[qz-japan-author usernames=”kurumifukutsu”]
MILLENNIALS NOW
ミレニアルズの今
Quartz読者のみなさん、こんにちは。2020年がスタートしました。今年もどうぞPMメール「Millennials Now」をよろしくお願いします。今日は、アメリカで再注目されている「ポッドキャスト」についてお届けします。
海外で暮らしていたり、外国人と会話をしていると「今日の朝、ポッドキャストを聞いていたら〜」というフレーズをよく耳にします。日本ではポッドキャストというと、「古い音声サービス」と感じる人も多いかもしれません。というのも、2005年にAppleがiTunesへのポッドキャスト配信機能を追加したことで普及し始めたサービスであり、今さら? と思うからです。
しかし、アメリカではポッドキャストのリスナーは、増え続けています。
アメリカのエディソン・リサーチの調査によると、2019年、毎月ポッドキャストを聞くアメリカ人(12歳以上)は9,000万人で、12歳以上のアメリカ人口の32%を占めることが分かりました。なお、同年、ポッドキャストを聞いているアメリカの12歳以上は人口の51%を占め、1億4,400万人が聞いているといいます。この数字を見るだけでも、ポッドキャストビジネスがいかに拡大しているのか、というのが分かります。
特に興味深いのが、毎月ポッドキャストを聞いている数字が、12歳〜24歳までが人口の40%、25歳〜54歳までが39%と、ジェネレーションZ世代やミレニアル世代にも支持されているという点です。ポッドキャスト数は70万を超え、エピソード数は2,900万以上にも。トピックとしては音楽、ニュース・情報、エンターテインメント(セレブリティやゴシップを含む)が人気。家にいるときや車の中、通勤中、ジムなど、さまざまな場所でポッドキャストが聞かれています。
また、ポッドキャストにおける広告収入も2021年までに10億ドル(約1,080億円)を突破する見通しだと言われています。
アメリカで人気なのは、SpotifyとPandora。
Googleも2018年に参入しましたが、特にSpotifyはポッドキャストに力を入れていて、50万を超えるポッドキャストを用意。また、Spotifyは、2019年2月、ポッドキャストの制作会社Gimlet(ギムレット)とAnchor(アンカー)のふたつを合わせて3億4,000万ドル(約370億円)で買収。さらに、同年3月にはParcast(パーキャスト)も買収し、ポッドキャストビジネスへ本気で力を注いでいることが分かります。
Spark a resurgence
ブームの火付け役
ポッドキャストのチャンネルには、実にさまざまなものが存在しています。
アメリカでポッドキャストの火付け役になったのは、Sarah Koenigがホストを務める2014年にスタートした番組「Serial(シリアル)」。これは実際にあった犯罪を調査し、物語を語っていくものです。これまでのポッドキャストは、音楽やニュース、語学取得のためのサービスが多かったように感じますが、このようなストーリーテリングなものが登場することで、ポッドキャストの人気に一役買いました。
「Serial」は、2018年の時点ではシーズン1とシーズン2を合わせて3億4,000万ものダウンロード数を超えていて、ポッドキャスト界では世界記録を保持しています。
The New York Timesが2017年1月に開始したポッドキャスト番組「The Daily(ザ・デイリー)」をはじめ、Washington Post、The Financial Times、Wall Street journalなども大手メディアも参入。また、Coachの「Dream It Real(ドリーム イット リアル)」やChanelの「3.55」、グッチの「Gucci Podcast」など、大手ファッションブランドも独自のチャンネルを展開しています。
Nexflixも独自のチャンネル「We Are Netflix」を展開していて、2019年10月に初のオリジナルコンテンツ「The Only Podcast Left – Daybreak」をリリースしたばかり。映像コンテンツを展開する同社が今後、どのように「音」と「映像」との関係性を繋げていくか、注目したいところです。(Guimletが2016年秋、同社初となる音声ドラマ「Homecoming(ホームカミング)」の配信をスタート。その後、2018年11月、アマゾン・プライムでドラマ化された「Homecoming」の配信をし大成功を遂げているので、Netflixも今後、音声からの映像化も増えていくでしょう。)
また、ポッドキャストといえば無料コンテンツが多いですが、
Luminary、Stitcher、Brewのような有料のサブスクリプションを取り入れたサービスも登場するなど、今後はこういったモデルも多くなっていくでしょう。
Why podcasts? (なぜ、ポッドキャスト?)
先述のように、今、ジェネレーションZ世代とミレニアル世代にも多大な支持を受けるポッドキャスト。2018年には57%、2014年までには35%の数字だったものが、最新の調査では71%がポッドキャストを聞いているといいます。
どのようなジャンルに興味があるかというと、13歳から17歳までのリスナーの41%がコメディ、音楽が33%、そしてインタビューものが31%となっています。もちろん、世界情勢にも興味があるので、28%がニュースコンテンツを聞くという結果になっています。
また、有料サブスクリプションもいとわないようで、23%(ほぼ4人に1人)がポッドキャストに毎月平均で5.4ドル(約580円)を課金。ポッドキャストにおけるブランド広告に関しても73%が特に気にならないと答えていて、広告に対するアレルギーもさほどないようです。
そもそも、ポッドキャストがこのように若い世代に支持される理由は、ライフスタイルの変化が関係していて、自分の興味のあるものを簡単にピックアップして情報を集めるという、今の生活スタイルに密接であることが考えられます。
- スマートフォンやホームスピーカーといったテクノロジーツールの普及
- 情報を集め、人々とすぐにシェアする価値観
- 自分で好きなときに好きな番組を選んで聞ける
- 世界情勢についてのアンテナと考察
- ジムや運転中、通勤中に聞ける手軽さ
The next is Podcaster
次は「ポッドキャスター」へ
ポッドキャストを使ったビジネスは、「専門家でなくても個人が誰でもサービスを開始できる」という次世代のビジネスモデルとして注目される「パッション・エコノミー」の一つでもあります。
動画を作るのはコストも時間もかかり大変ですが、ポッドキャストは音声のみで、先述のAnchorのようなポッドキャスト制作ツールを使えば、誰でもすぐ配信することができます。そのため、ポッドキャスターや音声コンテンツクリエイターといった職業が今後、ユーチューバーに代わって確立されていくでしょう。
Spotifyは2019年8月、ポッドキャスト配信者向けダッシュボードサービス「Spotify for Podcasters」をリリースしましたし、コンテツクリエーター向けのクラウドファンディング「Patreon(パトレオン)」には、リスナーが毎月一定額を支払ってポッドキャスターを応援するポッドキャスト向けの集金スキームが用意されています。
映像コンテンツが世間を賑わせていた昨今ですが、2020年はポッドキャストビジネスから目が離せなくなりそうです。
This week’s top stories
今週の注目ニュース5選
- お金を使わない若者の代わりに50歳以上がファッション業界を支える。イギリスのシンクタンクInternational Longevity Centre (ILC)の調査によると、50歳以上が2011年から2018年に服や靴に使ったお金が21%増加したことが分かった。2040年までにも増加傾向にあるといい、今後のファッション業界のメインターゲットはもはや若者ではなくなりそうだ。
- Impossible Foodsが新作を発表。アメリカのImpossible Foodsが、植物由来のポークとソーセージを限られたバーガーキングの店舗で1月下旬に発売する。朝食として発売される新作は、同社が豚肉の消費が全体の75%を占める中国へ市場を拡大する前のテストでもあるという。
- SonosがGoogleを提訴。オーディオスピーカーを展開するSonosが、1月7日(現地時間)、スマートスピーカーの設計に関する5件の特許を侵害したとして提訴した。Sonosは、Googleがスマートスピーカー技術や音声操作技術などで、Sonosの特許を侵害していると損害賠償を請求している。
- 2つの新しいカンナビノイドが見つかる。イタリアの研究者グループが2019年12月30日、THCやCBDのような2つの新しいカンナビノイドの発見を発表した。ひとつは、THCの30倍もの効能があるとされるTHCP。もうひとつは、CBDと同様の効能があるCBDP。これらが効果的であるかはまだ分かっていないが、他の物質よりも病気などの治療に向いている可能性がある。
- サステイナブルなゴールデングローブ賞。1月6日(現地時間)に開催された第77回ゴールデングローブ賞の授賞式には、現代らしくサステイナブルな側面があった。会場でのディナーの料理がすべてヴィーガン料理で、紙ストローを使い、水はプラスチックではなくガラス瓶など、環境保護にアピールしたものに。
【今週の特集】
今週のQuartz(英語版)の特集は「The birth of geriatric cool(クールな高齢化の誕生)」です。日本だけでなく、多くの先進国で高齢化が大きな課題となる中、いかに老年をミレニアルズのような躍動ある産業として捉えるのか、大きな変化の兆しをQuartzがレポートしていきます。
(写真:ロイター、Edison Research、Spotify)