Millennials:熱狂を生む韓国のソフトパワー

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MILLENNIALS NOW

ミレニアルズの今

Quartz読者のみなさん、こんにちは。日本では若者を中心に第3次韓流ブームが続いていますが、世界における韓国のソフトパワーはどのようになっているのでしょうか? 今日の「Millennials Now」では、先日のオスカー受賞も踏まえ、韓国カルチャーとソフトパワーについてお話したいと思います

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Image: REUTERS/Danny Moloshok

先日、アメリカで開催された第92回アカデミー賞を受賞した、ポン・ジュノ監督の作品『パラサイト 半地下の家族』。もともと世界中で韓国ドラマは人気がありましたが、韓国の映画界の実力を知らしめるきっかけになったはずです。

日本では、Z世代やミレニアル世代を中心に第3次韓流ブームが起こっていますが、韓国のソフトパワーを感じる瞬間が多くあります。特に、10代、20代の女性は韓国人を真似るのではなく、「韓国人になりたい」というほど意識が強く、メイクやファッションを韓国風にする姿や韓国語を勉強する姿は興味深いです。さらに、ソーシャルメディアの彼女たちのプロフィールには韓国語での自己紹介も書かれていたり、韓国に対する好意的なアピールが入れ込まれています。

では、アメリカではどのような韓国ブーム(英語では:hallyu)が繰り広げられているのでしょうか?

In the world

K-POPの圧巻

アメリカには各都市にコリアンタウンが存在し、アメリカでは韓国系アメリカ人がロサンゼルスに約33万人、ニューヨークに約21万人、ワシントンDCに約9万人が住んでいます。韓国料理はアメリカ人の食事のひとつの選択肢にもなっており、生活においても韓国カルチャーはすでに浸透していました。

そんななかで音楽は、かつてないほどにメインストリームに近づいています

そもそもK-POPの火付け役になったのは、2012年のPsyが歌う「江南スタイル」で、35億回の再生数を誇る歴史的な1曲にもなりました。それから7年が経ち、K-POP人気の広がりがアメリカのみならず世界規模に成長したことは下記の図からも見て取れます。

2019年の世界のK-POP人気を示すマップ

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K-POPブームに拍車をかけたのが、ボーイズグルーブのBTS(防弾少年団)です。

2018年、BTSは、「2018 ビルボード・ミュージック・アワード(BBMAs)」でトップ・ソーシャル・アーティスト賞を受賞。2017年に続き2年連続での受賞になりました。『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』が、アメリカの週間アルバムチャート「ビルボード200」で初登場1位になるなど、韓国人アーティスト史上初の快挙を達成。アルバムチャートで1位になるのはアジア圏のアーティストでも史上初とされています(なお、BTSは2019年にもBBMAsにてトップ・ソーシャル・アーティスト賞を受賞。同時に、トップデュオ/グループ賞も受賞しています)。

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Image: REUTERS/Jeenah Moon

さらに、2018年にBTSは、国連児童基金(UNICEF)による世界的パートナーシップ「Generation Unlimited」の立ち上げ行事にもグローバルインフルエンサーとして出席し、スピーチも行いました。2018年はアメリカにおけるK-POP(BTSがと言っても過言ではないですが)がより広く認知された年だったのです。

最近では、2019年末のニューイヤーズ・イブにNYのタイムズスクエアでパフォーマンスをしたことも記憶に新しいです。また、BTSは2019年のアメリカで行われた3都市ツアーで、計4,400万ドル(約49億円)を売り上げ、同ツアー全体のチケット売上総数は、Taylor Swift、U2、Beyoncé、Jay-Z、Eminem、Rihannaなどのトップポップアーティストが設定した過去のチケット販売記録を上回りました。

2019年には、ガールズグループのBLACKPINKが、アメリカの人気深夜トーク番組「ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア」に初主演。これも韓国人初となりました。また、同年には、アメリカ・カリフォルニアで開催されるフェス「コーチェラ」にもK-POPのガールズ・グループとして史上初めて参加し、その実力を見せつけています。

Cosmetic industry

コスメの存在感

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Image: REUTERS/Lee Jae-Won

韓国カルチャーで勢いがあるのは、音楽業界だけではありません。アメリカではコスメティックストア「SEPHORA」に行くと、韓国発の化粧品(K-BEAUTY)の多さに驚きます。

日本のブランドでは「Shiseido」や「SK-Ⅱ」が決まって置かれていますが、K-BEAUTYは実に多様。世界中で愛用されているフェイスマスクをはじめ、「Innisfree」「Primera」「LANEIGE」「DR.JART+」「Belief」など、その取扱いブランドの数の多さにまず、圧倒されます。

韓国の化粧品業界は2018年に26.5%の成長を記録し、過去10年間で美容製品の輸出が6倍に増加。業界での世界的売上は、2024年までに2,000億ドル(約22.2兆円)に達すると予想され、これは全世界の美容業界のうち4分の1を占めることになります。

アメリカの国勢調査局によると、2012年の韓国からアメリカへの美容輸出額は合計5,900万ドル(約65億ドル)。2018年は、5億1,100万ドル(約570億円)を超えています。

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Image: Dr.Jart+

K-BEAUTYがアメリカで受け入れられる理由は、

  • 手頃な価格
  • スタイリッシュでキャッチーなパッケージ
  • 独特な商品(酸素バブルマスクなど)
  • ユニークな成分(カタツムリから抽出するムチンやロバミルクなど)を使用

つまり、成分が引き出すユニークな製品を、化粧品のベースとなるクレンジング、水分補給、およびスキンケアのラインナップで展開しているからです。

もともと2000年代後半に、ブロガーがネット上でK-BEAUTYを紹介し始め、e-コマースを通じて商品を展開。そこからアメリカへも口コミで商品のよさが広がっていきました。

韓国製の美容製品の輸出額

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Image: Statista

たとえば、アメリカでは、2018年時点で32.4%の人がK-BEAUTYの認知度が高いと回答。また、年齢別でK-BEAUTYに興味があるかを見ると、25歳〜34歳までが18%、18〜24歳までが13%でトレンドをフォローしていると回答していて、日本と同様に若い世代に人気があるといえます。

アメリカにおける世代別のK-BEAUTYの認知度

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Economic effect

韓国における経済効果

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Image: Photo by Patrick on Unsplash

韓国におけるK-POPおよび美容業界は、これまでのマイルストーンに到達しました。BTSは、毎年、国民経済で約36億ドル(約4,000億円)の経済効果があり、韓国の美容市場の価値は、推定131億ドル(1.5兆円)とされています。

一方、今年、オスカーを取って注目される韓国の映画産業の輸出額ははるかに少なく、Statistaの調査によると、2018年にはわずか4,160万ドル(約46億円)。この数字は2016年以降ほぼ横ばいです。ただ、今回のオスカー受賞があったことで、今後、その輸出額は増える可能性があります。

From Korea to the world

拡大するソフトパワー

韓国は、世界の主要な大衆文化の輸出国になるという目標を掲げている、数少ない国の1つです。

Euny Hong著の『Birth of Korean Cool』では、「韓国は、世界のポップカルチャーのナンバーワン輸出国になるために、ポップカルチャーに重きを置き、多額のお金を投資する。供給する場所を自らが作り出し、そして需要が追いついていくという考え方をしている」と述べられてます。そのため、世界レベルの音楽やパフォーマンスが見られ、彼らが本物の「プロ」として教育されるのです。

つまり、「ソフトパワー」で韓国のグローバルな魅力を世界中に拡大しようとする戦略が成功しているという結果を、この1、2年で証明しているのです。

韓国財団は最近、2019年に韓国カルチャーのファン数が世界中で1億人近くに増え、わずか1年で約11%増加したことを示す統計を発表。そのうちアメリカでは、1,200万人のファン数の増加になっています。

「一発屋」ではなく、じわりじわりとトップレベルの文化を広めていく韓国カルチャーは今、波に乗っているのです。

This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. 新型コロナウィルスでアメリカがベイプ不足へ? ベイプのハードウエアを製造している多くの中国の工場は、閉鎖されたままであり、4月下旬まで商品がアメリカに出荷されないという状況になっています。世界中で発売されているベイプやe-シガレットのハードウエアの約90%は、深センで製造されていて、1,000近くもの工場が存在しています。
  2. ラグジュアリーとチープの関係性。そこには、ある社会的な様相が浮かび上がります。ラグジュアリーブランドが市場ではメインストリームになり、エリートたちは特別感を出し、他の人たちと区別するために、「高級なもの」と「チープなもの」をマッチさせるスタイルを好む傾向があります。ブランドだけでなく、食事にも同じことが言えるでしょう。
  3. 若者がマイホームを購入する場所トップ5。不動産のウェブサイトSundaeによると、ミネソタ州ミネアポリスは、1981年から1996年の間に生まれたアメリカ人にとって最も望ましい場所の1位となりました。寒い地域ではありますが、経済力も強く、住宅の価格も手ごろ、そして低い失業率が人気の理由です。2位はバッファロー、3位はサンノゼ、4位はデンバーと続きます。
  4. ミレニアルズの嗜好のおかげでワインが安値に。ワインが、この5年で一番安い値段になっています。CNNによると、この傾向の一部はカリフォルニアのブドウの収穫が豊富だったことによるもの、一部はミレニアル世代がスピリッツやホワイトクローなどのすぐに飲めるカクテルの方を好むためです。

【今週の特集】

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今週のQuartz(英語版)の特集は、「The purpose of B Corps(Bコーポレーションの目的)」です。日本ではあまり知られていませんが、環境やガバナンスなどの「よい会社」の基準として、世界で何千社もが認証を得ている「B Corp」。その真相をQuartzがレポートしていきます。

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