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全国民に1,000ドル
パンデミックのパニックが世界を席巻し、世界中で自宅待機を余儀なくされる人々が増え続けています。そんななか、米国のある保守派政治家が暫定的なユニバーサル・ベーシックインカム(以下:UBI)を提案しています。
3月17日、ミット・ロムニー上院議員(ユタ州選出)は、パンデミックによる財政的影響を軽減するためとして挙げた多くの措置のひとつとして、全米国民は、その生活コストを賄った上でさらに経済を回し続けるための1,000ドル小切手を手にするべきだと述べました。
ロムニー自身はこの計画を「UBI」とは呼んでいません。このアイデアは、世界的な景気後退が不安視されるなかで浮上していますが、そもそもは民主党の大統領候補だったアンドリュー・ヤンによるもの。ヤンが最近中止した選挙キャンペーンの際に、その基礎がつくられました。
2018年、ヤンは民主党の大統領選の候補者のディベート中に、米国民10世帯に対して実験的にベーシックインカムとしてお金を支給すると宣言しました。
民主党代表のトゥルシー・ギャバード(ハワイ州選出)もまた、緊急性を要するものとしてUBIを強く呼びかけています。彼女は、「UBIこそ、人々が自分自身や愛するものを守ることを保証するための、最も簡単で直接的な手段である」とツイートしています。
変わり者たち
ロムニーもギャバードも“変わり者”と呼ばれる類の政治家です。ロムニーは、先月のドナルド・トランプ米大統領のウクライナ疑惑を巡る弾劾裁判において有罪票を投じたという、珍しい共和党の上院議員です。一方のギャバードは、昨年下院での弾劾裁判において、「Present」(本質的に棄権を意味する)と投票した唯一の民主党員でした。
つまり、彼らは自身の政党と異なるポジションを取ることに慣れているのです。
しかし、UBIはヤンがアウトサイダーとして戦った選挙キャンペーンの非常に重要な側面であったことを考えれば、共和党員であるロムニーのUBIへの呼びかけは驚きに値します。Twitterにも、保守派が急進的かつ進歩的な提案を支持することを皮肉に感じているユーザーがいます。
UBIに加えて、ロムニーは学生への援助の延長、学生ローンの支払いの延長、中小企業向けのブリッジローン、保険会社からの遠隔医療サービスの提供を希望しています。彼は、コロナウイルスに関する緊急予算について上院議員と議論するなかで、これらの提案を進めていくつもりであると述べています。
いつ決まるとも知れぬ支援
土曜日の早朝、下院は従業員500人未満の企業に有給の病気休暇を与える法案を通過させましたが、人々が望むほどうまくはいってません。
上院の共和党多数派リーダー、ミッチ・マコーネルは、日曜日の夕方に、「両党の上院議員は詳細を慎重に検討しており、米国の労働者、家族、中小企業がこの困難な時期を乗り切れるよう、迅速に行動したいと考えている」と述べました。しかし、法案は思わぬ障害に阻まれており、下院は依然として、財務長官スティーブン・ムニューチンとともに問題を解決しようとしているとPoliticoは報じています。上院が最終的にいつ決定するかについては何の兆候もありません。
「有給休暇、失業保険、およびSNAP(かつて「フードスタンプ」と呼ばれていた、低所得者向けの食料支援サービス)給付の拡大は重要ですが、この小切手ははさまざまな選択肢にすぐにアクセスできない米国民の生活を支えるのに役立ちます」とロムニーは言います。
ロムニーが他の議員を説得するのにどれほど成功するかは、まだわかりません。しかし、弾劾裁判が何らかの兆候だとするなら、彼らの計画が現実化するまで米国民はあてにするべきではないでしょう。
【追記】
17日に行われた記者会見において、トランプ大統領とムニューシン財務長官は総額100兆円を超える経済対策を検討していることを表明し、本記事で紹介しているユニバーサルベーシックインカムも検討事項に含まれているとされています。
(Text by Ephrat Livni, Translation by Yusuke Konishi)
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