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MILLENNIALS NOW
ミレニアルの今を知る
Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週木曜日の夕方は、「ミレニアル世代」のトレンドを、注目のビジネスニュース4本とともに紹介していきます。
もはやミレニアル世代にとって、モノを所有することは全く重要なことではなくなりました。
アメリカ人の74%は、モノよりも「経験」の価値を重要視していて、特に経験=旅行にお金を費やすことが一番に。日本でもそうですが、家を所有しないという考え方も、当然になりました。今や、お金に余裕があったとしても、あえて買わない選択する層が増えています。
そういった「所有しない」トレンドは、家や車などの資産だけでなく、身近なライフスタイルにも大きく影響し、多くのサービスが登場しています。中でも、今日取り上げる「Rent the Runway(レント・ザ・ランウェイ)」は、服や装飾品などファッションのレンタルで、若者、特に女性に爆発的な人気を誇っています。
New approach(服も持たずにレンタル)
Rent the Runway(アメリカ)
- 設立日:2009年11月
- 創設者: ジェニファー・ハイマン、 ジェニファー・フライス
- 会員数:900万人以上
設立当初から話題になっていたこのサービスは、名門ハーバード・ビジネス・スクール出身の2人の女性創業者らが、「大量生産・大量消費の中で生きる現代の人々が、モノを「所有すること」より「体験すること」に価値を置くようになってきている」と考え、ローンチされたものです。
そして、2019年3月には、トータルで3.37億ドル(約370億円)の資金調達を達成、企業価値は10億ドル(約1,100億円)に上り、「ユニコーン企業」の仲間入りを果たしました。
Rent the Runwayの特徴としては、ECサイトからアイテムがレンタルできるだけでなく、ニューヨーク、シカゴ、ワシントン、ラスベガス、サンフランシスコに実店舗も構えること。実店舗では直接アイテムが見られる&試着ができたり、予約を入れるとスタイリストと相談しながらコーディネイトできたりと、オンライン上で済ませてしまうには不安なユーザーにも嬉しいサービスになっています。
レンタルプランは3種類。ご多分に漏れず、サブスクリプションのプランがあります。
- RTR Reserve:必要時に1着を4~8日間レンタルできる。オーダーミニマムは75ドル。
- RTR Update(月額89ドル):毎月4着をレンタルできるプラン。送料、クリーニング込。
- RTR Unlimited(月額159ドル):レンタルできる服の数と期間が無制限のプラン。送料、クリーニング込。
それぞれ自分に見合ったプランを選び、レンタルを楽しむことができます。
Netflix of fashion
ファッション界の革命
Rent the Runwayは、今年6月に米百貨店の雄「Nordstrom(ノードストローム)」との提携を発表しました。
これは、NordStromに、Rent the Runway専用の返却ボックス「Drop-Off-Box(ドロップ・オフ・ボックス)」を設置し、Rent the Runwayを利用したユーザーが、レンタルした商品をボックスに入れ、簡単に返却ができるというものです。また、Rent the Runwayのメンバーは、試着やスタイリング、ギフトラッピングなどのサービスも受けられます。
試験的に行われていたこのパートナーシップですが、先日、延長を発表しました。
これまでNordStromの5店舗のみで行っていたサービスを24店舗までに拡大し、「プラットフォームのパートナー」としてNortstromと一緒にレンタルサービスのユーザー獲得を増やしていきます。このように、Nordstromがプラットフォームを提供し、Rent the Runwayとコラボレーションしていく仕組みを、「ファッションのNetflix」と形容するメディアもあります。
Glowing up(加速するレンタルビジネス)
しかし、ファッションにおけるレンタルビジネスの市場は、全体1兆3,000億ドル(約140兆円)のうち、まだ11億ドル(約1200億円)に過ぎず、規模の観点からすれば、まだまだ小さいのが実情です。
逆に言えば、それだけ伸びしろがある、ということです。それぐらいに、アメリカでのレンタルビジネスは急激に加速しています。世界のファッション市場のうち、アメリカが占める割合は10%以下に過ぎませんが、オンラインでの服のレンタルサービスでいえば、40%がアメリカに集中しています。
さらに、ファッションブランドたちも、こぞってこのレンタルマーケットに入り込もうとしています。
例えば、サンフランシスコ拠点にする「Le Tote(ル トート)」は、アメリカの百貨店「Lord & Taylor(ロード&テイラー)」を買収。一方、アメリカの百貨店「Nieman Marcus(ニーマン・マーカス)」も、Rent the Runwayのサンフランシスコ店でショップインショップを開いたりと、ミレニアルズ世代のユーザーを獲得するために動きを見せています。
そのほか、「American Eagle(アメリカンイーグル)」「New York and Company(ニューヨーク&カンパニー)」「Ann Taylor(アン・テイラー)」「Express(エクスプレス)」 「Urban Outfitters(アーバン アウトフィッターズ)」といったブランドも、自社でのレンタルサービスを展開しています。
2017年11月にニューヨーク市場上場し、パーソナル・スタイリング・サービスを提供している「Stitch Fix(スティッチ・フィックス)」も今、話題の企業の一つです。
Stitch Fix(アメリカ)
- 設立日:2011年2月
- 創設者:カトリーナ・レイク、エリン・モリソン・フリン
自分で商品を選ぶのではなく、AIとスタイリストが自分に合った商品を提案してくれるサービス。同社の3,500人のスタイリストと80人以上のデータサイエンティストのチームが、アンケートを使ってユーザーの好みを分析。そして、ユーザーに見合う商品を届けてくれます。こういったAIと人が手がけるサービスは、今後も大きな成長を遂げていくことは間違いないでしょう。
Millennials are smart minimalist
ミニマリストの時代
モノを持たないミレニアルズにとって、これらが新しい概念です。
・車に乗りたかったらZipcarやUber、Lyftを使う。
・NetflixやAmazon Primeがあるので、DVDを買う必要がない。
・家具を揃えたかったら、FeatherやCORTでレンタルする。
・パーティをしたいなら、Social StudiesやAll Partyでオーダー。
だからこそ、服もわざわざ買う必要がないですよね? といった発想は、確かに理にかなったものです。また、「幸せは所有することではなく経験から得られるものだ」といった調査結果もあります。
こうした動きはもちろん日本のミレニアルズにも浸透し始めていますが、アメリカでの動きを見る限り、今後、さらにこういった「ミニマリスト」な生活を送れるよう、さまざまなサービスが登場してくるのではないでしょうか。
This week’s top stories
今週の注目ニュース4選
- ミレニアルズは貧困世代。 今年度、アメリカにおけるミレニアルズは一番多い世代で、約730万人にのぼる。しかし、Survey of Consumer Financesによると、ミレニアル世代の富裕層は全体の3%のみで、さらに国の負債の16%という高い割合で抱えているという。なお、ベビーブーム世代が今のミレニアル世代と同じ歳だった頃(1989年)、国全体の21%が富裕層だった。
- ラッパーの社会的影響力。12月12日に控えるイギリスの総選挙の有権者登録の締め切り(11月27日)を前に、ラッパーのStormzyが25日、TwitterとInstagramで自身の労働党支持と、選挙の有権者登録を呼びかけた後、有権者登録数が急上昇。特に若い世代で顕著に上がり、25歳以下で15万人、25-35歳が11万4,000人増加した。
- プラスチックハンガーも廃止の動きへ?プラスチックストローが廃止されている中、プラスチックハンガーは「ファッション界のプラスチックトロー」と言われている。今年9月、フランスのRoland Mouletは、アムステルダムを拠点とするスタートアップArch & Hookとタッグを組み、80%のプラスチックごみから作られたハンガーをロンドンファッションウィーク中に使用した。現在、ZaraやH&Mをはじめ、BurberyやStella McCartneyなども、プラスチックを使用しないハンガーを展開していく予定だという。
- ティファニーが仲間入り。Louis VuittonやChristian Dior、Dom Pérignonなどを含む75ブランドを保有するLVMHが、11月25日、アメリカの宝飾ブランドTiffanyを買収したばかり。その結果、LVMHは、裕福な顧客を多く抱える多様性のあるラグジュアリーグループに。保有するブランドで全身をコーディネートしてみると、非常に興味深い。
【今週の特集】
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(写真:Rent the Runway, Stitch fix, ロイター, Netflix)