Millennials:世界一稼ぐキッズYouTuber

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MILLENNIALS NOW

ミレニアルズの今

Quartz読者のみなさん、こんにちは。小さいころからスマホやiPadを手にする子どもたちは、テクノロジーと常に隣り合わせにいます。今日の「Millennials Now」では、YouTubeをはじめ、子ども向けのテックビジネスがどのように成長しているのかレポートします

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Image: PHOTO BY KELLY SIKKEMA ON UNSPLASH

アメリカの子どもが憧れたかつての夢「宇宙飛行士」はもはや、憧れではなくなりました。今はむしろ、子どもたちの夢がVloggerやYouTuberになりたいことであるのは、調査結果でも明らかです。

アメリカ、イギリス、中国の3,000人の子どもたちに大人になったら何になりたいかを尋ね、Vlogger / YouTuber、教師、プロのアスリート、ミュージシャン、宇宙飛行士の5つの選択肢から選んでもらいました。その際、中国ではまだ宇宙飛行士が1位なのに対し、アメリカとイギリスでは最下位の結果です。

大きくなったら何になりたいか? を尋ねた結果

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中国での結果がなぜ他国と違うかははっきりとしていませんが、おそらく中国では、教育の過程において科学や宇宙に重きを置いているからとも言われています。

また、検閲盛んな中国ではYouTubeを普段手軽に観ることができないため、YouTubeとともに生活しているアメリカの子どもたちに比べ、YouTuberに対しての憧れがより強くあらわれるのかもしれません。

Kids YouTuber in US

キッズYouTuber

そんなアメリカには、世界で最も成功している「キッズYouTuber」がいます。

8歳の少年Ryan Kaji(ライアン・カジ)くんは、自身のチャンネル「Ryan’s World」にて、2年連続で最も収益を上げたYouTuberに選ばれました。2018年6月から2019年6月までの推定収益に基づいたForbesの年間トップ10ランキングによると、2018年には2,200万ドル、2019年には2,600万ドル(約28億5,000万円)の収益を獲得しています。

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Image: RYAN'S WORLD

現在、チャンネル登録者数は2,410万人。テキサス州に住む両親(お父さんは日本人!)と一緒に動画を制作し、おもちゃのレビューをはじめ、アニメーション、子どもの科学、子ども向けの教育に関するものなど、さまざまなチャンネルが用意され、大人が観ても興味深いものが並んでいます。

「Ryan’s World」は、ライアンくんの両親が2017年に設立した子ども向けコンテンツの制作会社Sunlight Entertainmentでつくられています。いまや、スペイン語や日本語へも翻訳され、YouTube配信されているので、まさにワールドワイドなキッズ向けチャンネルとして大成功した例といえるでしょう。

さらに、ライアンくん自身もアイコニックな存在になっていて、2019年のキッズ・チョイス・アワードでは「Favorite Social Star」にもノミネートされました。

2019 Kids Choice Awards – Arrivals – Los Angeles, California, U.S., March 23, 2019 – YouTube star Ryan ToysReview. REUTERS/Danny Moloshok – HP1EF3N1PMWFE
2019 Kids Choice Awards – Arrivals – Los Angeles, California, U.S., March 23, 2019 – YouTube star Ryan ToysReview. REUTERS/Danny Moloshok – HP1EF3N1PMWFE
Image: REUTERS

ほかにも、「EvanTubeHD」のEvan(エヴァン)くんは、おもちゃのレビューをする12歳。すでに2014年から話題になっていたエヴェンくんですが、大きくなった今でも毎週新しい動画を公開。2014年の時点で年間130万ドル(約1.4億円)を同チャンネルで稼いでいると報告されています。

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Image: EvanTubeHD

現在のチャンネル登録者数は652万人。おもちゃのレビューだけでなく、チャレンジ動画や科学実験もあり、妹のジリアンと父親のジャレッドが頻繁に登場しています。

The relationship with parents

親子の関係性

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Image: Photo by Alexander Dummer on Unsplash

こうしたキッズYouTuberがアップする動画には、両親や兄弟との共演動画が多く見られます。特に子どもの親たちはミレニアル世代で、デジタルリテラシーも非常に高いと言えます。

ミレニアル世代で子どもをもつ親は、自分たちの両親との関係性に比べてより親密であることが分かっています。「10人に8人が子どもとオープンな対話を望んでいる」というミレニアル世代の親にとって、子どもは“親友の1人”。親たちの実に74%が、家庭での決めごとに子どもたちを関与させています。

ミレニアル世代には、コストがかかることや責任をもちたくないことを理由に「子どもをもたない」人が増えているという調査結果もありますし、「ソーシャルメディア離れ」も謳われています。特に前者については先進国での出生率の低さもその現状を証明していますが、そのなかでも子どもをもつという「特別感」を得た親は、子どもとの繋がりやよりよい子育てに対する使命感をより強く感じるのかもしれません。

Protection

プライバシーの保護

The YouTube app logo is seen on a smartphone in this picture illustration taken September 15, 2017. REUTERS/Dado Ruvic/Illustration – RC1F9FACE150
The YouTube app logo is seen on a smartphone in this picture illustration taken September 15, 2017. REUTERS/Dado Ruvic/Illustration – RC1F9FACE150
Image: REUTERS

米シンクタンクPew Research Centerが調査したところ、子どもによる動画の視聴回数は、平均すると、チャンネル登録者の多いチャンネルの他の動画の3倍近くになっています。

人気の番組はビデオゲーム実況で、例えば2019年のある最初の1週間で調査を行ったところ、約5分の1(18%)がビデオゲームに関連する投稿でした。

子ども向けの人気番組カテゴリーと投稿動画

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Image: PEW RESEARCH CENTER

また、11歳以下の子どもを持つ親の81%が、子どもにYouTubeを視聴させていることが別の調査でも明らかになりました。さらに、親の34%は、子どもが定期的にYouTubeを閲覧していると話しています。多くのユーザーがYouTubeのコンテンツから世界を知り、新しいことを学んでいると言いますが、一方で多くのユーザーがプラットフォーム上のコンテンツでネガティブな体験に遭遇しています。

ユーザーの約3分の2は、サイトの使用中に明らかに虚偽または虚偽の動画に遭遇することが少なくとも60%あったことを報告しています。そのため、キッズ用には厳選されたコンテンツ、ペアレンタルコントロール機能、12歳以下の子どもが不適切に視聴していると見なされる動画のフィルタリングを含んだ「YouTube Kids」が存在しているのです。

また、今年初めに、YouTubeは「子ども向けコンテンツ」への広告ポリシーを変更。児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)に基づくYouTubeのコンプライアンスに関して、米国連邦取引委員会(FTC)が提起した懸念に対処するものとして提示されました。

しかし、多くのYouTuberたちが、予想される売り上げ減に悲鳴を上げている現状もあります。動画に「子ども向け」というラベルを付けると、ターゲットを絞った広告がビデオに表示されなくなります。つまり、YouTubeの動画製作者は、収益性の高い一般的なタイプのデジタル広告を失うことになります。

Startup for Kids’ Tech

キッズテックの前進

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Image: SuperAwesome

そういったプライバシー対策に重点を置く、子ども向けのテクノロジー企業(キッズテック)があります。

ロンドンを拠点にする「SuperAwesome(スーパーオーサム)」は、「子ども優しいウェブ」を実現するテクノロジーを開発。子どもたちが大人同様に自由にウェブを活用できるようにすることを目的としている会社です。Mattel、Cartoon Network、Lego、任天堂、バンダイなど、300社以上の企業と連携し、各社が子どもたちに「安全な」コンテンツを提供できるようにするプラットフォームを提供しています。

同社は、1月27日、MicrosoftのベンチャーファンドM12が主導する資金調達ラウンドで1,700万ドル(約18.6億円)を調達したと発表。CEOのDylan Collins(ディラン・コリンズ)によると、同社はこれまでに総額3,700万ドル(約40億円)の資金を調達しており、2019年には5,500万ドル(約60億円)の収益を上げ、さらに黒字転換を果たしています。

今後も、安全とプライバシーを考慮した、キッズ向けのプラットフォームは増え続けていくと予想されます。

2019年のKids Digital Media Reportによると、2018年から2021年にかけて、世界の子ども向けデジタル広告市場は、年間20%以上成長すると予測。2021年には、17億ドル(約1,880億円)の価値があるとされ、デジタル広告の支出は、子ども向け広告費全体の28%に達すると予測されています。

毎日、17万人もの子どもたちが新たにインターネットへアクセスする時代。子どもとテクノロジーは、もはや切り離せない関係になっているのです。そして、その親にとっても「子どもの教育」に対する強い関心と子育ての使命感がキッズテックを成長させるのかもしれません。

This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. マイケル・ジョーダンが涙のスピーチ。1月26日にヘリコプター墜落事故で亡くなったコービー・ブライアントの追悼セレモニーが2月24日(現地時間)、ロサンゼルスのステイプルズ・センターで行われました。マイケル・ジョーダンが「弟」の死に涙のスピーチをしたほか、ビヨンセが「XO」を披露するなど、多くの著名人がコービーの死を偲びました。
  2. 映画業界にも影響。新型コロナウィルスの影響で、イタリアのヴェニスで予定されていた、トム・クルーズ主演の映画『ミッション:インポッシブル7』の撮影が中止になりました。プロダクションチームは、他の場所で撮影するか、状況が落ち着くまで様子を見ることにしています。
  3. Disney+が苦戦? CEO交代を発表したばかりのDisneyが展開する動画ストリーミングサービスDisney+は、2019年11月の開始からわずか3カ月で、登録者数が2,860万人を突破しています。しかし、専門家によると、大人向けのコンテンツが不足しているため、行き詰まっているという見方もあります。
  4. ラグジュアリー業界への打撃。Burberry、Ralph Lauren、Coachをはじめ、Michael KorsやVersace、Jimmy Chooを所有するCapri Holdingsなどの企業は、新型コロナウイルスの蔓延により、数千または数億ドルの損失をすでに警告しています。現在、高級企業の幹部を対象とした調査では、業界の損失の合計が400億ユーロ(約4.8兆円)に達する可能性があると予測しています。

【今週の特集】

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今週のQuartz(英語版)の特集は「China’s first global app(中国初のグローバルアプリ)」です。Tik-Tokを武器に、グローバルなプラットフォームを作り上げたByteDance。アリババ、テンセントの巨人に頼らず、世界を駆け巡る彼らの野望をQuartzがレポートします。

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