Africa:アフリカ料理を世界の舞台へ

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Africa Rising

躍動するアフリカ

Quartz 読者の皆さん、こんにちは。毎週水曜の夕方は、次なるイノベーションの舞台として世界が注目する「アフリカ」の今と、主要ニュースを伝えていきます。英語版(参考)はこちら

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今日、お届けするテーマは「アフリカ料理を世界の舞台へ」。Sahel Consultingの共同創設者で、アフリカにおける農業戦略や食問題などに精通する起業家、Ndidi Nwuneliからの寄稿文です。

世界の食産業にアフリカの食文化を持ち込むために、起業家には何ができるのでしょうか。紹介されている多彩なアフリカ料理からは、一括りにされがちな“アフリカの多様性”も見えてきます。

 

約6カ月間に渡り、私は簡単な調査を行った。ヨーロッパやアメリカで「あなたが好きなアフリカ料理は、何ですか?」と聞いてみたのだ。しかし、かなり高い割合で、相手にぽかんとされた。

かわって「あなたが好きなアジア料理はなんですか?」と聞くと、寿司やパッタイ、サモサなどを含む長いリストが返ってきた。

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私はさらに、世界の飲食産業におけるアフリカ産食料の位置づけや認知についても調べてみた。カカオ、カシューナッツ、ヤムイモ、コーヒー、紅茶などの一般的な食べ物から、ルイボス、モリンガ、フォニオなど少しニッチな食べ物まで、アフリカの食材としてどの程度知られているのかを調査してみたのだ。

認知度は概ね低く、チョコレートはみな好きである一方で、世界のカカオのおよそ70%が西アフリカで栽培されていることや、ルイボスティーは南アフリカの岳陵で育てられていることはほとんど知られていないという結果となった。

How African cuisine is to be expanded

食の魅力を
伝えるために

私が実施した非公式のアンケート結果が示すのは、世界の飲食産業について語るとき、そもそもアフリカが含まれていないことが多く、含まれていたとしてもアフリカ大陸には54もの国があるのに一括りにされ、料理も1種類にカテゴライズされがちだという事実だ。

残念ながら、世界中で見られるこの認識はアフリカ大陸内の若者にも定着しつつあり、グローバルチェーンであるKFC、ドミノピザ、クリスピークリームドーナツなどのファストフード文化がアフリカの都市部で勢いを見せていることと無関係ではないだろう。

アフリカ大陸は実に多様で栄養価の高い食文化で溢れており、世界はそれらを経験する機会を見過ごしている。さらには、アフリカ諸国の豊かな文化や伝統について触れ、学ぶ機会も制限されてしまっているのだ。

私自身、20年以上もアフリカの農業と食産業の進化のために活動してきたわけだが、今回のアンケート結果も踏まえ、世界におけるアフリカの食料や料理の位置づけをどのように改善できるだろうかとリサーチを進めることにした。

重要になってくるのは、アフリカの起業家たちの協力である。ブランディング、ストーリーの組み立て、イノベーションとパートナーシップ構築のために投資してもらい、バラエティ豊かなアフリカ料理の認知度アップを勢いづける必要がある。

さらに、散らばった民族間のつながりを再構築し、食産業の位置づけとアフリカ料理に対するマインドセットの変化に必要なサポートと環境を作り出してもらうために、アフリカ諸国の行政の協力も不可欠だ。

Japanese branding (日本に倣う)

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世界における日本料理(和食)の台頭は、主要なアフリカ諸国のステークホルダーにとって注目すべき教訓となっている。

現在のエチオピア、セネガル、ナイジェリア料理と同じように、1960年〜70年代、和食は外国ではあまり認知されていなかった。文化交流における食産業の役割と可能性、雇用創出、そして和食の需要に気づいた日本政府は行動に出る。

2003年には日本貿易復興機構(JETRO)の働きでブランディングを強化し、飲食店や食材の認定とPR活動の強化を行なった。戦略的なブランディングと政府の協力も後押しとなり、和食は2012年、ユネスコの無形文化遺産に登録された。

日本の国を挙げての努力は、尊敬に値するものだ。2006年には日本国外に約2万軒しかなかった和食飲食店は、2017年にはおよそ12万軒近くまでに増えた。飲食店の広がりだけでなく、今やアメリカやイギリスの大手スーパーマーケットの売り場には寿司が並ぶ。現在、和食は食べたい外国料理ランキングでもトップを走っているのだ。

グローバル市場に見る和食の成功例は、戦略と民間両セクターの協働がもたらす可能性を示している。コートジボワール、エチオピア、ナイジェリア、セネガルなど、異なる民族・地域ごとにユニークな伝統料理を持つ国々は参考にできることも多い。

エチオピアは好発進しており、1980年代の移民の流れを汲んで現在アメリカにはエチオピア料理を振る舞うレストランが350軒ある。和食と同様、エチオピア料理も非常にヘルシーだと言われている。テフという穀物で作られる伝統料理のインジェラはグルテンフリーで、食物繊維、カルシウム、鉄分とタンパク質が豊富で、成長が続くベジタリアン・ヴィーガン市場にとっても魅力的であり、万人に受け入れられる可能性を秘めている。

become a global cuisine

アフリカ料理を世界へ

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有名シェフが世界の大都市に高級レストランをオープンするなど、アフリカの他の諸国も追随している。セネガルのシェフ、ピエール・シアムはニューヨークに開店したレストランTerangaと運営会社のYolele Foodsを通じて料理を介してアフリカの文化を紹介する取り組みを進めると同時に、キヌアの代替品としてフォニオのプロモーションに力を入れている。

ワシントンDCを拠点に活躍するナイジェリア系アメリカ人シェフのクワメ・オンウワチは、米『Times』誌の「次世代の100人」に選出された。この勢いに乗り、バラエティ豊かで美味しく、ヘルシーなアフリカ料理を世界的に発信していくべきである。

世界的に認知度を上げるには、グローバル市場を舞台とするステークホルダーにまず、アフリカ料理について興味を持ってもらい、視野を広げてもらいたい。

例えば、諸外国の高等学校や大学の学食のメニューにアフリカの料理を加えることで、若い世代にも新しい料理に親しんでもらう取り組みはどうだろうか。各国の行政機関にも、アフリカの食材の輸入に対する制限を見直してもらい、アフリカの起業家たちが世界基準で活躍できるよう協力を願いたい。

アフリカ料理を世界に広めることは雇用を生み出すだけでなく、食文化が世界の架け橋となることでステレオタイプを減らし、本来の人と人とのつながりを再認識する機会になるはずだ。

This week’s top stories

今週のアフリカニュース5選

  1. 2020年もアフリカの経済は成長し続ける。国際通貨基金(IMF)によると、アフリカは2020年も経済成長が続く。特に南スーダン(8.2%)やルワンダ(8.1%)、コートジボワール(7.3%)といった国がGDP成長率が高くなるだろうと予測している。
  2. アフリカで最初のドローンとデータアカデミーが開設。ユニセフは、アフリカで初となるドローンとデータアカデミー(ADDA)をマラウイ共和国・リロングウェにオープンした。この動きは、子どもや若者の生活に影響を与えるプログラムやサービスで、ドローンの使用を促進する取り組みの一環として始まった。
  3. 経済力が高くても、パスポートの効力は弱くなる。ナイジェリアは、アフリカの中でも一番の経済力を持つ国だが、その中で一番パスポートの効力がない国になってしまった。同国はこの10年で19位のランクを落とし、世界では95位にランクされている。
  4. 南アフリカで遺体レンタル? 南アフリカ共和国で、遺体をレンタルする犯罪シンジケートやそのサービスを利用した保険金詐欺が横行。The Association for Savings and Investment South Africa(ASIA)によると、2018年、生命保険の不正請求は3,708件、その金額は6,929万8,500ドル(約76億円)に上るという。
  5. アフリカがサステイナブルなファッションを必要とする理由。国連の調査によると、2050年までにアフリカの人口は倍増し、25億人に達する。人口増加と共に衣服ももちろん必要となるが、ファッション業界は、地球上のCO2排出量の10%を占めていることもあり、サステイナブルな意識を高めていくことが今後の課題となる。

【今週の特集】

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今週のQuartz(英語版)の特集は「Accounting at a crossroads(岐路に立つ会計事務所)」です。WeWork問題をはじめ、会計事務所の存在意義を揺るがすような事態が次々と発生するなか、いかに会計事務所は変わるべきなのか。Quartzがレポートしていきます。

(翻訳・編集:福津くるみ、写真:Quartz, ロイター)

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