India:セックス・アンド・インディア

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India Explosion

爆発するインディア

Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週金曜日の夕方は、次なる巨大市場「インド」の今と、注目のニュースを伝えていきます。英語版(参考)はこちら

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階級社会と男女格差もあったインドの性観念が、テクノロジーの浸透で、大きく解放されつつある。主役は若きコスモポリタンたち。効率と刺激を求めて、右に左にスワイプする彼らの欲望の向かう先は────

インドの都市部に暮らし、マッチングアプリを使いこなすミレニアル世代とZ世代は、さらなる性的快楽を経験したいという欲求を抱いている。しかし、彼らは十分に満たされてはいない。

マッチングアプリ「Tinder」が1,500人を対象に実施した調査によると、7つの都市に住む18〜34歳の80%以上が、セックスは人間関係において重要なものだと考えている。

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男性が女性を抑圧する風潮が強いインドではあるが、都会の若者たちはこのような古臭い考え方とは無縁で、男女間の「高度な同意」の元でセックスが行われているという。

ただこれはインド全体で言えることではない。ミシガン大学でメディア・コミュニーケーションを研究するヴィシュヌプリヤ・ダスによると、 「非常に特定の社会経済的グループ、つまり、インドの中流階級および中流階級の英語圏の都市部では、デートやセックスが少し標準化されたと考えられる」という。

これらの都市の若者はまた、セックスについてかなりご執心のよう。セックスについて、一日に1回以上考える割合は男性で60%、女性でも半数近くが熱い想いを巡らせている。

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しかしこの想いとは裏腹に、インドの都会に住む若いシングルたちは、真に充実したセックスライフを送ってはいない。 Tinderの調査に回答したうち最大48%が、これまで最低でも一度は「イくふり」をした経験があると答えた。

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State of play

性体験までのハードル

セックスに頭を悩ませつつも、都会の若者たちはますます創造的な性的快楽を求めることに対してオープンな姿勢だ。80%近くが、セックスライフの実験と調査に賛成していると答えた。

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前出のダス曰く、この傾向はインドの都市でのアプリ経由で知り合った相手とのデートが増えていることからも読み解ける。「マッチングアプリを使って、セックスや、どのような関係がより簡単にアクセスできるかを探求し、試すことができるようになった」

近年、インドのデートアプリ・マーケットは爆発的に拡大しており、今ではTinder、GrindrBumbleOkCupidなどの国際的なプレーヤーだけでなく、TrulyMadly などローカルのサービスも加わり活況を呈している。

多くのインド人が一夫一婦制に興味を持たないのは、恐らく、このような関係や性体験に簡単にアクセスできてしまうことが原因だと考えられる。

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マッチングアプリは、若いインド人が性についての詳しい情報を得るために非常に有用な携帯電話上のインターネットエコシステムの一部として存在する。特定の性的な用語や(何かの)使用方法、さまざまな体位、さらには最新の性的指向まで、ググるだけ。

しかしながら、都会の若い世代の多くは「性の実験」にポジティブな考えを持ちつつも日常生活で実行しているかといえば、そうでもない。実際に自分のセックスライフで新たな試みをしている人はかなり少ない。

セックス込みのカジュアルなデートで、自由に「実験」できると感じているのは独身のインド人の37%。恋愛関係にあるカップルで新しいプレイに挑戦するのは24%にとどまる。

この矛盾は、若者の住環境問題で一部説明がつく。「性の実験は、多くの場合に住居の条件によって制限される」とダスは指摘する。伝統を重んじる保守的なインド社会では、イチャつきたいカップルのための空間というものは、ほぼない。

例えば、インドの平均的な大学生は、両親と一緒か寮に住んでいる。そんな居住環境では、周りの目もあり行動は制限される。

その結果、日取りを気にせず自由に行為ができると答えた人(18〜24歳)はわずか29%。これこそ、StayUncleLuvStayといった、カップル向け(既婚・未婚は問わない)ホテル予約サイトが人気を博している大きな理由だ。セックスの探求に熱心な若い独身のカップルがこぞって、世間の目から身を隠せる場所を求めて群がっているのだ。

Rules of engagement(彼らの掟)

シングルの若いインド人たちがセックスを身近に感じる理由は、この世代ならではの開放感だけでなく、これがセックスを見据えた独自のプロトコルにもなっているためだ。

調査に協力したすべての年齢層と性別が、デートとセックスをするのに最適なのは土曜日で、逆に最悪なのは月曜日とする回答があった。時間帯については、セックスをするのに最適なのは夜だと、保守的な考えを持っている。

さらに回答者の71%が、「とても疲れている/一日中仕事で」を理由に、面倒な相手とのセックスから、言い逃れをしているそうだ。「忙しいから」は、万国共通の逃げの常套句だろう。

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この調査は、インドのミレニアル世代とZ世代が、カジュアルなデートと肉体関係を持つために、独自の「型」を確立しつつあることを示唆している。周囲の目や制限された住環境のなか、彼らが満たされる日は来るのだろうか。

This week’s top stories

インド注目ニュース5選

  1. インド発ユニコーン企業がUberEats買収に意欲。Uberのフードデリバリー事業「Uber Eats」のインド事業をフードテック企業「Zomato(ゾマト)」に売却する可能性が報じられた。両者はすでにタームシート締結の段階に入っているという情報もある。インド発のユニコーン企業として知られるZomatoは2018年末にドローン開発を手がけるTechEagleを買収し、デリバリーサービスにドローンを導入する計画でも注目を集めている。
  2. 格安メディカルツーリズムが急成長中。インドの医療観光のマーケットは2020年に90億ドル(約9900億円)に達する見通しだ。インド商工会議所とEYの共同レポートによると、医療観光を目当てにインドを訪れる人は2015年に約23万4000人だっが2017年には49万5065人に増え、2倍以上の伸び。先進国での医療費高騰により、第3国での治療が身近な選択肢になりつつある。
  3. 結婚持参金トラブル原因の殺人がこんなに…。インドでは1961年に、結婚時に新婦側から新郎側に贈る持参金(車、宝石、住宅なども)の提供、また受け取りが禁止されたが、実際は現在もこの風習が残っており、それが原因で多くの女性が虐待され最悪の場合殺されている。デロイトが明かしたデータによると、2017年にはこの「悪しき習慣」のために1日当たり21人の女性が殺された
  4. 月探査機、墜落していた。今年7月に打ち上げられたインドの月探査機「チャンドラヤーン2号」が墜落したことをインド政府が正式に認めた。チャンドラヤーン2号は打ち上げ後、8月に予定どおりの月周回軌道へ入り飛行を続け、周回機高解像度カメラ「OHRC」で撮影した鮮明な画像を届けてきたが、9月7日に実施した月面着陸の際、速度を落とし過ぎたことが原因で墜落したという。
  5. モディ首相は高級ホテルより空港シャワーを選ぶ。インドの首相は移動の際に5つ星ホテルに行って休むのではなく、空港ターミナルで休憩していることを27日、アミット・シャー内相が明かした。このほか、外国訪問に同行させるスタッフも減らす予定で、コスト削減の旗振り役を自負している。

【今週の特集】

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Quartz(英語版)の今週の特集は、「The transformation economy(トランスフォーメーション・エコノミー)」です。モノを消費する時代から、「自己変革」を売りにするビジネスへの大変革の様子をお届けします。Quartz Japanの購読者は、英語のオリジナル特集もお読みいただけます。

(翻訳・編集:鳥山愛恵、写真:ロイター)