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また、緊急特集として、新型コロナウイルス拡大が世界に与えている影響を皆さんに広く伝える記事を無料公開します。本日はQuartz Africaよりアフリカの最新情報をお届けします。英語版はこちら。
閉ざされたアフリカ
アフリカ大陸はコロナウイルス流行による影響が最も少ないものの、感染は複数の国に拡大しています。事態収束を図るべく、大陸内の多くの政府は、すでに感染が深刻な国々(そのほとんどがヨーロッパとアジア)からの旅行者に対して渡航制限を課すという、前例のない措置を取っています。
南アフリカでは感染者数が激増し、国内での感染拡大が確実視されています。シリル・ラマポーザ大統領は、韓国、イタリア、スペイン、米国および英国を含む、コロナウイルスの影響下にある国からの到着便を欠航としました。南アフリカはまた、ラマポーザの「特別な対応」の一環として、国境の半分以上の検問所を封鎖しています。
同様に、ケニアとガーナも感染拡大著しい国からの外国人旅行者の入国を禁止しています。それらの国から帰国する自国民に対しても、強制隔離期間を設けています。また、ブルンジ共和国とガボン共和国も同様の措置を講じています。
モロッコでは海岸沿いのスペイン領との国境が閉鎖され、すべての国際線が運行停止となっています。これは、先週ウガンダにて設けられた、米国と英国を含む16か国に広範な渡航制限を課し、感染拡大が進む国からの渡航者(ウガンダ人を含む)は自費で検疫するという条件でのみ入国を許可するという措置に続くものです。
皮肉のような逆転現象
過去20年間にわたり、アフリカ諸国の旅行者・移民は欧米諸外国への渡航の際に厳しいビザの要件を課されていました。それを考えると、アフリカ諸国が欧米人の渡航を禁止する現状を皮肉のような事態だと指摘する人もいます。例えば、米国や英国はビザの料金を引き上げるなど、アフリカからの訪問者にさまざまな制限を課してきました。
マリやモーリタニア、ルワンダ、コンゴ民主共和国では、旅行や飛行に対して禁止措置はまだ課されていません。が、特にヨーロッパで最もコロナウイルスの影響を受けている国々からの旅行者に対して検疫措置を課しています。当初、旅行や貿易においてアフリカと強いつながりのあった中国は、東部アフリカの国々からウイルスが持ち込まれた可能性を示唆していましたが、結果的にアフリカ大陸の症例のほとんどはヨーロッパまたは米国からの旅行者によるものでした。
こうした旅行の制限は、特に観光収入が非常に重要なアフリカにおいて、ただでさえ苦しい経済の一部に、さらに決定的な打撃を与えています。例えば、2年で2度目の不況に陥った南アフリカは、国内の雇用の9.2%と国内総生産の8.2%を観光産業に依存しています。アフリカは、世界中から年間約1,000万人の訪問者を受け入れており、その大部分がヨーロッパからです。
エボラの教訓はいずこへ
感染した可能性のある人々の侵入を阻止するための旅行制限に加えて、それぞれの政府はソーシャルディスタンス(人々の物理的な距離を確保すること)も強化しています。ケニア、セネガル、ルワンダ、ナミビアでは、学校と高等教育機関の閉鎖が命じられています。南アフリカでは、100人以上の集まりが禁止されており、学校は今週にも閉鎖される予定です。エチオピアの首都であるアディスアベバでは、学校の閉鎖に加えて、集会やスポーツが禁止されています。
積極的な対応策が講じられてきたにもかかわらず、アフリカ内でのコロナウイルスの症例は増加しています。それゆえ、上記に挙げたさらなる厳格な措置が取られるようになりました。アフリカ大陸全土において、 3月5日の時点では12名の感染者しか確認されていませんでしたが、現時点で約300名の感染者が確認されています。
3月9日、アフリカにおけるコロナウイルスによる最初の死者がエジプトで確認されてから、さらに7人の死亡者がアフリカ全土で確認されています。南アフリカ、エジプト、アルジェリアを含む国々ではすでに感染者急増の兆候が見られ、保健当局が感染者の陽性反応を確認するより、はるかに迅速にウイルスが広がることへの懸念が高まっています。
アフリカおよび中央アフリカではかつてエボラ出血熱が発生し、こうした事態に対する教訓と技術的ノウハウが強化されているはずです。にもかかわらず、イタリアや韓国と同様に、指数関数的に感染者が大陸全体で増えていくことは、医療サービスとそのための設備がともに整っていないサブサハラ・アフリカの国々の人にとって、悪夢のような事態を招くことになりえるのです。
(Text by Yomi Kazeem, Translation by Yusuke Konishi)
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