[qz-japan-author usernames=”ykazeem”]
Africa Rising
躍動するアフリカ
Quartz 読者の皆さん、こんにちは。毎週水曜の夕方は、次なるイノベーションの舞台として世界が注目する「アフリカ」の今と、主要ニュースを伝えていきます。英語版(参考)はこちら。
アフリカ大陸のテックシーンは、フィンテックのスタートアップ企業で盛り上がりを見せているが、支払決済テクノロジーの台頭も顕著だ。この動きは、クレジット系の世界企業がこぞって数億ドル単位で投資に動き出していることからも明らかになっている。
そんななか、支払決済、デジタル銀行と並行して成長を見せているカテゴリーが、「WealthTech(ウェルステック)」と呼ばれる資産運用のスタートアップだ。この新たなプラットフォームでは、特にナイジェリアの若い世代にフォーカスし、彼らがこれまでよりも簡単に国外の株や資本へ投資できるサービスを提供している。
New WealthTech Startups
気鋭の2社
仲間内で投資会社「Rise(ライズ)」を非公式にスタートさせたエレアニア・エケ(Eleanya Eke)は、その需要を確信したのち、正式にファンドマネージメント会社を立ち上げた。そこで、ナイジェリアの投資家たちはアメリカの住宅物件の購入と転売・賃借をすすめたが、参加者が増え、需要も急激に変化した。
「最初のうちはアメリカの不動産を扱っていたのですが、大勢の人がアメリカの株式に興味があることが分かりました。特にインターネットにつながっている世代からの大きな需要が見込めたのです。次の成長段階へと入ったRiseのユーザーは現在、1,000人に登ります」とEkeは話す。
潜在的な需要が高いことは明白なのに対し、ノウハウ不足とアメリカのブローカー会社との取引にたどり着くまでのハードルの高さが、個人で活躍している投資家たちの可能性を制限していた。
この現状を打破すべく、リッチモンド・バッセー(Richmond Bassey)とヤンモ・オモログべ(Yanmo Omorogbe)は投資アプリ「Bamboo(バンブー)」を立ち上げ、ナイジェリアのユーザーにもアメリカの資本に投資できる仕組みをつくり上げた。Bambooは、2019年10月にローンチし、現在1万人のユーザーがいる。
Basseyによると、同社のサービスはユーザーとアメリカのブローカー会社を繋げる一方で、ナイジェリア側では投資家のデータと素性検証を行うことでバリアを解消しているという。このプラットフォームを利用するには、同国で銀行口座をもつ顧客にナイジェリアの金融当局から付与される独自の個別IDを登録する必要がある。
両氏は、Bambooは米資本の取り扱いからスタートしたが、投資家たちの関心の方向性によって将来的には他の国のストックオプションの提供も視野に入れているという。
WealthTech is now growing
「ウェルステック」の成長
このウェルステックというプラットフォームの成長は、従来の銀行貯金という手法の先を見据えたナイジェリアの若者たちのマインドシフトの表れである。ナイジェリアを拠点にする「PiggyBank(ピギーバンク)」や「Cowrywise(カウリーワイズ)」といった資産運用アプリは、ナイジェリア通貨ナイラでの自動積立貯金を可能にすると同時に、お得な割引や、従来の銀行よりも利率の高い投資オプションを提供するなどして人気を伸ばしている。
ウェルステックはすべての人に開かれたプラットフォームではあるが、主なユーザー層はテクノロジーに明るくインターネットに慣れた若いプロフェッショナルたちだ。
RiseのEkeはまた、若者にはビジネスの可能性も十分にあると言う。「ナイジェリアの若者は、大きな可能性を秘めています。今まさに、キャリアをスタートさせる彼らの目の前には投資という長い地平線が伸びており、そこに大きな財産を積み上げていくことでしょう」。
過去30年間、親やその前の世代がナイラの不安定な相場変動により財産を失うのを目の当たりにしてきたナイジェリアの若者が、長期的な投資を見据えたとき、アメリカドルベースの資本に投資するのは極めて魅力的な選択肢だろう。
ここ2年ほどはドルに比べナイラの方が相対的に安定しているとはいえ、ナイジェリア中央銀行の策略による年間12%〜14%のインフレ率と全体的に不透明な景気を鑑みると、ナイラベースの資本に長期的に投資をするのは賢明とは言えない。
Going International
世界へ目を向ける
ナイジェリア証券取引所を信用していないナイジェリアの若者たちにとって、米株式や資本に投資できるのはまたとない機会だ。
ナイジェリア証券取引所は大手企業に所属する投資家が牛耳っており、人気のある株にはなかなか手が出せなかったり、市場自体がインサイダー取引によって操作されていたりする。これは、アフリカ最大の通信会社MTNがナイジェリア支局の株式を公開した際に大多数が個人の投資家では購入できない状態であったことからも明らかだ。
ラゴスの株式市場アナリスト、オノメ・アクピフォ(Onome Akpifo)は2008年の市場暴落を振り返り、この暴落により証券取引所は投資家たちの信用を失い、現在も「過去の亡霊に囚われている」と指摘する。「この出来事によって一部のナイジェリアの若者、そしてその親が破産しました」。
今後の可能性についての情報が共有し切れていないのも確かだ。良かれ悪しかれ、アメリカの株式市場にはAmazonやFacebookのような“サクセスストーリー企業”から、信用度が高く安定した一流グローバル企業であるCoca ColaやP&Gまでが幅広く混在している。
「ナイジェリアの市場では、大きなリターンやサクセスストーリーについて多くは耳にしません。それは存在しないからではなく、十分に伝えられないからです」とBambooのOmorogbeは言う。「市場予測がより難しいため、リターンがどこから発生するのかを見極めるのも難しいのです」。
それはナイジェリア証券取引所の720億ドル(約7兆9,000億円)という規模感からも推測できる。南アフリカのヨハネスブルグ証券取引所はその10倍の規模で、ダイナミックだ。パフォーマンス面でいうと、2019年のナイジェリア株式市場の全株価指数はマイナスリターンだった。
Where’s the main target to invest?
どこへ投資するか
株式市場が直面する困難は、ナイジェリアの経済成長の不振と政府の景気回復策の危うい状況を反映している。2016年の不景気を機にミドルクラスの若者たちの多くは、ナイジェリアのビジネスマンにしてアフリカ一の富豪、アリコ・ダンゴテ(Aliko Dangote)に追随すると見られる。
同氏は資産150億ドル(1兆6,000億円)を分散させてアメリカへより多く投資することで、通貨暴落やインフレに対するリスクヘッジを行っている。株式市場の弱点に加えインフレの脅威も、ドルベース資本への投資で長期的に資産を増やそうとする投資家の後押しとなっている。
「若者はナイジェリアの証券取引所をあまり信用していませんが、どこかに投資する必要があります。FacebookやTwitterやTeslaについては商品やサービスを利用しているのでもちろん知っていますが、今度は彼ら自身がそれらに投資できるようにするべきなのです」とEkeは話す。
This week’s top stories
今週のアフリカニュース4選
- CDC、アフリカへの投資に4億ドルを追加。英国政府所有の金融機関CDCグループは、1月20日(現地時間)、4億ドル(約440億円)のアフリカ投資取引に署名しました。これは、ロンドンで開催された「英国アフリカ投資サミット」において、ボリス・ジョンソン首相がアフリカ21カ国とイギリスのより深いつながりを呼びかけたため、CDGが新しい取引を発表しました。
- アフリカでも人気のBoltが好調。ヨーロッパとアフリカで乗用車、スクーター、フードデリバリーのビジネスを行うエストニアのスタートアップ企業Boltは、欧州の投資銀行から5,000万ユーロ(約61億円)を調達。技術と安全機能の開発を継続し、フードデリバリーやeスクーターなどの個人輸送といった新しい分野のビジネスを拡大しています。
- 南アフリカには、環境的に危険な尾鉱ダムが最も多く存在する。南アフリカでは、廃棄物を液体状で保管するため、多くの場合、鉱山会社によって建設される危険な尾鉱ダムが52も存在します。その数は世界一で、これまで何度も環境災害と死をもたらしてきました。
- 世界の富豪たちには、アフリカ大陸の全女性の富を合算しても勝てない。イギリスのチャリティ団体Oxfamが発表した新しいレポートによると、世界で最も裕福な層の1パーセントが、多くの富を支配し続けています。例えば、世界で最も裕福な22人の男性は、アフリカの約7億人の女性すべてを合わせたよりも多くの富を所有していることになります。
【今週の特集】
今週のQuartz(英語版)の特集は「Gaming’s next level(次のレベルにいくゲーム産業)」です。今や、世界の人口の3分の1が手にするゲーム、もはや業界の枠を超え、娯楽から行政、ヘルスケアに影響を与える最先端を、Quartzがレポートしていきます。
(翻訳・編集:福津くるみ、写真:Quartz, ロイター)
Quartz JapanのTwitterで最新ニュースもどうぞ。