Startup:ゲーム×SNSの新境地

Startup:ゲーム×SNSの新境地

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Quartz読者のみなさん、こんにちは。月2回、土曜の昼に、毎回ひとつ「次なるスタートアップ」を紹介しています。今週は、誰でも簡単につくれて共有できるゲームプラットフォーム「Playbyte」を取り上げます。

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Image: PHOTO VIA PLAYBYTE

Playbyte
・ローンチ:2019年
・創業者:Kyle Russell
・調達総額:400万ドル(約4億3,700万円)
・事業内容:UGC型モバイルゲーム

Who is PLAYBYTE

Playbyteとは

ゲームといえば、技術者の手によってコーディングされた製品が世に出され、ユーザーがプレイするのがあたりまえだと思われる方が多いのではないでしょうか。

しかしいま、米国を中心にバズりつつあるゲームが、新しい体験を生んでいます。

Playbyteでは、プログラミングの能力がなくても、スマホを“ポチポチ”するだけでオリジナルゲームが作成できます。専門的な知識がなくても頭の中でイメージさえできれば簡単につくれるのがウリです。ブロックや絵文字、カメラロールからの画像を用いてゲームを構成します。

自分でイチからつくるのすら面倒なら、他人のゲームアセットも利用できます。そこに自分がこれまでにつくった作品を組み合わせたり付け加えたりする、レゴのようなゲームづくり。すでにあるゲームをみてみると、シミュレーション系やタワーディフェンス系、戦闘系などが揃っており、なかには「クソゲー」もありますが、それはそれで笑える体験です。

システム的には、軽量な2Dゲームエンジンを活用しています。低速回線や古いデバイスでもすばやく読み込んでプレイできるため、スマホユーザーにとっては嬉しいポイントでしょう。

出来上がった「世界にひとつしかない自分オリジナルのゲーム」をTikTokライクな縦スクロールのフィード画面にポストすれば、「いいね」「コメント」「共有」などソーシャルな体験を得られます。他人がつくったゲームも遊べて、自分の好みに合わせて最適化されたゲームが次々に表れるフィード画面──暇つぶしに最適なカジュアルゲームによる無限ループの出来上がりです。

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Image: PHOTO VIA PLAYBYTE

Playbyteは5月にベータ版でローンチされると10代の若者を中心に人気を集め、今月iOSで正式ローンチされるとAppStoreのトップチャートに登場するなど、人気に火がつきつつあります。

Encouraging user participation

ユーザー参加を促す

創業者のカイル・ラッセル(Kyle Russell)は有力VCのAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)出身で、投資先だったドローン企業のSkydio(スカイディオ)を経て、Playbyteを起業しました。

Twitterがテキストで、Instagramが写真で、TikTokが動画でやったことを、ゲームに持ち込んだ」とラッセルは語ります

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Image: カイル・ラッセル PHOTO VIA LINKEDIN

140字の文字数制限、写真の加工フィルター、15秒の動画の口パク(リップシンク)など、これら巨大SNSのブレークスルーは、「難しい」「恥ずかしい」などユーザー参加の障壁を取り除くイノベーションがきっかけでした。

Playbyteが革新的と思える理由は、「難しい」「面倒くさい」はずのゲーム制作のハードルを極限まで下げ、ゲームを直感的な個人の創作活動の一部であり、「つながり」を構築する手段として再定義した点にあります。ゲームを写真や動画と同様の「自己表現のひとつ」と位置付け、ゲームをSNSと完全融合させた点が新しいと感じます。

またパーソナライズによるフィードの最適化も、これらSNS成功に倣っています。自分好みのゲームに出合えれば、その没入感や中毒性は他のメディア以上といえるかもしれません。現在は無料での提供ですが、フィード広告による収益化は相性が良いと言えます。

Melting Boundaries

溶けていく境界線

Playbyteが除去した境界線は「ゲーム」と「SNS」、そしてゲームの「開発者」と「プレイヤー」でした。一方で、ライブストリーミングと融合しているゲームの世界では「プレイヤー」と「視聴者」の境界線も消えつつあります。

代表例はGenvid Technologiesが提供するインタラクティブライブ配信番組『RIVAL PEAK』です。12人のプレイヤーがゲーム空間の森の中でサバイバル生活をする様子を、24時間生配信するリアリティショーです。

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Image: PHOTO VIA FACEBOOK

プレイヤーは行動によってポイントが増減し、少ないと1人ずつ脱落していきます。視聴者はプレイヤーの会話を読んだりパズルを解いたりして、お気に入りのプレイヤーにポイントをあげることができます。それぞれのキャラクターには詳細なプロフィール設定がされており、それぞれの性格に応じて次にすべき行動を投票で決めるなど、このストーリーに参加することが可能です。いわば、視聴とプレイの境界線を溶かしたサービスです。

このRival Peakによる世界初の大規模インタラクティブイベント(Massive Interactive Live Event = MILE)は、Facebook上での12週間にわたる配信で世界70カ国以上から視聴者を集め、総視聴時間は1億分以上に達するなど大成功を収めました。ゲーム実況を視るだけでは物足りないが、集中してプレイするのは重いと感じる中間ニーズを掘り起こしたと言えます。

混沌の中で、全てが混ざり合い溶け合っていく先に、「メタバース」の青写真がぼんやりと浮かびあがってきます。

久保田雅也(くぼた・まさや)WiL パートナー。慶應義塾大学卒業後、伊藤忠商事、リーマン・ブラザーズ、バークレイズ証券を経て、WiL設立とともにパートナーとして参画。 慶應義塾大学経済学部卒。公認会計士試験2次試験合格(会計士補)。Twitterアカウントは@kubotamas


🗓 Save the date!

米国のテック最前線を伝える「Off Topic」とのコラボレーションで実施するウェビナーシリーズ。開催間近に迫った第2回の内容には、クリエイターエコノミーリニアコマースなど気になるキーワードが並びます。先日開催した第1回の様子は、こちらの記事でセッション全編を振り返れます。

  • 日時:9月28日(火)20:00〜21:00(60分)
  • 料金:無料
  • 開催:Zoom
  • 申込こちらのリンクから
  • 登壇者:宮武徹郎さん(Off Topic)、久保田雅也さん(WiL)

Column: What to watch for

飲食店SaaSへの期待

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Image: REUTERS/BRENDAN MCDERMID

レストランテックのToastが9月22日にニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場。株価は瞬く間に63%上昇し、評価額は昨年11月の80億ドルから330億ドルに届くまでに。コロナ禍で急成長するフードデリバリー産業の裏方的存在とも言える飲食店Saasに投資家の期待が集まったとみられます

2013年にボストンで立ち上げられたToastは、パンデミックで顧客のレストランが閉鎖されたことでダメージを受け社員の半数を解雇する事態となりましたが、凄まじい勢いで息を吹き返します。テイクアウトとデリバリーのニーズを捉え、3カ月間のオンライン注文、テイクアウト、レストランマーケティングサービスを自社プラットフォームの新規加入者に無料で提供。さらに非接触型注文と支払いの機能を展開し、収益は2019年から62%増加しました。

しかし同社は、パンデミックの経済状況は異常であり、「収益の伸び率は短期的および長期的に変動する」と指摘。この急成長は必ずしもこの先の業績を示すものではないことを投資家に警告しています。

(翻訳・編集:鳥山愛恵)


🚀 次回の「Next Startup」は、10月9日(土)配信予定です。

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