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Africa Rising
躍動するアフリカ
Quartz読者の皆さん、こんにちは。毎週水曜の夕方は、次なるイノベーションの舞台として世界が注目する「アフリカ」の今と、今週の注目すべき4本のニュースをお届けしています。 今回は、新型コロナウィルスが広がるアフリカ・ナイジェリアから、エボラ出血熱から学ぶ重要なこと。英語版(参考)はこちら。
ナイジェリア政府は2月28日、サブサハラアフリカ(北アフリカを除いた国、スーダンは含む)で初となる新型コロナウイルスの感染者を発表(3月17日現在、2名の感染者、死亡者なし)。最初の感染者は、ミラノから到着したイタリア人出張者でした。
また、アフリカ大陸の各国では、ケニア、エチオピア、ガーナでも新型コロナウイルスの感染者が確認されたほか、南アフリカでは3月17日現在で62人の感染者(死亡者なし)が報告されています。
新型コロナウイルスの拡大が心配されているアフリカには、もともとエボラ出血熱、マラリアなどといった感染症が存在し、人々は常に病気と戦ってきました。
さらに、ナイジェリアでは現在、新型コロナウイルスよりも致命的なウイルス性疾患であるラッサ熱の対応にも追われています。ラッサ熱は、エボラ出血熱やマールブルクのような重度のウイルス性出血熱(VHF)で、ナイジェリア疾病管理センター(NCDC)は2020年に入って5週間後には「活発な発生」であると宣言。感染は国内の半分の地域にまで広がっています。
今回は、ロンドン大学の名誉上級講師(感染症)で医師のChikwe Ihekweazu(チクウェ・イヘクウェアズ)にインタビューを敢行。アフリカでの新型コロナウイルス蔓延を予測し、ナイジェリアが先立ってどのように準備してきたかを聞きました。
——ウイルスを拡散させないためにはどのような対処をする必要があるのでしょうか?
新型コロナウイルスはその名の通り「新しい」ので、ほぼ毎日のように新たな発見があります。
ナイジェリアの疾病管理センターは、連邦保健省検疫所の代表者を含めた関係者を集め、「コロナウイルス準備組織」を立ち上げました。毎日会合し、世界情勢の報告や感染拡大のリスク評価を行って、新たな調査結果や見識をもとに国全体で準備を整えるよう動いています。
入国時のスクリーニング、特に中国からの渡航者については強化されています。対象者には体温検査を行い、新型コロナウイルスの症状や渡航歴について細かく質問を行っています。
また、国民には健康に関する勧告を行なっており、新型コロナウイルスと疑われるケースについてはどのように対処し、自身をどのように守るべきかを伝えています。
過去3年間、我々は緊急時の組織体制、監視、公的保健機関、そしてリスクコミュニケーションの強化を重点的に行なってきました。今後も強化を続けることで感染拡大に備えていきます。
——エボラ出血熱対策のために行われている体制で、今回の新型コロナウイルスに役立つものはありますか?
エボラ感染症拡大から我々が学んだ大きなレッスンのひとつは、感染拡大時に使用するシステムは「平時」に構築されていなければならない、ということです。
ここ3年間で我々は、エボラ出血熱など伝染性のある疾患や感染性の高い病原体の分子診断を行えるよう、国家標準検査室のキャパシティ強化を行ってきました。
新型ウイルスの十分な検査を行えるかどうかを左右するのは、研究所の装置、病原体を認識するプライマー、そして技術的な専門知識です。現時点では、この新たなウイルスに使用できるプライマーの入手について、WHOのアドバイスをもとに動いています。コロナウイルスのような病原体の診断は、この国家標準検査室で行われます。
また我々は、ナイジェリア国内22州に対して、緊急運営センターを設けるための支援を行っています。ここが州内の体制プラットフォームとなり、国の体制とつながります。感染症拡大の際は各州内で体制が十分にコーディネートされ、州同士でも連携することが大切です。
——そうした知見のほかに必要なことはありますか?
エボラ出血熱の感染拡大では、リスクコミュニケーションの強化についても学びました。
我々は、国民がきちんと正しい情報を得ていることがどれほど重要かを認識しています。ナイジェリア疾病管理センターは、国民に対し健康に関する勧告をすでに行っており、国の準備体制と新型コロナウイルスから身を守る方法を通知しています。
2019年12月には、ナイジェリア全州において医療緊急チームのトレーニングを終えました。全36州には、感染拡大が起こった場合すぐに出動できるチームを準備しています。
つまり、感染症拡大に対する予防、早期発見と迅速な対応ができる強固なシステム作りを続けているわけです。
エボラ出血熱の拡大は、アフリカ大陸の国々の政府に、国立保健医療機関設立への出資を促しました。ナイジェリアもそのひとつで、感染拡大へ対応する際は、明確なコーディネーション体制が役に立つでしょう。
規模の大きい感染拡大には高度な専門知識と資金、そしてそのほかのあらゆる体制が不可欠です。こうした機関が存在していれば、別のエボラ出血熱熱が発生した場合にもすでに体制が整っているので、必要な対応策の特定を待つ必要がなくなったと言えるでしょう。
我々はエボラウイルスから、医療システム強化の必要性をはじめとする多くのことを学びました。おかげで多くの国の保険医療体制は進みましたが、まだまだ改善の余地はあります。
This week’s top stories
今週の注目ニュース4選
- 南アフリカが国家非常事態宣言。3月15日、南アフリカは同宣言後、イタリア、イラン、韓国、スペイン、ドイツ、アメリカ、イギリス、そして中国からの入国を禁じる措置を18日から取ることに決定しました。南アフリカの感染者数は現在、アフリカ内においてエジプトに次いで2番目に多い数になっています。
- M-PESAの手数料免除。ケニア最大の通信会社であるサファリコムは、COVID-19の発生により、通貨の物理的な取引を減らすため、東アフリカの主要なモバイルマネーであるM-PESAに対し、手数料免除を導入。1,000ケニアシリング(約10ドル)未満のすべての個人間における取引において、3月17日から90日間、手数料が無料になります。
- アフリカで懸念される債務、2020年2月、世界銀行の総裁デイビッド・マルパスは、アフリカの一部の経済で積み重なっている債務量に懸念を抱いています。特に、彼は中国との間で行われているいくつかのローン取引において透明性がないことを危惧しています。
- 南アフリカからドミノ・ピザ撤退。南アフリカを拠点とするテイストホールディングスは、2019年後半に食品事業(スターバックス、ドミノ・ピザ、ザ・フィッシュ&チップス)から撤退し、高級品に焦点を移すことを発表。その後、買い手を見つけることができなかったため、自らドミノ・ピザを手放すことになりました。
【今週の特集】
今週のQuartz(英語版)の特集は「The business of fertality(不妊のビジネス)」です。40年前と比べ、出産年齢の高齢化し、一方で、親の経済状況はかつてより上がる中で、不妊ビジネスがこれまでになく爆発しています。吸う千億円規模のビジネスとなった、不妊ビジネスの最前線をQuartzがレポートします。
(翻訳・編集:福津くるみ)
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