Africa:ミレニアル起業家の“投資”革命

Africa Rising

躍動するアフリカ

Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週水曜日の夕方は、次なるイノベーションの舞台として世界が注目する「アフリカ」の今をお届けしています。英語版(参考)はこちら

REUTERS/AKINTUNDE AKINLEYE
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Image: REUTERS/AKINTUNDE AKINLEYE

ナイジェリアのスタートアップが資金調達をしようとするとき、これまでは欧米のベンチャーキャピタル(VC)に頼るのが常でした。しかし、今、ナイジェリア国内にもその選択肢が生まれました。

新しく“リスト”に追加されたのは、Future Africa Collective。AndelaやFlutterwaveの共同創設者として名を馳せた1991年生まれの起業家リン・アボイエジ(Iyin Aboyeji)が立ち上げたファンドです。

アボイエジが目指すのは、アフリカのテック系スタートアップへの投資機会の「民主化」なのだといいます。

the opportunity of investing

誰のための投資か?

Future Africa Collective(以下、コレクティブ)のモデルは、スタートアップへの投資機会を探し、参加した投資家に投資のチャンスを提供するというもの。出資を決定した投資家には、米国を拠点とするコレクティブのファンドパートナーが併走します。

WORLD ECONOMIC FORUM / GREG BEADLE
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Image: WORLD ECONOMIC FORUM / GREG BEADLE

アボイエジによると、現在のところコレクティブは、母国に投資機会を得ようとするディアスポラのナイジェリア人と積極的な投資戦略に興味をもつ若くて行動力のあるナイジェリア人で構成されています。

コレクティブが目指すのは、「エコシステムのための、新しくてより持続可能な資金源を創出すること」と「特にアーリーステージにある起業家への資金提供を拡大すること」だと、アボイエジは言います。

ナイジェリアのスタートアップへの投資は、過去5年間で急増しています。首都ラゴスはアフリカで最も評価の高いテックハブとなり、2019年はアフリカ大陸での投資ラウンドを席巻しました。

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しかし、調達の内訳はシリコンバレーやロンドン、中国などからの資金で占められており、エネルギーや農業分野にフォーカスする地元投資家や個人投資家の影は薄かったようです。

ナイジェリアはじめ、アフリカ大陸全体で影響力のあるエンジェル投資家のコミュニティが形成されつつある一方、専門家ではない投資家や上記セクター関連の投資家に開かれた機会はほとんどありませんでした。

コレクティブは、そうした投資家に門戸を開くことで、関心が高まっているにもかかわらず十分なサービスが提供されていない領域のギャップを埋めようしています。地元の農場への出資を可能にするサービス、Farmcrowdyはその代表的な例のひとつです。

FARMCROWDY
FARMCROWDY
Image: FARMCROWDY

ファンド起ち上げから間もない今、すでに期待できる兆しも見えています。3日のうちに8人の投資家が10万ドルをプールしコレクティブ初となるの出資案件に参加し、最初の1週間で400人の潜在的な投資家からの申し込みを受けました。

Aboyeji the entrepreneur

その男、アボイエジ

コレクティブの信頼性を担保するのは、アボイエジ自身の実績です。

アボイエジは、開発者のアウトソーシングを担うAndelaや決済会社Flutterwav共同設立者であり、両社においては2億3,500万ドル以上の資金調達を受けています。彼がシードラウンド中に投資したゲノミクス研究会社54geneも、シリーズAで1,500万ドルを調達しました。現在29歳のアボイエジは、ナイジェリアとアフリカ東部全域で、すでに20社に投資をしています。

REUTERS/KENNY KATOMBE
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Image: REUTERS/KENNY KATOMBE

また、コレクティブの立ち上げは、ナイジェリアのミレニアル世代の間でドル建て資産への投資意欲が高まっていることともシンクロしています。

ナイジェリアでのインフレおよび国内通貨(ナイラ)の切り下げの脅威を考えると、ドル建て資産はリーズナブルな選択肢です。さらに、この1年で、ナイジェリアのフィンテックスタートアップが若者に米国の株式市場や不動産に投資できる商品を提供し、成功を収めています。

“一般の”ナイジェリア人から資金調達できるのは、地元のスタートアップ、特にシード資金を求めているアーリーステージの企業にとっては大きなメリットになるでしょう。これまで国内のスタートアップ投資に積極的ではなかったナイジェリアの富裕層を変える可能性を秘めているのです。

alternative funding sources

コロナからの回復

新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、世界銀行は、サブサハラン(サハラ以南)アフリカが25年ぶりの不況に陥ると予測しています。国際通貨基金(IMF)は、ナイジェリアが30年ぶりの最悪の不況に向かうと予測しています。

「いつの時代も、不況や国内通貨の切り下げがあると外資はすぐに枯渇し、企業は死滅します」と、アボイエジは言います。

彼はこのコレクティブ設立のアイデアを以前からあたためていましたが、「COVID-19のために急ピッチで」進めたのだと言います。「どうすれば(不況や通貨切り下げの)代替となる資金源を素早く見つけ出し、エコシステムの回復力を維持できるか。それが、ぼくにとっての“問い”だったのです」


This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. 人工呼吸器の王、アフリカへ行く。トランプ政権はアフリカ諸国への人工呼吸器の寄付を計画していますが、この動きはアフリカ大陸での外交的優位性を獲得しようとしてきた中国に対抗するものだとする指摘もみられます。トランプ大統領は、自国での増産に成功したとして「人工呼吸器の王」を自称しています。
  2. Apple Musicが拡大。アフリカの13カ国でしか利用できなかったApple Musicが17カ国で利用できるようになります。Spotifyは5カ国でしか利用できない一方で、大陸のほとんどの地域で利用できる中国系ストリーミングサービスBoomplayが派遣を握っています。
  3. 南アフリカ航空が全社員を解雇へ。国営航空会社の破綻の影響は、約4,700人のフルタイムの雇用が失われるだけでなく、燃料や地上輸送のサプライヤー、旅行会社にも波及する可能性があると指摘されています。南アフリカの観光業は、この国の財政に年間約8.2%寄与しています。
  4. アフリカ初のロックダウン解除はガーナ。2大都市アクラ、クマシでは3月30日からロックダウンが実施されていました。4月20日(現地時間)からロックダウンは解除されましたが、大規模集会は禁止されており、学校は閉鎖されたままです。

(翻訳・編集/年吉聡太)


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