Need to Know: Coronavirus
コロナに向き合う世界
Quartz読者のみなさん、こんばんは。週末版のニュースレターでは、感染拡大による社会的・経済的なインパクトをお伝えしています。
今日は、米国の小売り店が突きつけられている現実と、世界の発展途上国で起きている問題、そして、都市封鎖におけるメンタルヘルスに対して、個人が、企業ができることをお届けします。レター最後で紹介している世界の関連ニュースも、ぜひチェックしてください。
DROP ’TIL YOU SHOP
小売りは“死に体”
アメリカではショッピングモールや小売店での客足が低下し続けています。しかも、かつてない規模で。
今週、顧客向けに出された調査報告書で、投資会社コーエン・アンド・カンパニーは、3月27日までの1週間で、米国の小売店への総入場者数は昨年の同時期と比較して97.6%減少したとしています。同社によると、これは「ほぼ完全なる停止状態」です。
informal workers and woman
非公式経済の被害者
発展途上国で新型コロナウイルスがゆっくりと拡大するなか、何十億もの人々が、ある選択に直面しています。インフォーマル経済(非公式経済)に従事し続けてウイルスに感染するリスクを負うのか、それとも家にいて家族が飢えるのを待つか、という選択です。
現在、世界の労働人口の61%にあたる約20億人がインフォーマル経済を担っています。彼らは“病欠”を取れず健康保険もなく、労働者に与えられる政府給付の資格もありません。
国際労働機関(ILO)は、全雇用の約86%が“非公式”なアフリカは特に深刻な状況にあるとしています。
UN Women(国連女性機関) によると、インフォーマル経済に従事する労働者のなかでも女性が「不釣り合いなほどの割合」を占めており、最も大きな打撃を受けることになります。
通常、非正規雇用は農業で高くなりますが、開発途上国69カ国における世界銀行のデータによると、農業以外の労働でも、女性のうち平均65%が公式でない雇用のもと働いています。
during the quarantine
隔離をトラウマにしない
都市が封鎖され、人が自宅での隔離を強いられるようになると、個人のメンタルヘルスは深刻な影響を受けることになります。
Quartzでは、アカデミアと企業それぞれのスペシャリストからアドバイスをもらいました。一人ひとりが自分のために何ができるのでしょうか? そして企業は従業員に対して何ができるのでしょうか?
トロント大学精神医学の准教授Rima Styraは、2003年にカナダでSARSが発生し15,000人が隔離されたとき、感染拡大を防ぐための隔離/封鎖政策が与える影響を調査した研究チームの一員でした。
このときの報告では、調査対象者の約30%が心的外傷後ストレス障害(PTSD)と一致する症状を訴え、睡眠障害や不安、抑うつに苦しんだとしています。これは、年齢や教育水準、既婚か未婚かといった個人の差異に関係なく起きていました。
封鎖期間中に他人との交流が少なかった人たちは、封鎖終了のあとも孤立を癒やせずにいたとStyraは指摘します。一方、自分たちが今なぜ封鎖状態にあるのかを理解した人たちの心は比較的安らかだったとも言います。
また、Eventbriteの最高人事責任者David Hanrahanは、HR担当者に対して同社が実践している対策を教えてくれました。
イベント向けツールを開発している同社は、パンデミック前からすでに遠隔でのオペレーションを実践していました。「人は本質的に社会的な生き物です。社員は“集まりたい”と思っています。今、つながり続けるための新しい方法を見つける必要があります」
個人が自分のためにできること
①連絡を取り合う。今日(こんにち)のビデオ会議システムは、SARS流行時よりはるかに優れています。
②ちゃんと「線引き」する。同居人がいるなら、1時間でもいいので独りになれる時間をつくりましょう。同時に、食事の準備など一緒にできる活動も計画してください。
③SNSを制限する。オンライン上の情報は役に立つと同時に、。信頼できるソースを選び、スクロールに費やす時間を制限します。
④毎日の「ルーチン」を守る。やめてしまった趣味を再開するのもいいでしょう。
⑤ボランティアの機会を見つける。米国では医療従事者のためのマスクづくりに関わっている人もいます。高齢者など、孤立している人に電話をかけることだってできます。
企業が従業員のためにできること
①コミュニティをつくりやりとりを活発にする。EventBriteのCEOは、Zoom上でのQ&Aセッションを隔日で行っています。
②「仮想ルーム」をつくる。例えば、皆が参加して質問できるSlackチャンネルをつくること。物理的に切り離されているなかで重要なことです。
③パネルセッションを実施する。在宅勤務のコツについてのオンラインディスカッションを開催したEventbrite。同社では子育てに関するセッションも実施しています。
④クリエイティブになる。Hanrahanは社員の子ども向けに読み聞かせも行っています。「一日のなかでは“軽さ”も必要です」
⑤気軽な会話の場を設けて率直に語り合う。HRがやるべきは、場を提供しメンタルヘルスの重要性を伝えるメッセージを発信することです。
Essential Reading
知っておきたいこと
1. 世界の感染者数🌏:120万3,485人のうち、回復したとされるのは24万7,001人です(4/5 14:30現在)。
2. クルマ社会の変化が加速。通勤時、郊外からボストンのダウンタウンに続く高速道路はこれまで平均時速55キロでした。現在、同じ時間帯の平均速度は時速100キロです。
3. 米国の自動車保険会社の利益が積み上がる。通勤や旅行がなくなり自動車の交通量が減ったことで、保険会社には数十億ドルの利益が計上されています。
4. 新たに洋服はつくられない。ファッションブランドからバングラデシュの縫製工場に対する注文のキャンセルは30億ドル規模に膨らんでいます。
5. “コロナブランド”の復権。ニールセンのデータによると、かつて消費者にネガティブなイメージをもたれていたコロナビールの売り上げが直近の週でも39%増加しています。