Millennials:激伸する「セックステック」は誰のものか

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MILLENNIALS NOW

ミレニアルズの今

Quartz読者のみなさん、こんにちは。今日の「Millennials Now」では、CES 2020でも話題となった「セックステック業界」の盛り上がりと、変化し続ける「性」の捉え方との関係性についてお届けします。

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ここ数年、「ダイバーシティ(多様性)」というワードが広まったように、世界中で人の生き方に対する選択肢が大きく変化を遂げました。なかでも尊重されるべきパートナーとの問題に関しては、同性婚をはじめ、結婚をしない選択や子どもを持たない選択、養子縁組など、選択肢は実に様々。特に、ジェネレーションZ世代やミレニアル世代とって、その多様化は顕著だといえます。

自分の生きやすく、好きなように生活する……それが、現代の人々の生き方です。その中でもミレニアル世代は、「家を買わない」「車を持たない」「お酒を飲まない」、そして「セックスをしない」と言われています

ミレニアル世代はパートナーとのセックスが減っている、というようにも言われ、『The Atlantic』は「The Sex Recession(セックス不況)」という言葉を生み出しました。同メディアは、ミレニアル世代がセックスをしなくなっている理由として下記を挙げています。

  1. マスターベーションで満足すること
  2. 「一夜限り」のカジュアルな付き合い方(フックアップ)の普及
  3. マッチングアプリでの出会いの増加
  4. セックスに対する身体的不快感
  5. 裸を見られることに対する不快感

一方、女性向けのメディア『Cosmopolitan』は、最新の調査で、ミレニアル世代は数よりも質にこだわるセックスを92%が好み、ミレニアル世代の71%が満足しているという結果を示しました。

もちろん、セックス不況であることは事実でありますが、それは言い換えると性生活の楽しみ方も多様になってきてると言えるでしょう。つまり、セックスがパートナーありきのものではなく、1人でするもの、セックストイを使うものなど、必ずしも相手がいて行われるものではなくなっているのです。

Sex-tech

セックステック業界の拡大

そういった「1人でも楽しむことが増えた」「パートナーの多様性」がある現代おいて今、拡大している産業が「セックステック」です。

セックストイを展開する「Tenga」の最新調査によると、アメリカ全体でマスターベーションをしたことがある人は84%(13歳以上)で、男性は91%、女性は78%という結果になっています。ミレニアル世代は88%が経験済、また、ジェネレーションZ世代は70%が経験しています。なお、LGBTQ+に関しては94%と、高い数字になっています。

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また、興味深いのは、女性はマスターベーションで満足する割合が37%なのに対し、男性は21%。一方で、セックスをすることで満足する女性は33%、男性は50%になっています。

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こうした変化とテクノロジーの進化が融合し、今、大きなマーケットの一つになってるセックステック産業。まだ新しいカテゴリーではありますが、すでに300億ドル(約3.3兆円)もの価値のあるマーケットとして知られ、それに関連したスタートアップ企業も多く出始めています。

セックステックといえば、ラブドールブランド「RealDoll」を手がけるAbyss Creationsの創設者マット・マクマレンが、新プロジェクトとしてセックスロボットのブランド「Realbotix」を立ち上げています。発売するのがAI搭載のセックスロボット「Harmony」で、価格帯は、約8,000ドル(約100万円)から15,000ドル(約200万円)です。

さらに、女性向けにも同じ「Realbotix」が制作したAI搭載の初の男性セックスロボット「Henry」が誕生。11,000ドル(約120万円)から15,000ドル(約165万円)で販売されています。

また、同社はプラットフォーム「RealDollX」を2019年2月にローンチ。自分自身でカスタマイズしたヴァーチャルのRealDollをオンライン上で制作でき、会話することもできます。

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For Women and LGBTQ+

女性が手がけるスタートアップ

先述の「Tenga」の調査からも分かるように、性生活を楽しみたいと考えている女性も多くいます。

今年1月に開催された「CES 2020」では、セックステックのブースが話題になりました。というのも、CESの主催団体CTA(Consumer Technology Association)が今年、セックステックの新鋭スタートアップ「Lora DiCarlo(ローラ・ディッカーロ)」に対し、「健康とウェルネス」カテゴリーに参加して賞を競うことを1年限定の試行として許可したからです。

実は、この背景には、2019年にCTAが「Lora DiCarlo」のプロダクト「Osé」へ与えたイノベーション賞を取り消し、その後、5月にCTAが謝罪して、再度、賞を与えたという経緯があります。

ローラ・ハッドドックがCEOを務める「Lora DiCarlo」は、2017年に設立。エンジニアなども含め、チームのほとんどが女性メンバーを占めます。

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同社が展開する特許申請中の小型のマイクロロボットの「Osé」(290ドル=約32,000円)は、2019年12月から先行発売され、12月の発表から数時間以内に100万ドル(約1.1億円)以上、2019年の最後の5週間で300万ドル(約3.3億円)以上を売上げました。

より人のタッチに近い感覚を感じることができ、女性とLGBTQ+ の消費者にフォーカスした製品展開をしていますが、「Osé」に関しては46%が女性、56%が男性の購入者という結果で、パートナーとのセックスを向上させたい男性からの興味もあることが分かります(『Cosmopolitan』によると、パートナーとのセックスでトイを使う人は44%という結果もあります)。

「CES 2020」で新たに発表されたのは、「Baci」と「Onda」。それぞれ、女性向けの違った種類のオーガズムに達成することを目的にしていてます。

ほかにも、アプリ連動型で音と合わせて楽しむバイブ「OhMiBod」、女性が創設者を務め、オーガズムのデータをスマホに取り込む機能まで付いたバイブを展開する「Lioness」、「マインドフル・セックス」を導き、女性に対してのセックスライフを向上させるアプリ「Ferly」など、これまで男性的なもののように考えられていたプロダクトは、今、女性向けにも拡大しています。

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さらに、「Snapchat」のCEO、イヴァン・スピーゲルの妹で実業家のキャロライン・スピーゲルは、女性向けの音声と文章だけのポルノサイト「Quinn」を、2019年4月にローンチ。すでに100万ドル(約1.1億円)近くの資金調達を達成しています。視覚ではなく、聴覚で楽しむコンテンツを制作していますが、すでに競合となる同様のスタートアップ「Dipsea」が存在し1,700万ドル(約18.7億円)の評価を受けているため、今後どのように確立していくかは気になるところです。

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In the future

人間の心を満たすか

このように、毎年進化していくセックステック業界ですが、ジェネレーションXやミレニアル世代の生活やジェンダーが多様化するにつれ、さらに個々の「楽しみ」を満たしてくれるプロダクトが生み出されていくでしょう。特に、女性にとってはまだタブーだと言われていたセックステック業界において、その認識は薄れていくに違いありません。

ただ、人間同士のふれあいがなくなり、ロボットが恋人になってしまう未来も考えられる一方、人間の孤独が果たしてテクノロジーで埋められるものなのかも議論され始めています。

This week’s top stories

今週の注目ニュース5選

  1. Awayのステフ・コーリーがカムバック。アメリカ発の旅行カバンとスーツケースブランド「Away(アウェイ)」のCEOであるステフ・コーリーが、パワハラの告発から数週間後、辞任から一転、同社に復帰した。復帰に関して、彼女の辞任はあまりに急であり、間違いだったと述べている。
  2. PinterestがSnapchat超え。調査会社のeMarketerによると、Pinterestの2019年のユーザー数が8,240万人で、前年比9.1%増。8,020万人で前年比5.9%増だったSnapchatを抜き、アメリカでのユーザーランキング3位となった。ピンタレストは2020年、アメリカ全体の41.1%のユーザー数になると予測されている。
  3. Instagramがウェブ上でのDMをスタート。これまでスマホのアプリ上でしかできなかったInstagramのDM機能が、いよいよウェブ上で使用可能になった。若者世代に人気のアプリだけに、ビジネスでのやり取りもさらに効率的に行われていくはずだ。
  4. ライブを1人で楽しむジャンルは? アメリカの音楽業界で売上が伸びているライブ公演。チケット販売会社「VIVID SEATS」の調査によると、全体の16%の売上がシングルチケットで、ジャンルで見るとヒップホップが31.5%、K-POPが26.8%、オルタナティブが23.1%という結果になった。
  5. AIが映画業界へ。「Warner Bros.(ワーナー・ブラザース)が、映画リリースに関するグリーンライトの過程において、AIを採用することを発表した。これは、同社が映画の収益を予測したり、起用する出演者の価値を評価すること、映画いつ公開するかを決定することに役立つとしている。

【今週の特集】

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今週のQuartz(英語版)の特集は「Accounting at a crossroads(岐路に立つ会計事務所)」です。WeWork問題をはじめ、会計事務所の存在意義を揺るがすような事態が次々と発生するなか、いかに会計事務所は変わるべきなのか。Quartzがレポートしていきます。

(写真:ロイター、Tenga、Lora DiCarlo、Quinn、Ferly、RealDollX)

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