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Africa Rising
躍動するアフリカ
Quartz 読者の皆さん、こんにちは。毎週水曜の夕方は、次なるイノベーションの舞台として世界が注目する「アフリカ」の今と、主要ニュースをお届けしています。今日は、人口も増加し続けるエチオピアをピックアップ。急激な経済成長を遂げているエチオピアを待っているのは、不安定な状況なのかもしれません。 英語版(参考)はこちら。
エチオピアの急激な経済成長は21世紀の成功物語のひとつであるが、今、そのブームの持続性が問われている。
最近の報告書によると、経済成長を押し進めてきたのは、生産性の改善ではなく政府の支出だとの見方があるのだ。政府の出資が実を結ばなければ、そして税収が増えなければ、エチオピアの奇跡的な経済は危機的な状況に陥りかねない。
2000年、エチオピアはアフリカで人口数2位の国でありながら、世界で3番目に貧しい国。年間の国民1人あたりのGDPは約620ドル(68,000円)。人口の半数以上が世界の貧困線以下の水準で暮らし、世界で最も貧困率の高い国でもあった。世界銀行の見積もりによると、2000年から2018年まで、1人あたりのGDPで換算して、人口1千万人以上の国の中で3番目に成長率の高い国であった。
Economic growth in the future
成長は継続するか
■今世紀最も成長が速い経済圏
2000年〜2018年の購買力平価で見る1人あたりのGDP
この成長のなかで注目すべき点は、富裕層がより多くの富を得ていたのではなく、相対的に見て経済的繁栄が広がっていたことだ。
エチオピアの貧困率は2015年には31%まで減少。また、2000年に52歳だった平均寿命は、2017年には66歳になり、同じ期間に乳児死亡率は半分まで減った。
このような驚異的な成長はそれだけでも祝福に値するのだが、国の大きさと膨らむ人口、そして貧困の根深さから、エチオピアの成長は特に大きな意味をもつ。国連は、2050年にはエチオピアの人口が現在の1億1,500万人から2億500万人まで伸びると予測しており、人口で見ても最も成長している国となるだろう。
しかし、今問うべきは、エチオピアに見る経済成長は継続が見込めるものなのか、という点だ。最近、世界銀行は、2020年の同国の成長予測を8.2%から6.3%へ、2021年の成長率予測を8.2%から6.4%へと下方修正した。世界銀行はこの減速は「インフレに歯止めをかけるための財政、そして金融政策の引き締め」によって発生するとの見通しを示している。一方でエチオピア政府は、2020年はGDPが10%を超えるとの予測を発表している。
Getting deeper in debt
借金の増加
2019年7月、国際通貨基金(IMF)アフリカのディレクターであるアベベ・アエムロ・セラシー(Abebe Aemro Selassie)がエチオピア経済協会での基本方針演説で説明した内容によると、2000年代のエチオピアの成長の約半分は労働者1人当たりの生産性の改善によるもので、残りの成長は就業者数と設備投資の増加によるものだった。
就業者数と設備投資の増加はいいが、経済成長の持続性にとっては生産性アップこそがよい指針となる。それは、企業も人も効率的に商品やサービスをつくり出していることを意味しているからだ。
2010年代のエチオピアのGDP成長は、2000年代よりも速かった。しかし、生産率は停滞気味で、2000年代が年間4%であったのに対し、2010年代は2%以下にとどまった。エチオピア出身であるSelassieは「生産性の拡大の多くは設備投資に取って代わられ、その多くは政府または国有企業によるものだった」と指摘する。
これにより、GDPの約40%であったエチオピアの借金は60%まで膨れ上がっている。この借金の大半は他国からの借り入れに頼る傾向が加速したために発生し、公衆や民間企業が安く借り入れられるようにと政府が進めた政策が高くつき、インフレにつながった。
■エチオピアのGDPに対して借金が占める割合
ただ、長期的に見ると、現在、エチオピアに向けられている投資は良質な買い物となりうる。政府による道路整備や学校、病院などに対する出資はこれからの未来に必要なものだ。世界銀行による「政府の有効性」の評価では、エチオピアの数値は異常に高く、政府によって資金が効率的に使われていることを示している。
To continue growing up
成長維持のために
経済学者たちは、もしも金融危機が起こったときに、これらの長期的な成長計画が実を結べなくなる可能性を危惧している。
2019年9月には、エチオピア政府の膨らむ借金と落ち込む収益という2つの要因から、Moody’s(ムーディーズ)が政府の借金返済能力の見解を安定からマイナスへと格下げした。
Selassieも金融危機の可能性を懸念しており、それを避けるための2つの方法を示している。
- 2000年代から減り続けている税収を増やしていく必要がある。エチオピアは地元企業に対して多くの税金免除や免税期間を設けており、近所の諸国と比べて税収が低い。
- 国の輸出事業を拡大させて外国からの民間投資を得ること。こうすることで経済を分散させ、借金返済の一助とする。
現在の経済を継続させながら収益を上げ続ける方法は、民営化だ。任期1年目を終えようとしているアビィ・アハメド(Abiy Ahmed)首相は民営化を優先課題と位置付けている。
ブルームバーグによると、政府は通信システムや鉄道会社を売却することで750万ドル(8.2億円)の資金調達を目指しているとのことだ。一方で、公開会社として順調に国の利益に叶う運営を続けているエチオピア航空は、民営化の予定はない。
エチオピアが金融危機を避けて成長し続けられるかどうかは、非常に重要なポイントとなる。成功すれば何百万というエチオピア人が貧困から救われ、「ネクスト・チャイナ」と呼ばれるほどの地位を築くことができるが、失敗すれば悲惨な結果を免れないだろう。
This week’s top stories
今週の注目ニュース4選
- ビル・ゲイツが予言するウィルス拡大。ビル・ゲイツは、新型コロナウイルスが中国よりもアフリカに打撃を与える可能性があり、世界中で1,000万人が死亡するかもしれないと警告しました。The Telegraphによると、彼はアフリカ大陸でのコロナウイルス拡大による「非常に、非常に劇的な」潜在的な影響について懸念しています。ウイルスはエボラよりも猛威をふるうものとして信じています。
- 南アフリカのテック業界は好調になるか。Disrupt Africaが先月発表したレポートによると、南アフリカは2019年に出資額でエジプトの次に2位になったが、資金調達額では4位に落ち、成長の勢いが見られませんでした。しかし、今年に入って南アフリカの営業管理アプリSkynamoが、シリーズAで3,000万ドル(約330億円)を調達。それに続き他社でも高額な資金調達を受けることができるかもしれないと、楽観的な考えもあります。
- …一方で、Moody’sは、南アフリカのGDP成長率予測を引き下げ。Moody’sは、南アフリカの2020年のGDP成長率の予測を0.7%に引き下げました。2019年9月には1.5%の成長が見込みまれていましたが、12月には洪水による大規模停電が起こり、国営電力会社が計画停電も行ったため、製造業および鉱業活動に悪影響を及ぼしたためであると述べています。
- アフリカの主要経済国の多くはすでに風力発電を利用。アフリカは世界で最も通電していない大陸であり、電力が供給する場所を増やすのにも時間がかかっています。太陽光発電は、代替のエネルギーとして展開されてきましたが、 世界風力会議(GWEC)よると、エジプト、モロッコ、エチオピアを中心に、アフリカと中東の国々が約900メガワットの風力発電を導入。風力発電の設置率は、今後5年間で加速すると予測されています。
【今週の特集】
今週のQuartz(英語版)の特集は、「The purpose of B Corps(Bコーポレーションの目的)」です。日本ではあまり知られていませんが、環境やガバナンスなどの「良い会社」の基準として、世界で何千社もが認証を得ている「B Corp」。その真相をQuartzがレポートしていきます。
(翻訳・編集:福津くるみ)
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