Africa:世界のどこより、女性が起業する大陸

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Africa Rising

躍動するアフリカ

毎週水曜の夕方は、次なるイノベーションの舞台として世界が注目する「アフリカ」の今と、主要ニュースを伝えていきます。英語版(参考)はこちら

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アフリカで今、女性起業家や共同創業者の数が増えている。

スタートアップ向けのオンラインコミュニティ「ベンチャー・キャピタル・フォー・アフリカ(VC4A)」の調査によると、2019年にその数は全体の18%。いまだに5人に1人以下に過ぎないとも言えるが、それでもシリコンバレーのように”先進的”とされるハブよりも比率が高いのだ。

ありがたいことに、アフリカのハブは、すでに熟している市場の失敗をたどらなくていい。そして、アフリカのテックや金融の女性リーダーたちは、自らの手で問題の解決にも踏み出している。

Female Innovators

女性の進出と活躍

2019年度のQuartz Africa Innovatorでもあるセネガル出身の起業家、Fatoumata Ba(ファトゥマタ・バー)は、この10年を起業家、そしてデジタルビジネスを構築するエグゼクティブとして過ごしてきた。

だからこそBaは、この大陸で、アフリカ人がスタートアップの資金調達をするための苦労を隅々まで知り尽くしている。そして、それこそが、「アフリカのアマゾン」として知られる「Jumia(ジュミア)」のコートジボワール事業を立ち上げたBaが、直近で、スタートアップの資金援助をするプラットフォーム「Janngo(ジャンゴ)」を起業した理由だ。

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2019年11月、彼女は1,500万ユーロ(約18億円)をヨーロッパの投資銀行から調達し、2020年の第1四半期には6,000万ユーロ(約72.3億円)でクローズするのを次のステップとし、チームの目標にしている。そして、ファンドがクローズする前に、すでに、アーリーステージのスタートアップ3社に投資を決めている。

Janngoは、シードからグロースステージまで資本を展開する、アフリカをまたがった最大のVCファンドになることを目指している。それも「スタートアップの構築で最も難しいのは、実際に立ち上がること」ことだと身にしみているからだ。

世界のスタートアップでは、最初の2年で失敗する確率が70%といわれる。この確率を下げるため、Baは投資先のビジネスモデルのリスクを軽減したり、起業家の立ち上げに寄り添うなど、手取り足取りの実践的なアプローチを取り入れている。

Baと彼女のチームは女性が60%を占めている。

さらには、投資先のポートフォリオのうち50%を、女性による創業、もしくは共同創業、または直接女性に利益をもたらす企業にしていく計画を立てている。「これはとでも重大なことで、私が思い切った決断をする時や自分が投資家になる時のモチベーションの不可欠なことの一部」と彼女は話す。

The effective advantage(女性がいる利点)

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アフリカ開発銀行によると、アフリカでは、お金へのアクセスにおいて、420億ドルの「性格差」がある。もし、資金が手に入る場合でも、「少額の上に高金利」なマイクロファイナンスしか得られないと、Baは指摘する。

この数値は、あらゆる意味で衝撃だ。

というのも、Global Entrepreneurship Monitorなどの調査によると、アフリカでは、18歳から64歳までの女性人口の約26%が起業家的な活動に取り組んでおり、世界で最も女性が起業家になりやすいとされているからだ。その一部は、仕事が不足しているがゆえ起業しなければならないという窮状があるだろうが、いずれにせよ、これだけ女性主導のビジネスがあるのに、資金が足りないというのは重大な問題だ。

女性創業者への支援不足に焦点を当てているのはBaだけではない。ナイジェリアの投資会社「Alitheia Capital(アリシア キャピタル)」は昨年、女性起業家に7,500万ドルから1億ドルを供給することを目標に、ベテランの投資家であるTokunboh Ishmael率いるジェンダーファンドを立ち上げた。

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「女性のファンドマネジャーが、男性がアクセスできないようなネットワークを通じて、トップクラスの女性起業家にアクセスし、投資できる可能性が高まっている」と、フィンテックのグロース・エクイティ投資家であるBarbara Iyayiは説明する。

「こうして拡大したネットワークは、ディールの質を高め、力強いリターンをもたらす機会を生み出していくはずだ。特に『ダイヤの原石』が埋もれてしまい、アフリカにおいては気づきにくい」

最終的に、ファンドマネージャーは、常に投資家にとって可能な限りで最高の利益を届けるという受託責任を負うが、女性の起業家に焦点を当てることは、これらの目標をより公平な場で達成することの妨げにはならない。

実際、より多くの女性エンジニア、幹部、取締役会メンバー、ファンドマネジャーがいるアフリカ全体のより良いジェンダーバランスのとれたテックエコシステムは、それまでリターンと同等以上の結果をもたらすという議論がある。

「こうしたエコシステムによって、よりスケーラブルで影響力のある企業が生まれ、その見返りとして、さらなるイグジットと強い経済的なリターンをもたらすはずだ」と、Iyayiは指摘した。

This week’s top stories

今週のアフリカニュース4選

  1. migoがブラジルへ事業拡大へ。クレジット決済サービスを展開する「migo(ミゴ)」が、Valor Group Capitalが主導する2,000万ドル(約21.7億ドル)のシリーズB資金調達ラウンドでブラジルに事業を拡大する。migoは2013年、最も勢いのあるフィンテックシーンが集中するナイジェリアで設立されたスタートアップ企業。
  2. 自由貿易にフォーカスする前に工業化する必要がある。アフリカ大陸自由貿易地域協定の採択は、アフリカ内での貿易を後押しする重要な要因だと広く見られている。しかし、過去30年間におけるサブサハラアフリカのGDPに占める製造業の割合が低下しているため、アフリカの指導者たちは、自由貿易から利益を得るため、ひとつの重要なステップに集中する時間を増やすべきであるという強い主張をしている。
  3. アフリカのブランドは、世界で最も裕福なサッカーリーグのマーケティングに年間4,000万ドルを費やす。賭博会社や観光局、中国所有の携帯電話ブランドに至るまで、アフリカを中心とした会社は、英国のプレミアリーグチームに数百万ドルをマーケティングコストとして費やし、国内外のファンにリーチしている。地元のアフリカリーグが苦戦しているのにも関わらず、世界で最も裕福なサッカークラブをサポートしている、という結果だ。
  4. アフリカ建設現場の中国人単身赴任者は大儲け。エチオピア政府と中国建筑工程总公司(CSCEC)が共同で進める、首都アディスアベバの新たな国立競技場(建物だけで推定2億2000万円の予算)の建設現場で働く中国人労働者は、かなりの高給取り。ここで働く47歳の男性は妻と2人の子どもを中国に残し、遠いアフリカの地で働くのと引き換えに、中国国内の約2倍の収入と無料の宿泊と食事を手に入れた。

【今週の特集】

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Quartz(英語版)の今週の特集は、「Disrupting Dimentia(認知症をディスラプトせよ)」です。長寿化が進み、高齢人口が増えていくなかで、痴呆症をいかにマネジしていくのかは、世界共通の課題。Quartz Japanの購読者は、英語のオリジナル特集もお読みいただけます。

(翻訳・編集:福津くるみ、写真:Quartz, Janngo, Alitheia Capital)