Coronavirus:社員に見放される企業

Coronavirus:社員に見放される企業

Need to Know: Coronavirus

コロナに向き合う世界

Quartz読者のみなさん、おはようございます。週末版のニュースレターでは、新型コロナウイルスの感染拡大に向き合う世界の「今」をお伝えしています。

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パンデミックとそれに伴う経済活動の停止が世界中の企業を襲うなか、シリコンバレーの起業家であり、『The Lean Startup』著者としても知られるエリック・リース(Eric Ries)は、次に何をすべきか頭を抱えるCEOからかかってくる電話に応え続けています。

リースの回答に通底しているのは、「企業は短期的な成長のためにミッションを犠牲にするべきではない」ということ。

「今、企業に求められていることは、ずっと前からやるべきだったことと変わらない」と彼は言います。ストレスを抱えた経営者に彼がどのようなアドバイスをしているのか、リースに聞いてみました。


QZ:COVID-19からどんな教訓を得られるのでしょうか?

ER:企業は、自社株買いやら金融工学にお金をかけるよりも、研究開発や自社の人材に投資するべきだということですね。

コロナ禍以前からデジタルトランスフォーメーション(DX)に興味を示しながら何も実践してこなかった企業は、たくさんあります。今、ビジネスの劇的なピボットが迫られている一方で、多くの企業にはそれを実行する力がありません

今日も、キャッシュが5週間分しかなく緊急のファイナンスをしなければならないという大企業からの電話を受けました。こうした予期せぬ混乱に対応できる状態にするために、彼らは本来たくさんのことをできたはずです。

QZ:パンデミック発生前、いったい何が、企業が変化を起こすのを阻んでいたのでしょう?

ER:四半期というショートタームでの経営が、そうでしょう。

企業には、次の四半期、次のマイルストーンまでしか考えないというプレッシャーが蔓延しています。それによって経営者は「何をなすべきか、何に投資すべきか」という問題において、保守的かつ後ろ向きな考え方に陥ってしまいます。何があろうが、株価を下げるわけにはいきませんからね。

経営学には「遅延コスト」という概念がありますが、遅らせることによってより完璧なものをつくれると同時に、そこにはコストが隠されています。

新型コロナウイルスの危機が始まる前にローンチされなかったことで、今後立ち上がる機会を失った全てのプロジェクトが多くあると思います。1カ月、あるいは1年、もしかしたら 5年間プロジェクトに取り組んできた人もいるでしょう。そして今、企業には現金がなく、投資ができない。

QZ:公衆衛生の対応についても同じことが言えますか?

ER:この2週間、救援活動に身を投じてきました。LTSE(リースが創業した新たな証券取引所。1/20のニュースレターで紹介)の使命は、人を第一に考えることです。「どうしたら重要なことのために役に立てるか」を考え、この5日間は公立学校の休校と医療用PPEの問題に忙殺されていました。

ほぼ24時間365日、人々の反応を調整していましたが、状況は非常に恐ろしく、滅入るようなことばかりでした。国家のリーダーシップも企業と同様、どこもかしこも短期的な思考ばかりです。

QZ:この危機の後に、なにか変化が訪れるとお考えですか?

ER:だといいのですが。私にはまだ、人々がこの危機から何を学ぶかはわかりません。 企業の目的は何なのか、そのために何にお金を使うべきなのかという問題については、「誰が株を買い戻しをしたかなんて、誰も気にしない」というような記事をたくさん目にしますね。もちろん、企業にとって1カ月という時間はとても大事です。ただ、それで航空会社が1カ月余分に営業を続けたところで、どうだというのでしょう。

これまでに起きた危機の数々を考えると、思うのです。私たちは正しい教訓を得たのだろうかと。いま直面する状況が新たな常態になるという事実を、私たちは理解していなかったのではないでしょうか。予期せぬ危機も衝撃も予想されます。こうした事態に迅速に対応しえない計画であれば、それは全く計画がないのと同じなのです。

QZ:それでは何が起こるのでしょうか?

ER:今、CEOの方々が私に求めるアドバイスの多くは、緊急レイオフの必要性を問うものです。いったい何人のCEOが尋ねてきたかをお伝えすることはできませんが、それこそが、この状況を招いた理由だといえます。つまり、多くの企業が持続可能なビジネスモデルを持ち合わせていない。

緊急かつ断固とした行動が必要なのはわかります。が、もし企業が真のアジリティーをもっているというのであれば、人を解雇する前に、収益を生み出す新しい機会を探し、その機会に目を向けて仕事に取り組むべきでしょう。

たとえばAirbnbは、第一線で戦う医療従事者に対して隔離のための住宅を提供すると発表しました。全てのホスピタリティ産業は、同じような行動を取る必要があります。Airbnbは自問自答したのです。どうすれば自分たちのアセットやインフラを最大限用いて、新しいサービスを提供できるのかと。

QZ:今見られる企業の対応で、他に感銘を受けた事例はありますか?

ER:むしろ、企業で働く従業員の方々の姿に、刺激を受けてきましたね。彼らがボランティアとして支援を申し出ていることに、私は本当に勇気づけられました。CEOの方々には、自社の社員が発揮している熱心さや情熱、公共を重んじる姿勢に対して、ぜひとも報いてほしいと思います。

Helpwithcovid.comをご覧になりましたか? ボランティアが「私は助けたい」と発信するための場所です。私も個人的に3つのプロジェクトを掲載していますが、3日間で100人以上のボランティアが集まりました。これほどの市民のエンゲージメントは、今まで見たことがありません。

私のもとでボランティアとして活動してくれている人の多くが、巨大なバランスシートをもつ会社で働いていますが、彼らは「顧客サービスの最適化だとかそういうものをやる気はしない」と言うでしょう。 なぜなら「それが今、重要ではないと思う」からです。危機に際して自分の働く会社が行動を起こさなかったことを、彼らが覚えていないと思いますか?

QZ:企業がこの危機以前に考えておくべきことは何だったのでしょうか?

ER:「会社を脆くするものすべて」ということになるでしょうね。サステナビリティ意識の欠如、コーポレートパーパスの欠如、マルチステークホルダーに対する思考…。

見るべきは、従業員だけではありません。コミュニティ全体のために、従業員のために、どの企業が立ち上がったかを見てみましょう。自社の従業員はもちろん、プラットフォーム上で働く人々のために立ち上がっているテクノロジー企業はどこだろうか、と。

市民も従業員もサプライヤーも、皆があなたの行動に注視している今が、投資をするチャンスだと気づいてくれることを願っています。

あなたが今取る行動が、今後、企業としての生き残り方を決定づけることになります。もしあなたが、人を大切にしていなければ、彼らを第一に考えていなければ、景気が回復したとき、彼らは必ずその仕打ちを思い出すことになります。

※英語版(参考)はこちら


FACING THE MUSIC

コロナ・ミュージック

パンデミックのサウンドトラックといえば…Kidz Bopです。米国ではストリーミングサービス全体での再生数が減少しているように見えますが、すべてのアーティストが同じように苦しんでいるわけではありません

BuzzAngleのデータをQuartzが分析したところ、ラテンやラップのアーティストのストリームが減少しているのに対し、ロックやR&Bは被害が少ないことがわかりました。子ども向け音楽は今、大きな波に乗っています。

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Essential Reading

知っておきたいこと

  1. 世界の感染者数🌏は231万7,759人で、369万482人の回復が報告されています(4/19 7:00現在)。
  2. 「肥満」が新型コロナウイルスの主要な危険因子になりうるとの報告
  3. 15日に行われた総選挙では、韓国人の66%が投票に。投票所をはじめ、さまざまな工夫が実施されています。
  4. COVID-19は、脳に何をするの? 新たな事実は、医師の診断や治療法に大きな影響を与えます。
  5. フロリダ州はプロレスを「必要不可欠なサービス」とみなし、営業再開を許可しています

(翻訳・執筆・編集:小西悠介、年吉聡太)


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