Africa Rising
躍動するアフリカ
Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週水曜日の夕方は、次なるイノベーションの舞台として世界が注目する「アフリカ」の今をお届けしています。英語版(参考)はこちら。
アルジェリアの抗議運動は、止むことがないものと思われていました。
2019年、20年間の長期政権を維持してきた大統領を辞任に追い込んだデモ参加者たちは、2020年に入っても政治体制の全面的な変革を要求し続けていました。
しかし、新型コロナウイルスが発生し、56週間続いた抗議活動は唐突に終了したのです。3月17日、同国の新大統領は、ウイルスのまん延を阻止するという名目で抗議行動を禁止。これまでのところ、抗議者たちは受け入れているようで、首都アルジェの街路には誰もいないと伝えられています。
同じことが世界中の抗議運動について起きています。「ストリートプロテストの年」と呼ばれた2019年から、世界は大きく変わったのです。
No one jumps on the barricades
バリケード内の感染
国際危機グループの国連局長Richard Gowanは次のように語ります。「新型コロナは、事実上抗議の抑止力になっています。ある意味、独裁主義的な指導者に猶予を与えているといえます」
昨年、数カ月間にわたって大規模な抗議活動が続いた香港では、先週、4人以上の集会の禁止を理由にいくつかの抗議活動が解散させられました。ロシアでは、プーチン大統領の任期延長をめぐる国民投票に対して反対運動が起こりましたが、今、モスクワやサンクトペテルブルクでの活動は中止されています。
Armed Conflict Location&Event Data Project(ACLED)のデータによると、昨年11月の第1週では全世界で約2,000件、3月第1週には1,519件の抗議行動が起きていましたが、先週は452件を数えるのみです。
抗議活動の機会を失うことで、人々の命が危険にさらされる地域もあります。南アフリカではこの1年間、ジェンダー差別による暴力に対する大規模な抗議行動が行われてきました。が、ヒューマンライツ・ウォッチの危機支援部長Akshaya Kumarによると、厳重な封鎖によって女性は避難所に行けなくなっているといいます。
The luxury of staying home
在宅こそ最高の贅沢
世論調査会社Morning Consultによると、世界の10の民主主義国家では、指導者たちが危機時に表舞台に立つことで支持率は平均9ポイント上昇したといいます。最も注目すべきは、英首相のボリス・ジョンソンで25ポイント、米大統領のドナルド・トランプでも5ポイント急上昇しました(4月2日時点)。
しかし、これは政府による支援を期待できる富める国の話。発展途上国では、「健康」と「安全」の区別は明確ではありません。インドでは、政府の自宅待機命令で働けなくなった数千人の移住労働者が街頭に出て、何日も食べていないと当局に訴える行動に出ています。
前出の国際危機グループのGowanは、こうした地域の一例としてサブサハランアフリカ(サハラ砂漠以南のアフリカ)やベネズエラを挙げています。
ACLEDのデータによると、先週起きた抗議行動の多くは新型コロナウイルスに関連するものでした。しかし、その要求はさまざまで、デモ参加者のなかには、生き延びるために働くことを認めてほしいと訴える人もいれば、政府にウイルス対策を強化するよう求める人もいました。
Online or on the balcony
バルコニーからの声
そんななか、街頭デモは巧妙に「別の手段」を模索しています。
ブラジルでは、3月中旬、数百万人がベランダで鍋やフライパンを叩き、大統領の対応に抗議しました。イスラエルでは、60万人近くがFacebook Live上でネタニヤフ首相の議会閉鎖に対して抗議し野党党首との連立を思いとどまらせようとしました。ティーンエイジャーの気候活動家Greta Thunbergは、ストライキの舞台をオンラインに移しています( #digitalstrike )。
もっともそれも、街頭デモに比べると、取るに足りないものだといえます。これまでのところ大規模なオンラインデモの影響はほとんどなかったようで、ボルソナロ大統領の政策に対して世論は賛否両論のまま続いていますし、イスラエルでは近く連立政権が発足するとみられています。
また、誰もがオンラインに接続できるとは限りません(デジタル・ディバイド)。ヒューマンライツ・ウォッチのKumarは、「インターネットは社会的・経済的地位に関係なく参加できるオープンな空間ではない」として、カシミール地方を例に挙げます。カシミールの何百万人もの住民は2Gのモバイル接続しか利用できず、メールへのアクセスはほとんどできないのです。
The aftermath
すべて後の祭り
国民の怒りが肥大化すると、国は新たな非常事態権限を発動する可能性もあります。西アフリカにおけるエボラ出血熱危機をめぐっては、非民主的な国々は流行が収まったあとも、権力の返還に消極的です。
さらに、多くの指導者たちは「ウイルスの拡大を防ぐため」にと、物議を醸す新技術も試しています。
イスラエルはテロ対策技術を利用し、新型コロナウイルスに感染した疑いのある人たちの携帯電話を監視しています。イランでは何百万人もの国民に「コロナウイルスを診断できるアプリ」をダウンロードさせたと報じられていますが、実際のところそのアプリは彼らの行動トラッキングに使用されています。
ロシアは顔認識技術のテストケースとして利用し、中国は大規模な監視インフラをさらに拡大しています。同国の顔認識カメラがマスクを着用している人ですら識別できるようになったいう事実は、3月17日のニュースレターでも伝えた通りです。
この危機が沈静化しても、各国政府がその技術の使用を止めることはないでしょう。Kumarは、「この影響は、市民社会のなかで異なる意見をもつ人たちが出会い共同生活を送るうえで無視のできない大きなものとなるでしょう」と語っています。
This week’s top stories
今週の注目ニュース4選
1. ロックダウン中の街を取り締まるロボコップ。3月22日から封鎖命令が出されているチュニジアの首都チュニスでは、赤外線カメラを備えた遠隔操作ロボットでのパトロールが実施されています。違反者を見つけるとIDの提出を求めます。
2. アフリカンアートのオンラインオークションが若者を惹きつける。サザビーズでアフリカンアートを対象にしたオンライン限定のオークションで開催され、落札額は前年比49%増の290万ドルに達しました。競売参加者の3割が、40歳未満でした。
3. WhatsAppは「転送」回数を制限。アフリカで最もユーザー数の多いメッセージアプリのWhatsAppで、5回以上の転送を制限する機能が実装されています。フェイクニュースの拡散を阻止する狙いで、同社によると転送されたメッセージ量は25%削減されたといいます。
4. コンゴで1,200人の囚人を解放。コンゴ民主共和国の法務省は、新型コロナウイルスの蔓延を防ぐため、軽犯罪者を中心とする囚人1,200人の釈放措置を実施しました。同国では、COVID-19感染者数が180例報告されています。
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