China:顔認証テックにマスクは敵わない

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Because China

すべてを変える中国

Quartz読者の皆さん、こんにちは。火曜のPMメールでは世界を変え続ける中国当地からのレポートをお届けしています。パンデミックのなかで、中国はテクノロジーにおける歩みをさらに加速させています。英語版(参考)はこちら

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Mask Algorithm

マスクアルゴリズム

各企業が新型コロナウイルスの感染拡大に対応する取り組むなかで、中国の人工知能企業による発表は、物議を醸すものでした。マスクを着用していても個人を特定できるようになったというのです。

世界的に高い評価を得ているAIスタートアップである中国SenseTimeは、体温が上昇している人を発見するための赤外線カメラを組み込んだ顔認識製品を発表しました。この製品は、同社ソフトウェアのユーザーにアラートを送るといいます。

追加された「マスクアルゴリズム」によって、公共の場でマスクを着用していない人も検出できます。建物へのアクセスを管理すべく、マスクを着用している人を「高精度」で識別し、マスクを着用していない人にはフラグを立て、マスク着用を促すのです。

同社は「これらの方法により、管理者は体温マスクの着用状況従業員の身元など、感染予防のためのあらゆる範囲の情報を提供される」としています。

在宅勤務をしていた従業員が、次第に元の職場に戻りつつあります。いざそうなれば、マスクを着用した従業員を特定し、オフィスビルに立ち入れるよう整備しなくてはならなくなるのです。

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Image: SENSETIME

SenseTimeは「オフィスビルのエントランスに適用されるシステムは、カバーされていない目、眉、鼻梁の部分などの顔の特徴を読み取り、従業員を識別する」としています。「これによって、従業員がいつでもマスクをつけたままオフィスにアクセスできるようにするのです」

韓国の大手電子機器メーカーLGの子会社はSenseTimeと協力し、マスクや眼鏡、化粧品を使用している従業員であっても、0.3秒・99%の精度で従業員を識別できる入退出システムをソウルにある同社オフィスに導入したと発表しています

Just the Way You Are

素顔でいる罪

北京を拠点とするHanwang Technologyは、パターン認識と顔認識テクノロジーに取り組んでおり、入退出管理デバイスでマスクされた顔を認識できる機能を発表しています

同社によると、この技術は、マスクを着用している人々を特定したり、公共の場でマスクを着用していない人々を当局に通知したりする監視装置に利用できるといいます。北京青年報は、すでに首都のいくつかのオフィスビルで使用されていると伝えています

感染の最盛期、中国では多くの都市でマスク着用が義務づけられ、先月14日には、学校教師がジョギング中にマスクをつけるのを拒否したとして処分を受けたという報道もあります。

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Image: 3.17.2020, REUTERS/STRINGER

マスクの着用は、中国はじめアジア地域では長きにわたり見慣れた光景です。2002〜2003年に起こったSARS大流行を今でも鮮明に覚えている人も多くいます。

当時に比べて生体認証アクセスと監視がはるかに一般的なものとなった今、中国に住む人々からは、オフィスやマンションに入り、ロックを解除し、スマートフォンで支払いをするのに苦労しているとの声も上がっています。FaceIDはその一例ですが、ロック解除のためにはユーザーの目と鼻、そして口が見えていなくてはならないのです。

After Hong Kong Protests

香港を忘れない

ほんの数年前までは、顔認識ソフトウェアで顔の一部を認識することは現実的ではないと考えられていました。しかし、多くの企業がそれを機能させるソフトウェアを磨き上げてきました

その流れに緊急性を与えた一因として、香港デモでマスクが活用されたことを挙げないわけにはいきません。抗議活動を抑止するために、当局は集会でのマスク着用を禁止するに至っています。

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Image: REUTERS/LUCY NICHOLSON

とはいえ、感染拡大で揺れるこのタイミングが、企業にとって最新の監視技術を売り込むのに適した時期であるかというと疑問もあります。

香港でのIPOを計画している顔認識ソフトウェア開発会社Megviiは、マスク着用者を識別する技術を開発するべく資金を借りているというロイターの報道を受けて、ネット上での強い反発を受け、声明を出さざるをえなくなりました。同社によると、この技術は「誤解されている」だけで、体温測定に必要なおでこを識別するシステムを開発しているのだといいます。

コロナウイルスは、監視システムを生活の中にかつてないほど深く組み込む機会を当局に与えているのではないか。人々の多くがそう懸念しています。

「私たちは日々、いくつもの中国テック企業が、感染コントロールのためにと〈顔認識+ビッグデータ〉や〈遠隔監視+リアルタイム警報〉などといった凝った組み合わせを展開しているのを目撃しています」 と、ソーシャルメディアWeibo上であるユーザーは訴えます。「これは、テクノロジーの進歩がウイルスという口実のもと私たちの生活に忍び込んでいる一例です」

This week’s top news

注目の中国ニュース4選

  1. 2か月で500万人が職を失った。16日に発表された調査によると、新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年1〜2月の2カ月間で中国国民の約500万人が仕事を失ったとされています。都市部における失業率は6.2%で、史上最悪の数字です。
  2. 新型コロナウイルス治療に漢方薬。国家中医薬管理局が発表したデータによると、これまで6万人以上の患者に漢方薬が投与され、軽症患者の治療においては、症状が消えるまでの時間を2日間短縮しているとされています(西洋薬との併用)。中国の厚生当局は、今月6日にも「清肺排毒湯」の使用をすすめる公文書を発表していました。
  3. トランプ大統領の「中国ウイルス」ツイートが物議。新型コロナウイルスの感染拡大の要因をめぐって中国外務省の報道官はウイルスは「アメリカ軍が中国に持ち込んだものかもしれない」とTwitterに投稿していましたが、17日にはトランプ大統領が「中国ウイルス」と表現。米中の応酬をさらに加熱させそうです。
  4. ノーベル賞受賞作家に中国が抗議。ラテンアメリカを代表する作家バルガス・リョサは、地元ペルー紙に「もし中国が自由な民主国ならば、今世界で起きているような事態にはならなかったかもしれない」と寄稿し、物議を醸していました。在ペルー中国大使館は声明を発表し、「わが国は自由を尊重しているが、恣意的な中傷や汚名は受け入れることはない」と述べています。

今週の特集

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今週配信されているQuartz(英語版)の特集は「The business of fertality(不妊のビジネス)」です。出産年齢が高齢化し、一方で、親世代の経済水準がかつてより上がるなか、不妊ビジネスはかつてない規模に成長しています。数千億円規模のビジネスとなった、不妊ビジネスの最前線をQuartzがレポートします。

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