🌍 イエス、と言える日が来た

毎週一度、アフリカの今を伝えてきたニュースレターも、これで最後。今夜はアフリカで女性起業家を支援してきた著者によるエッセイと、アフリカの最新スタートアップ事情をお届けします。
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Photo: UTOMI EKPEI (Getty Images)

Quartz Japan読者の皆さん、こんばんは。アフリカのNPO、Africa No FilterのエグゼクティブディレクターのMoky Makuraです。

1回目は幸運で2回目は偶然、3回目になればそれはもうパターン、なんて定説もありますが、今日はまずは「幸運」の話から始めましょう。2008年、わたしは『アフリカの偉大な起業家たち』という本を書きました。この本では、アフリカ大陸のすばらしい起業家16人のストーリーが紹介されています。

ただし、この本に女性はひとりも登場していません。なにもわたし努力が足りなかったからではありません。数少ない女性起業家たちに、さまざまな理由で取材を断られたのです。

次に、「偶然」の話をしましょう。数年後、この本のローカライズ版で一緒に仕事をすることになったビジネススクールが、当時おそらく世界初となる起業家精神について扱うMBAをスタートさせました。大々的にオープンしたこのMBAですが、女性の応募がほとんどないことに気づくのにそう時間はかかりませんでした。調査の結果、女性の多くが自らを「起業家」だと考えていないため、このコースに参加できるとは思いもしなかったということがわかったのです。

さて、最後に「パターン」についてのエピソードを紹介します。わたしは女性エンジェル投資家グループDazzleの一員として、南アフリカで女性が経営するテックベンチャーを支援しています。そのため資金調達のピッチに同席することがあるのですが、あるとき、とある夫婦のチームに出会いました。夫婦のうち妻の方はシャイで、ピッチの間も自己紹介をしただけで黙っていました。一方で夫の方は威勢がよく、雄弁にビジネスを紹介し、質問に答えたのも彼がほとんどでした。

結果的には彼らに投資することにはならなかったのですが、妻の方からはその後、自分がもっと話すべきだったと気づいたという手紙が届きました。これは自分のビジネスであり、自分のアイデアだった。にもかかわらず、自分はプレゼンが下手で、夫の方がずっと上手だと感じていた。手紙にはそう綴られていたのです。

ここからわかる「パターン」の話としては、すべてが「自信」あるいは「自信のなさ」に起因しているということです。能力が低くとも男性の方がより多くの仕事に応募するのはなぜか? 女性が昇進のために手を挙げないのはなぜか? インポスター症候群が、男性よりも女性に、特に有色人種の女性に多く見られるのも、あるいは多くの女性創業者が目立たないのも、同じ理由から発生しているといえるでしょう。

影に隠れてただ仕事をこなし、必ずしも手柄を立てるわけでもない…そんな役割を、多くの女性が好んでいるように見えます。グローバルな舞台に立って、自ら発言する機会を断ってしまうのは、そのテーマについて自分が十分な知識をもっていないと恐れているからでしょう。自分の仕事についてインタビューされるのを断るのは、自分が十分なことをしていないと思うからでしょう。わたしたちの最大の敵は、自分自身であることが得てして多いのです。

わたしのボスで、毎日出社するたびに目立つような人がいました。彼女は、自分の成功や課題を頻繁に、かつ大声でチームと共有しました。結果、好むと好まざるとにかかわらず注目を浴び、大きく羽ばたいていったのですが、これこそわたしがより多くの女性に望んでいることです。

いまこそ「イエス」と言おう──わたしはそう思っています。ウェビナーでも面接でもミーティングでも、そうしてこそ、女性がビジネスを始め、成長し、リーダーとして率いることができると示せるからです。


STORIES THIS WEEK

アフリカで起きている事

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Photo: TEMILADE ADELAJA (Reuters)
  1. 石油メジャー、アフリカの再エネに大きな一歩。ナイジェリアで太陽光発電ソリューションを提供するデイスターパワー(Daystar Power)を、シェルが買収しました。シェルとナイジェリアの関係は、半世紀以上前の石油探査から始まりました。同社とナイジェリアの国営石油会社とのパートナーシップは、同国を世界最大級の産油国に発展させました。
  2. アフリカからエリザベス2世の葬儀へ。9月19日に執り行われたエリザベス二世の国葬に、アフリカの指導者二十数名が参列しました。そのなかには、南アフリカやガーナ、ルワンダ、ケニアの大統領をはじめ、ふたりの首相とレソト国王のレツィエ3世が含まれています。
  3. ガーナで最も使われている言語がデータベースに。ガーナを中心に、西アフリカのいくつかの町で話されているトウィ語が、Mozillaの音声認識データベースに追加されました。トウィ語の話者は1,800万人と言われ、Mozillaのデータベースでは100番目の言語となります。
  4. ジンバブエへの制裁に意見。セネガルのマッキー・サル大統領が、ジンバブエに対する制裁を解除するようアメリカや欧州連合(EU)、イギリスに圧力をかけました。アフリカ連合(AU)の議長を務めたサル大統領は、「厳しい措置は国民全体に対する不公平感を煽り、深刻な危機の時代に苦しみを助長する」と発言しています。

INTERNET SPEED IN AFRICA

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アフリカで最も高速なインターネットをもち、5Gネットワークの敷設に取り組んでいる国でさえ、インターネットの速度は世界平均に近づいていません。

米国のインターネット速度分析会社Ooklaが発表した「2022 Speedtest Global Index」によると、アフリカ大陸で最も高速なインターネットをもつ南アフリカのモバイルインターネットの平均ダウンロード速度は68.9mbpsで、世界平均である77.7mbpsを下回っているということです。

南アフリカは世界で46位であり、アフリカの国ではトーゴ、モーリシャス、モロッコ、ボツワナがそこに続いています。

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Graphic: Quartz

THE CASE STUDY

今週のスタートアップ

  • 企業名:Kwara
  • 本社所在地:ナイロビ(ケニア)
  • 創業者:Cynthia Wandia

2019年創業のKwaraは、SACCO(伝統的な貯蓄信用協同組合)向けのデジタルバンキングプラットフォームです。携帯電話向けアプリやUSSD(モバイル通信ネットワークを通じて携帯電話とアプリケーション間でテキストをやりとりする技術)を通じて、会員にモバイルバンキングを提供しています。

このプラットフォームによって、SACCOはこれまで対面でのやりとりが必要だった金融サービスの多くをデジタル化できました。いまでは携帯電話やウェブサイトを通じて財務諸表の閲覧やダウンロード、即日融資の申し込み、返済を行なえるようになったのです。

Kwaraのダッシュボードのおかげで、SACCOはオンラインによって迅速な新規会員登録や預金や貯蓄の正確な管理、与信判断、規制要件への準拠といった近代的な銀行業務も行えるようになっています。新規会員登録は、以前の1週間から15分に短縮しました。またKwaraではSACOOの財務履歴がすべて自動で処理されるため、融資の処理にかかる時間も数時間から数分になっています。

こうした時間の節約は直接的なコスト削減につながり、SACCOは会員に革新的な金融商品を提供したり、顧客サービスを向上させたりといったことに経営資源を集中させられるのです。

2021年、KwaraはシードラウンドでBreegaとSoftBank Vision Fund Emergeから400万ドル(約5億7,878万円)を調達し、信用組合のメンバーがさまざまな金融サービスにアクセスできる銀行アプリを開発しました。このアプリは、SACCOとほかの金融エコシステムをつなぐAPIを使っており、サードパーティーのサービスはKwaraにプラグインすることで追加の商品やサービスを提供できるようになります。

Kwaraの最大の市場はケニアにあり、100以上のSACCOをクライアントにもっています。しかし、同社は南アフリカやフィリピンでも多くのSACCOと取引をしており、今後さらに多くの国へ展開を予定しています。

IN CONVERSATION WITH CYNTHIA WANDIA

  • 💪 Kwara創業における祖母の影響について:「祖母は92歳までケニアでコーヒー農家を営んでいました。彼女は若くして未亡人となり、9人の子どもを育てなければならなかったのです。そうしたなかでも、彼女はSACOOのおかげで家族を養い、農場を経営し、配当金で退職することができたのです。だからこそわたしはテクノロジーによってSACOOをより効果的にし、より多くの人に利用できるようにするためにKwaraを創業したのです」
  • 📈 生活費の高騰について:「新型コロナウイルス感染症のパンデミックの際のSACCOの対応を見れば、今後の経済環境においてSACCOがいかに重要かがわかるでしょう。誰かがパンデミックによって失業や事業の停止を余儀なくされたとき、SACOOは組合員に返済猶予をいちはやく提供しました。SACCOの会員はほかでは利用できないような金融セーフティネットを利用できたのです」
  • 💸 アフリカのフィンテック市場の成長について:「スタートアップが経済のどこか一部をデジタル化するたび、その周りのスタートアップも物事を進めやすくなります。一度にあらゆることを解決できるひとはいませんので、スタートアップは補完的な関係にあると言えるでしょう」

DEALMAKER

今週の注目ディール

  • 企業向け決済プロバイダーであるコートジボワールのJulayaは、SpeedInvestが主導するラウンドで500万ドル(約7億2,379万円)を調達しました。同社は2021年7月にも200万ドル(約2億8,951万円)を調達しています。この間、同社が処理する取引額は月150万ドル(約2億1,713万円)から月750万ドル(約10億8,569万円)まで伸びました。今回のラウンドにはEQ2 Ventures、Kibo Ventures、Orange Venturesに加え、セネガル人のサッカーゴールキーパーであるエドゥアール・メンディが名を連ねています。
  • 薬局による医薬品の調達をサポートしているナイジェリアのスタートアップ、Remedial Healthが440万ドル(約6億3,694万円)を調達しました。Global Venturesが主導したこのラウンドにはテンセントやY コンビネーターなども出資しています。同社は2022年2月に調達にも100万ドルを調達していました。創業1年の同社は、薬局向けのBNPL(後払い決済)オプションのおかげで、過去7カ月で6倍の成長を遂げたということです。

毎週一度、アフリカの今を伝えてきたニュースレターも、これで最後。Quartzでは「Africa Innovators」として、この大陸の新たなリーダーとなる女性起業家たちを紹介してきました。多様な文化が育まれたアフリカにふさわしい多様なビジネスモデルを、ぜひチェックしてみてください。