです。
  4. 南アフリカがソーシャルメディアを厳しく規制。南アフリカの各都市で抗議活動が続くなか、政府はソーシャルプラットフォームの監視に躍起になっています。抗議活動を扇動したり、フェイクニュースを流したりしていると思われる人びとを根絶しようということのようですが……。
  5. 都市では排泄物が思わぬ味方に。2018年、ケニアの科学者たちは、ナイロビのスラム街の下水から採取した便のサンプルを調べることで、ポリオの大流行を防ぐことができました。いま、同様のサンプルが、科学者が抗生物質耐性を評価するのに役立っているようです。

CHARTING 5G projections

5Gを待ちながら

スウェーデンのネットワーク・通信企業エリクソンが発表した新しいレポートによると、今後5年間での世界の5G通信網の導入率は、サハラ以南のアフリカ(サブサハラン・アフリカ)が最も低くなると予想されています。

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現在、同地域の携帯電話接続のうち、5Gを利用しているのは1%未満。この数は今年も増えないようです。レポートによると、今後5年間で5Gの普及率が7%に達するのがやっとで、これまでに商業用の5Gネットワークを立ち上げたり、試験的に運用したりしているのは、アフリカ諸国のほんの一握りです。


DEALMAKER

スタートアップ動向

  • ケニアのアドテックプラットフォーム「AIfluence」が、AIを活用したマーケティングプラットフォームのアフリカ、中東、アジアへの展開を加速するため、シード資金として100万ドルを調達。このラウンドはEQ2 Venturesがリードし、Antler East AfricaOUI CapitalArabyAdsが参加しました。
  • ナイジェリアの資金調達/ベンチャーポートフォリオ管理会社GetEquityが、6桁のプレシード・ファンディングを獲得。今回の資金調達はGreenHouse Capitalが主導したもので、GetEquityは、投資家と創業者の間のパイプ役を果たしながら、創業資金へのアクセスを民主化するベンチャー資金調達プラットフォームを発表します。
  • エジプトのEヘルススタートアップYodawyが、新規市場への進出と製品提供の拡大を目的に750万ドルのシリーズB資金調達を実施。このラウンドには、Middle East Venture PartnersGlobal VenturesAlgebra Venturesがリードし、CVenturesP1 VenturesAthaal Angel Investors Groupが参加しました。

OTHER THINGS WE LIKED

その他、気になったこと

  1. 現地ゲリラはいかにエチオピア軍を撃退したか。現地人もプロも女性も、ディアスポラのティグライ人をも含むティグライ防衛隊が、エチオピア軍に対し次々と勝利を収めています。『The New York Times』のDeclan Walshが、8カ月に及ぶ内戦における決定的な1週間を克明にレポートしています。
  2. ナイジェリア人はなぜワクチンを躊躇しているのか。ナイジェリアの一部地域でのコロナワクチンのボイコットは、1996年に実施されたファイザーの治験が影響していると、『Unbias the News』のMahdi GarbaとModupe Abidakun両記者が伝えています。ワクチンが入手できないわけでも陰謀論に躍らされているわけでもなく、実際の経験からワクチンを躊躇しているのです。
  3. アフリカの卓球スター、中国との戦い。2016年のリオ・オリンピックで一躍脚光を浴びるも、中国選手に破れベスト8に終わったナイジェリア代表のQuadri Aruna。『DW』のLolade Adewuyiは、来る東京大会で卓球中国の優位性を終わらせるというナイジェリア人の目標をレポートしています
  4. 宝石都市の再建。数十年にわたる内戦により、ソマリアの首都モガディシュの美しい建造物はそのほとんどが破壊されてしまいました。かつて「インド洋の白い真珠」と呼ばれたこの都市を再び輝かせようとするソマリア人とイタリア人の建築家の物語を、Abdi Latif Dahirが『The New York Times』に寄稿しています
  5. ナイジェリアにおけるLGBTQI+の変化。27歳のナイジェリア人フィットネスモデル兼ボディビルダーのBolu Okupeが、ファンからの課金プラットフォーム「OnlyFans」(アダルトコンテンツでもよく知られている)で話題を呼んでいます。このニュースはナイジェリアの人びとや、同性愛嫌悪で知られる有力政治家であるBoluの父親に衝撃をもって受け止められているようです。『Rest of World』のElvis Kachiによるレポートです。

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🎵 今週の「Weekly Africa」は、アフリカンルンバ・クイーンことMbilia Belの「Cadence Mudanda」を聴きながらお届けしました。


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