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MILLENNIALS NOW
ミレニアルズの今
Quartz読者のみなさん、こんにちは。日に日に状況が悪化している、新型コロナウイルスが影響する世界情勢。そんななか、アメリカではどのようなライフスタイルの変化があったのでしょうか? 今日の「Millennials Now」では、その最新状況をレポートします。
新型コロナウイルスは、あっという間に世界中で蔓延してしまいました。
今月に入り、欧州やアメリカでは状況が悪化し、アメリカのトランプ大統領は3月13日(現地時間)、最大500億ドル(約5兆円)の財政出動を可能にする国家非常事態を宣言。
人口800万以上のNYでは、飲食店(持ち帰りや配達は可能)やバー、クラブ、ブロードウェイ、映画館などが閉鎖され、文字通り「ロックダウン」。また、NYでは現在、外出を原則として禁止する屋内避難命令も検討されており、今後の動きに注目が集まりそうです。
Social Distancing
社会的距離を保つ
そんななか、アメリカで今謳われているのが「Social Distancing(社会的距離)」。Social Distancingは、人から人へと受け継がれている病気の広がりを遅らせるために、公衆衛生当局が推奨する方法です。簡単に言えば、新型コロナウイルスまたは病原体が人から人へと広がらないように、人々がお互いから十分離れることを意味します。
米疾病予防管理センター(CDC)は、Social Distancingを「大衆の集まりから離れ、ほかの人から6フィートまたは2メートルの距離を保つもの」として提唱。たとえば、ニューヨーク市では、劇場が一時的に閉鎖、世界中の多くのコンベンションがキャンセル、そして全米では学校が閉鎖されています。国民は、ラッシュアワーに電車に乗るのをやめました。今は家で仕事をするか、妻と一緒に車で行くか、ラッシュアワーを避けて電車に乗り、人との間に6フィートの距離保つのです。
また、Social Distancingは他人に触れないことも意味し、それには握手も含まれます。身体的接触は、ウイルスが伝わる可能性が最も高く、さらに感染を拡大する最も単純な方法です。必ずしも完全に防ぐことはできませんが、簡単な規則に従うことで、個々人が新型コロナウイルスの拡散を遅らせる重要な役割を果たすことができます。
アメリカ国民は大変な最中にいますが、Instagramを見ていると、Social Distancingを実践している人たちの投稿が多く見られます。どちらかというと、「Social Dsitancing=人との触れ合いを避ける」ため、ひとりでなにかをしている投稿やペットとの撮影などが見られ、ちょっとクスッとしてしまうユーモアのあるものもあります(#socialdistancing で検索してみてください)。
新型コロナウイルスの蔓延を防ぐために必要なのは個々が気をつけて行動することであり、Social Distancingもそのひとつです。しかし、今回の新型コロナウイルスに関しては、世代によっての捉え方が全く違うようです。
The difference of value
価値観の違い
今回の新型コロナウイルスの影響で、ほとんどの人が旅行計画をキャンセル/延期しているのにもかかわらず、一部のミレニアル世代にとってはお構いなしのよう。若い世代は、コロナショックを利用して安価なフライトで旅行しているとも報じられています(今日の段階でもすでに多くの国が鎖国状態や隔離の対象になったため、今後はそれも困難になるでしょう)。
また、多くの若者が世界保健機関(WHO)のパンデミック宣言後も、ライブやクラブ、バー、集会などに参加していることから、あまりに危機感がないとさまざまな場所で指摘されていました。こういったミレニアル世代の行動に対し、歌手のヒラリー・ダフは皮肉たっぷりに批判。テイラー・スウィフトやアリアナ・グランデも、若者に対して自粛を促すメッセージを投稿しました。
その行動に釘を刺すかのように、ホワイトハウスの新型コロナウイルス対策調整官であるDeborah Birx(デボラ・バークス)は、3月16日(現地時間)の記者会見で、ミレニアル世代は「ウイルスを止めるコアグループである」と述べました。つまり、こういった若者の軽率な行動がなくなることで、感染を食い止め、高齢者の感染をも防ぐというのです。
視点を変えると、ミレニアル世代から見たベビーブーム世代(1946年〜1964年生まれ)やGen-X世代(1965年〜1980年生まれ)は新型コロナウイルスに対して「敏感になりすぎ」ともいえるようです。
とくにGen-X世代は、「911」や2008年に起こった「リーマンショック」など、歴史的に極めて重要な時期に現場で働き、激動の時代を乗り越えた経験が豊富にあります。
また、COVID-19のパンデミックのなかで、Gen-X世代は家族の大黒柱として子どもや高齢になった親の世話をすることが多いため、ストレスも受けやすいのです。
経験値の違いと、今抱えている生活の比重の重さがGen-Z世代やミレニアル世代とは違う彼らは、世界的な問題に対してよりセンシティブになります。
また、ハリウッド界ではトム・ハンクス夫妻や『007』の元ボンド・ガール、オルガ・キュリレンコが感染するなど、セレブも他人事ではない状況。ベビーブーム世代にとっても、あの『フォレスト・ガンプ/一期一会』に出演していた同年代のトム・ハンクスが感染したのですから、より強く警戒心や恐怖心が湧き上がってくるのでしょう。
ミレニアル世代も、もちろんこの状況を全く危惧していないわけではありません。お財布の紐は固くなっているようで、2月28日に公開されたFirst Insightの調査によると、ミレニアル世代の半数以上(54%)が、買い物の際の判断は、コロナウイルスのことを考えてしまうという結果に。実際、買い物の量を減らしている割合は、Gen-Zがもっとも高い41%、ミレニアル世代は40%、Gen-Xは36%、ベビーブーム世代は23%という結果になっています。
Neo Social Life
隔離生活で
盛り上がるもの
隔離生活となれば、ほとんど外出が不可能。そうなると、娯楽も明らかに変わってきます。料理、ホームシアター、Netflixなど、テクノロジーが発達している時代だからこそ楽しめるものも多くあります。
Nielsenによると、米・シアトル地域では、3月11日のテレビの総使用量(ライブテレビ、オンデマンド視聴、ストリーミング、ゲームを含む)は前週から22%増加。同日、NYでは、多くの人がリモートワークを始めたので、テレビの総使用量が8%増加しました。
しかし、メディア企業にとっては、アウトブレイクがビジネス構造そのものを損なう恐れがあるため、平時よりも多くの視聴者を獲得する状況は短命なものかもしれません。企業が雇用を縮小し、アナリストも世界経済の減速に伴う景気後退を警告しているため、かなりの数の視聴者が今後数カ月でケーブルから脱却するか、ストリーミング配信を削減するかを決定する可能性があります。
ソーシャルメディアへ没頭する人も多く出てくるでしょう。実際、Isntagramが人々の退屈な隔離生活を楽しませるものに変わり、より時間を費やすことに。セレブも隔離生活のなかでさまざまな投稿をしていますが、ジャスティン・ビーバーの妻でモデルのヘイリー・ビーバーは、隔離生活の時間を利用して、TikTokをスタート。ジャスティンとのゆるいダンスシーンが話題になっています。
また、FaceTimeも隔離生活からの孤独を解決してくれるツール。もともと、アメリカ人は家族や恋人、友達との通話にはFaceTimeをよく使いますが、social Distancingの推奨により、さらに使用頻度が高くなります。
Love is changing
恋愛も変わる?
The Feedが公開し、ネット上でバズった動画に、新型コロナウイルスによって愛する人との「関わり方」が変わったことをユーモラスに描いているものがあります。好きな女性に会いに行った男性ですが、女性から手洗いやSocial Distancingを強いられ、さらには男性がイタリアへ渡航したという事実が分かると一気に修羅場へ。もしかすると、もうどこかで実際に起きているエピソードかもしれません。
恋人同士だけではありません。せっかくマッチングアプリが普及し、新たな人との出会いを楽しんでいるユーザーも多いなか、新型コロナウイルスを恐れ、約束をキャンセルしてしまう人もいるでしょう。
Tinderでは、マッチした人と会う際の「エチケット」を提示しています。手をよく洗う、除菌ジェルを持ち歩く、顔に触れないようにする、公の場では距離を保つ……。そうなると、ビデオチャットを利用したマッチングアプリのほうが需要が高まるかもしれません(なお、Tinderは、ユーザーがスワイプによってストーリーを選択するインタラクティブ型のドラマ「Swipe Night」のリリースも、新型コロナウイルスの影響でキャンセル)。
このように、対面のデートを避ける人が増えているなかで、セックストイの売り上げが増加しているというデータもあります。
セックストイブランドのWomanizerの販売データによると、年始からの販売数が予測を大きく上回りました。売り上げはもともと予測していたものの50%以上にものぼり、アメリカでは75%の増加になっています。
Highly demanding
需要が高まる仕事
新型コロナウイルスの影響でリモートワークが推奨され、オンラインビデオツールZoomが爆発的なヒットになっていることはご存知かもしれません。
大人が仕事で使うだけでなく、Gen-Z世代がZoom大学を開設したり、Zoomパーティを開催。Zoomを使っているティーンネイジャーは自分たちを「Zoomer」とも呼んでいます(「Zoom University」のロゴを入れたアイテムまでつくられています)。
モバイルアプリを追跡しているApptopiaによると、3月15日だけで過去最大となる60万人近くがZoomをダウンロード。株式市場が暴落する一方で、同社の株は急上昇し、デルタ、アメリカン、ユナイテッドなど各航空会社よりも高額な290億ドル(約3.1兆円)の評価額を得ています。
Zoomの創設者であるEric Yuan(エリック・ユアン)は、2020年に20億ドル(約2,160億円)を純資産に追加。これは、世界の富豪上位500人のランキングであるブルームバーグ・ビリオネア指数で4番目となる大きな増加です。ランク外だった彼は現在、リストの274位で、56億ドル(約6,050億円)の財産となりました。
ほかにも、リモートワークを効率化させるスタートアップやロボットなどが挙げられますが、雇用においてはスーパーマーケットでの需要が多くなっています。
米国中のスーパーマーケットでは、新型コロナウイルスの発生によって高まる需要に対応するために、より多くの労働者を雇用しています。求人は、夜通しで勤務する在庫担当者からパートタイムのレジ係にまで及びます。サンフランシスコ・ベイエリアでは、Safewayが2,000人以上の雇用を検討。また、一部の店舗では、「パニック購入」が国内の多くの地域で引き続き問題となっているため、より多くの助けを必要とする地域に労働者を移しています。
オンラインショッピングもそうです。Amazonは、オンラインでの購入が増えているため、米国全体で100,000人の従業員を雇用すると考えています。とくに、パートタイムまたはフルタイムのポジションの多くの倉庫従業員とドライバーを雇いたいとしています。
Social Distancingの普及と、各国が鎖国していく状況のなかで、若者のうつをも引き起こすといわれていたテクノロジーやソーシャルメディアへの依存が、隔離生活となれば「必要不可欠な依存」へと今後変わっていくのかもしれません。そして、この状況のニーズを満たす職業や社交の仕方が今後、新たに生み出されていくでしょう。
This week’s top stories
今週の注目ニュース4選
- ウイルスに備えた自作デバイス。新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受ける国では、人工呼吸器やそのほかの機器が不足すると予想されるため、メーカーは、オープンソースの自作デバイスの提案をしようと必死になっています。
- UberとLyftがライドシェアを一時停止。Uberは、目的地に応じて1台の車両で最大3人を乗せられる「Uber Pool」を、新型コロナウイルスの拡大に伴い、停止したと発表。また、Lyftも「すべての共有ライドオプションを一時停止する」ことを発表しました。現在は、米国とカナダで適応されます。
- 子どもと大人の在宅時間が増えてTwitchが好調。Twitchの分析サイトSully Gnomeによると、ストリーミングされた時間は、過去3日間でプラットフォーム全体で15%増加。 Twitch Trackerによると、3月の現時点での平均同時視聴者数は、昨年比で12%増加し(127万人対143万人)、2019年8月以来の最大の増加となっています。
- 着ぐるみは「濃厚接触」ではない? NYのタイムズクスエアでは、ジャイアントパンダやエルモ、クッキーモンスターなどのキャラクターが、新型コロナウイルスが猛威を振るうなかでもハグをするために観光客に迫ります。一部のキャラクターは、腕を伸ばしながら人々のグループを追いかけていました。
【今週の特集】
今週お届けしているQuartz(英語版)の特集は、「The business of fertality(不妊のビジネス)」。出産年齢が高齢化し、親世代の経済状況がかつてより上がるなか、不妊ビジネスがかつてないほどに成長しています。数千億円規模になった不妊ビジネスの最前線をQuartzがレポートします。
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