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India Explosion
爆発するインディア
Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週金曜日の夕方は、次なる巨大市場「インド」の今と、注目のニュースを伝えていきます。英語版(参考)はこちら。
世界トップクラスの大学がオンラインで講座を提供する教育プラットフォーム「MOOC(ムーク)」。
日本ではまだ大きな広がりは見られないが、GAFAなど世界のテック企業を席巻するインド人エリートの間では、YouTube、書籍(電子版含む)に次いで、大きな支持を集めている。
MOOCの中でも、最大の供給者である「Coursera(コーセラ)」のユーザーは実に480万人。一番人気は、スタンフォード大学とミシガン大学が提供する授業だ。
Courseraで学ぶインド人は教科書通りの学術的な授業よりも、IT系のスキルを学べるオンライン授業に満足しており、すでにCourseraのユーザー全体の10%を占めるまでになった。
実際、Courseraも、インド市場のユーザー獲得に力を入れている。
先日、インドのコルカタ経営研究所と提携し、ビジネススクールによるデジタル・IT分野の修士課程コースを提供すると発表。インド経営大学院(IIMs)とハイデラバードのインド商科大学院(ISB)から始め、今後さらに裾野を広げていく計画だ。
Courseraのジェフ・マジオンコルダCEOによると、これはインド市場のニーズに対しCourseraが応えることができるか、双方の可能性を見る指標という。
「人口動態を見ると、インドだけで今後10年間で1億人もの労働人口が増える」と話すマジオンコルダCEOに、インドの教育市場のトレンドについてQuartzが聞いた。
MEET INDIAN NEEDS
インド人が学ぶAI講座
インドの需要にどう応えていますか?
インドで高校卒業後に大学に入学する人の割合は約26%です。
ナレンドラ・モディ首相は2025年までにこれを36%まで引き上げたいと発言していますが、素晴らしいことです。政府はGDPに占める教育支出を約3倍にしたと思いますが、大学入学者35%の目標に達するためには、新たに、およそ250の大学を確保し需要に対応する必要があると考えられます。
過去7年間で30〜35の企業が170の大学と提携し、3600のコースを登録しました。これらのコースのほとんどがデータ、データサイエンス、テクノロジー、ビジネスを学ぶものです。現在Courseraのユーザーは全世界で約4,400万人、そのうち約480万人がインド人で、アメリカに次いで2番目に大きな学習者人口を擁しています。
Courseraは、インドでさらにウケるでしょうか?
インドにおけるCoursera利用者のデータから、多くの人が「仕事に就くため」に学ぶというニーズが浮かび上がります。
ここインドでは「経済的機会を得る方法は勉強すること」という概念が確立しているのです。両者をつなぐアクセスをどう構築するかが問題です。
当初はBtoCで、誰でもCourseraにアクセスでき、コースを無料で受講し、終了証書を購入できる形でした。2016年に私たちはCoursera for Businessを立ち上げたのですが、多くの企業が従業員のスキルアップに関心を持っていることが明らかになりました。就職者の多くは大卒ではあるものの、企業サイドが望むようなスキルは持っていないのです。
雇用する側は、世界の急速な変化に伴い、新たな領域のスキルとテクノロジーが生まれていることを認識しています。世の中は凄まじいスピードで変化しており、たとえ大学を卒業したのが10年前だとしてもそれではもう古すぎて対応できません。
こういった状況があり、Coursera for Businessはサービス提供を開始してから3年間で、従業員のスキルアップを目的として2000社以上の企業に採用され、毎年100%以上伸びています。インドでは現在、大手IT企業を含む50社以上が利用しています。
RESPONSE FOR INDIA
インドの学生の間で最も人気のあるコースは?
過去1年間で一番受講者を集めたのは、以下のコースです。
- スタンフォード大学の機械学習のコース
- ミシガン大学のPython(パイソン)を学ぶプログラミング入門コース
- 人工知能(AI)の入門コース
- ニューラルネットワークとディープラーニング
- プリンストン大学のアルゴリズム講座
Courseraはインド市場で信頼を得たと思いますか? ユーザーはLinkedInのプロフィールや履歴書に資格として載せるのでしょうか?
数年前、LinkedInで2番目に使われることが多い資格情報(バッジ)は「Courseraのコース修了証明書」だと聞きました。私はその状況はまだ続いていると考えています。
さらに、4〜5コマの授業からなる専門講座も、LinkedInに掲載できる資格情報です。専門分野は他のものよりも価値があるとが分かりますが、そういったコースは学習量も多く、時間のかかる内容になってます。スタンフォード大学の教授で人工知能の第一人者であるアンドリュー・エン氏のディープラーニング講座の修了証明書は、LinkedInでも常に注目される資格です。ディープラーニングで取得できる学位は他にないのです。
インド市場は特に「値段」に敏感ですが、Courseraの戦略に影響しますか?
インドには480万人のCourseraユーザーがいますが、他の国や地域と比べると、お金を払って受講する生徒の割合は少ない。
ただ、ユーザーが支払う金額が予想を下回ることはよくあるので驚くことではありません。そしてこれが、Courseraと機関との連携がとても価値あるものだと考える理由の1つです。キャンパス用にCourseraを購入している大学の学生(単科大学や大学向けのコースを特定で提供)だと、大学ではなく実際に支払いをしているのは学生という可能性があります。
そのため、支払いは教育機関同士で処理し、教育は個人に提供されるという仕組みがあれば、人々が学びと職に就くプロセスは簡単になると考えます。
This week’s top stories
インド注目ニュース5選
- シャオミがオンライン融資を開始。中国のスマホマーカー、シャオミは11月からインドで試験運用していた融資サービスアプリ「Mi Credit(ミ・クレジット)」の本格的な提供を開始することを発表。現在は国内約10州で展開し、これまでに最大10万ルピー(約15万円)の融資を実施した。来年3月までに全国での供用をスタートさせ、将来的には保険販売や資産管理などサービス内容を拡充させる方針を示している。
- インドの銀行、70億ドルの追加資本が必要。インドの銀行は2020/21年度までに70億ドル(約7596億円)の追加資本が必要になることを、格付け会社フィッチが指摘した。11月にはムーディーズによって格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げられていたインド。政府債務残高は60%を超えており、拡大する融資需要への対応、不良債権の処理など問題は山積み。
- Z世代は見た目の美しさだけには興味はない。自分の人となりを伝えるために選ぶ単語はもちろん重要だが、インドのZ世代(18~25歳)のデートアプリの自己紹介欄から興味深い傾向が明らかになった。Tinderによると、彼らの自己紹介には「環境」「平等」「気候変動」といった言葉が多く、Z世代は社会的弱者の権利擁護や環境問題を代弁するアドボカシー型であることが示唆された。
- 新法案でSNS各社にトラブルの予感。インド政府が制定を進める個人情報保護法により、SNS各社は対応を迫られそうだ。関係筋によると本人認証の実施を義務付ける可能性がある。Facebook、WhatsApp、Twitter、Instagram、TikTokなど何百万人ものユーザーを抱えるSNSでポリシー上の問題や技術的なトラブルが多数発生する恐れがある。
- 持ち運べる「Alexa」がインドに登場。Amazonは12月18日、バッテリーを搭載したEchoスピーカーを4999ルピー(約7600円)で発売する。新商品「Echo Input Portable Smart Speaker Edition」のサイズは72x102x102mm、重さ448g。ポータビリティ機能への需要に応えた形で、Alexa担当のバイスプレジデント、ミリアム・ダニエルは「Alexaを部屋から部屋へ連れて行けるようにしたい」と話す。この製品は他国でも販売される予定。
【今週の特集】
Quartz(英語版)の今週の特集は、「Disrupting Dimentia(認知症をディスラプトせよ)」です。長寿化が進み、高齢人口が増えていくなかで、痴呆症をいかにマネジしていくのかは、世界共通の課題。Quartz Japanの購読者は、英語のオリジナル特集もお読みいただけます。
(翻訳・編集:鳥山愛恵、写真:ロイター、COURSERA)