[qz-japan-author usernames=”kurumifukutsu”]
MILLENNIALS NOW
ミレニアルズの今
Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週木曜日の夕方は、「ミレニアル世代」のトレンドを、注目のビジネスニュースとともに紹介していきます。
マーク・アンデルセンとベン・ホロヴィッツが2008年に立ち上げたトップVC「Andreessen Horowitz(アンデルセン ホロヴィッツ)」のパートナーであるLi Jinが、「Passion Economy(パッション・エコノミー)」という言葉を提唱し、アメリカでは次のビジネストレンドとして話題になっています。
パッション・エコノミーは、革新的なサービスを提供する「Gig Enonomy(ギグ・エコノミー)」のさらに先にある新しいビジネスモデルを指します。
そもそも、ギグ・エコノミーとはなにか? これは、インターネットを通じて単発の仕事を受注する働き方や、それによって成り立つ経済形態のことで、2015年頃から米国のメディアで頻繁に使われるようになった用語。アプリなどのプラットフォームを使い、雇用者と労働者の需要と共有をマッチさせ、個人の働き方も多様化するようになりました。
ギグ・エコノミーに代表される主なサービスが、「Uber」「Lyft」「Airbnb」「TaskRabbit」「Amazon Home Services」などです。
Gig Economy (ギグ・エコノミーは終わり?)
アメリカでは現在、3人に1人がギグ・エコノミー関連の仕事をしており、2025年までには、LinkedInやUberといったプラットフォームは世界のGDPに2.7兆ドルを追加し、さらに7,200万人を雇用する予測が立てられています。また、アメリカでは下記のようなことも調査から分かっています。
- 94%の雇用主は、非伝統的な雇用を検討する
- 64%のギグワーカーが伝統的な雇用よりもギグワークを好む
- 成人の57%が、ギグ・ワークが多くなることで労働者に悪影響を及ぼすと感じる
ギグ・エコノミーはすでに問題も多く発生しています。よくトピックになるのは、就業者が個人事業主として扱われることで、賃金や待遇が十分ではないことが問題になります。例えば、イギリスではドライバーは個人事業主てはなく、雇用者であるため、最低賃金を払う必要があると、2016年にUberが訴えられ、判決が下されました。
そして、2019年11月には、ロンドンではUberの事業認可が取り消しされました。アメリカでは、カリフォルニア州議会上院で2019年9月10日、「企業が労働者を外部委託として扱う要件を厳しくする」という法案が通過しています。
つまり、ギグ・エコノミーは新しい労働者を増加させたり、人々の働き方を多様化させるといったメリットもあれば、労働条件や賃金、待遇といった部分で雇用者と労働者との間でバランスが取れなくなってきているケースが増えています。
「『誰もが社長になれる』ことが約束されていたが、結果として仕事は単調なことが多い」と、また、先出のLiは述べています。
Passion Economy
次は「パッション・エコノミー」
そこで今、新しいビジネスモデルとして注目されるのがパッション・エコノミーです。主な特徴として下記が挙げられます。
- すでに存在しているビジネスや職業だけでなく、すべての人が利用できる
- 個性をバグではなく、売りポイントとして見る
- デジタル製品と仮想サービスにフォーカスする
- ビジネスを成長させるため、運営するための包括的なツールを提供
- 新しいカタチの仕事への道を開く
特に、サービスの点で「ギグ・エコノミー」とは違う点があり、これまでAmazonやEbayなどは商品を販売するプラットフォームを提供し、TaskrabbitやUberといったものは直接本人がやり取りするサービスを提供してきました。
ですが、Podia、Teachable、Thinkificなどの「パッション・エコノミー」に属されるサービスは、SaaS(クラウドで提供されるソフトウェア)を使用し、クリエイターはビデオコースとデジタルメンバーシップを制作・販売することができます。
以前は、「専門知識をもったインフルエンサー」といった類は、現地の顧客に限定し、直接、講義やクラスを開く必要がありました。 しかし、新しいプラットフォームでは、専門知識が直接的に狭い範囲で必要になるのではなく、もっと広く経済的価値を持つという考えを利用しているので、物理的な作業を必要としていません。
Type of Work(仕事の種類)
- ポッドキャスター:Anchorやglowといったポッドキャストサービス
- 音声コンテンツクリエイター:KnowableやSpoonなどの音声ベースの配信サービス
- ニュースレターライター:SubstackやRevueといったニュースレター有料購読サービス
- ビデオコースクリエイター:TeachableやUdemyなどの映像配信サービス
- ヴァーチャルティーチャー、チューター:VIPKIDなどの子ども向けの学習プラットフォーム
- ヴァーチャルプロフェッショナルコーチ:Torchのなどのプロフェッショナル向けの学習プラットフォーム
これらの職業とツールを見ると分かるように、「専門家でなくても個人が誰でもサービスを開始できる」というのも最大のポイントです。これまでは、何かの配信サービスを開始するには、ソフトウェア開発の知識を活用し、ウェブサイトやアプリを一から開発する必要がありました。
しかし、近年ではすでに、ベースとなるプラットフォームが用意され、簡単に私たちがそれらを利用し、たとえコーディングの知識がなくとも簡単にサービスを始められるのです。
Near future
「新しいプラットフォームを活用することで、起業家は個性と創造性を収益に変えることができる」と、先出のJinは話しています。また、「個人が自分のユニークなスキルや知識を存分に生かすことができるパッション・エコノミーは今後、数年で急成長するだろう」という見解を述べています。
ミレニアル世代にとっても、自分で何かを簡単にスタートできるビジネスというのは非常に魅力的だと思いますし、特にこれから次世代を担っていくジェネレーションZ世代には必須となる仕事の選び方になっていくのかもしれません。
This week’s top stories
今週の注目ニュース5選
- Casperが少人数の解雇を実施。ニューヨークを拠点にマットレスを販売する「Casper」が今週、約30人の従業員を解雇したことが分かった。解雇は、会社をマルチチャネルビジネスへシフトするための一環とされているが、同社の広報代理人は正式なコメントを控えている。
- 大麻取り扱い免許の申請にフライング? 大麻の取り扱い許認可を申請するLA政府の承認データベースに、商業目的で、100しかない営業免許に対し、およそ800人の申し込みが殺到。しかし、システムがスタート時間前に申請可能になっており、同システムで忖度があるのでは?と疑いの声が高まっている。
- カニエ・ウェストのオペラが今週末ニューヨークで開催。「アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ」にて先日、新作のオペラ「Mary」を披露したラッパーのカニエ・ウェスト。12月22日(現地時間)、ニューヨークのリンカーンセンターで、同オペラが公演される。11月にはLAのハリウッド・ボールで初上演のオペラ「Nebuchadnezzar」を披露したばかり。
- Gen-Z世代はTinderでマッチするだけのことを重要視しない。マッチアプリ「Tinder」の2019年度のスワイプレポート「Year in Swipe」よると、Gen-Z世代はミレニアル世代よりも、自己紹介欄に「気候変動」や「社会的正義」、「環境問題」、「銃規制」といったトピックを載せているようだ。ちなみに、ミレニアル世代での一番人気のトピックは「旅行」。
- ミレニアルの労働人口に、これからどう備えるか。 最近の統計によると、現在のアメリカ人労働者の3人に1人がミレニアル世代。 2020年までには、全アメリカの労働者の半分がミレニアル世代で構成される。そのため、その世代の従業員は企業に多様なニーズに対応するために職場の変更と改善を願っている。
【今週の特集】
今週のQuartz(英語版)の特集は「The business of water scarcity(水不足のビジネス)」です。世界中で、新鮮な水が足りなくなる事態が発生しています。企業たちが支配する水ビジネスと、資本主義の問題について、Quartzが論じます。
(写真:ロイター、Andreessen Horowitz、Thinkfic)