Africa Rising
躍動するアフリカ
Quartz読者のみなさん、こんにちは。今日のPMメールでは、決算発表を経た今、Amazonが注目する「アフリカ」の価値をお伝えします。
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2019年、南アフリカのヨハネスブルグとケープタウンに設けられたデータセンターからクラウドサービスMicrosoft Azureが提供されることになった前日、同じケープタウンでHuawei Cloud Data Centersが稼働を開始しました。
そしてその約1年後となる今年4月、Amazon Web Service(AWS)を提供してきたAmazonは、データセンターをケープタウンに開設しました。Amazonは15年前からアフリカ大陸に進出していますが、こうした施設の建設は初めてのことです。
さらに言えば、Amazonはアフリカ大陸でEC事業は展開していません。ドバイに拠点を置くEC企業のJumiaが「アフリカのアマゾン」として地位を確立しているわけで、需要はあるはずです。しかし、今のところ、アフリカにおけるAmazonは、より収益性の高いウェブサービス事業に焦点を当てているのです。
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Microsoft and Alphabet
クラウドは爆発的成長
折しも先週のMicrosoft、Alphabet、そしてAmazonの決算説明は、パンデミックがこれらテックジャイアント3社のビジネスに与えた影響を読み解く機会となりました。
世界的にリモートワークへシフトし、室内で過ごす時間が増えたおかげで、クラウドサービスへの需要が急増しています。3社はいずれも、クラウドの収益が大幅に増加したことを報告しています。
まず、Microsoftにとっては“すべてがバラ色”のようです。2020年の最初の3カ月間で計上した売上は350億ドル。アナリストの予想を15%上回る成長を記録しました。クラウド事業のAzureの売上は59%増加し、商用のOffice 365スイートやLinkedIn、サブスクリプションなどを含むマイクロソフトの生産性・ビジネス部門は15%の増収となりました。
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「COVID-19が人々の仕事や生活のあらゆる側面に影響を与えるなか、我々は2年分のデジタルトランスフォーメーションを2カ月で目にすることになりました」と、CEOのサティア・ナデラは4月29日の決算説明会で述べています。
同社は、他の事業においても大きく成長しています。室内に閉じこもってゲームをする人が増えたことで、Xboxの売上やXbox Game Passのサブスクリプション、ゲーム内コンテンツが急増しています。MicrosoftのSurfaceノートパソコンとタブレットも売れており、前年同時期と比較して、Surfaceデバイスの売上は1%増を記録しました。
Alphabetが所有するGoogleにしても、G Suiteをはじめとするクラウド事業からの収入は増加しています。2020年の最初の3カ月で、Google Cloudは28億ドルをもたらし、前四半期の26億ドルから増加しました。
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ここ数週間で、カナダの食品小売業者のLoblawやニューヨーク州の失業サービスサイト、オンラインホームデコレーションサイトのWayfairなどが、トラフィックの大幅な急増に対応するためにGoogleのクラウドサービスにサインアップしました。
もっとも、Googleの収益の大半を占める広告による損失を補うにはまだ十分とはいえません。Googleでの検索に時間を費やし、YouTubeの動画を観る人はこれまで以上に増えていますが、企業は先行きの見えない不確実性のなか、広告を買わなくなっているのです。
2020年第1四半期のGoogleの広告収入は、338億ドル。2019年第1四半期の379億ドルから減少しています。YouTubeとGoogle検索の広告収入も減少しました(広告収入の前四半期からの減少は、それぞれGoogle検索で約30億ドル、YouTube広告で6億7900万ドル)。
Amazon
そして、Amazon。
そして、Amazon。同社は、あらゆる意味で“パンデミックの申し子”のように思えます。2020年の第1四半期、Amazonは投資家の予想を上回る755億ドルの売上を報告しました。
パンデミック中のAmazonのビジネスでもっとも耳目を集めたのは、オンライン小売でしょう。が、同社の売上のうち102億ドルはクラウドプラットフォームAWSからのものでした(前年比33%増)。AWSの顧客には、SlackやZoomをはじめ、今年2月にAWSとの契約を発表したマスクメーカーの3Mも含まれています。
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「オンラインショッピングからAWS、Prime VideoやFire TVに至るまで、現在の危機は、Amazonのビジネスのこれまでにないほどの適応性・耐久性を示している」と、創業者兼CEOのジェフ・ベゾスは決算発表で記しています。「しかし、同時にこれは我々がこれまでに直面した中で最も困難な時期でもある」
Cloud should reduce latency
海底ケーブルの遅延
話をアフリカに戻します。Amazonのアフリカ進出は、2004年にケープタウンに開発センターを設置し、仮想マシンをサービスとして提供する「Elastic Compute Cloud(EC2)」を構築したことから始まりました。ヨハネスブルグにAWSオフィスを開設したのは、2015年のことでした。
ヨハネスブルグのコンサルタンティング会社World Wide Worxのマネジングディレクター、アーサー・ゴールドスタック(Arthur Goldstuck)は、今回のケープタウンへのデータセンター設置のメリットを次のように語ります。
「ケープタウンは、アフリカ最大の海底ケーブルである西アフリカケーブルシステム、SAT3ケーブル、ACEケーブルなどの海底ケーブル陸揚げ地点に近いのです。さらに、非常に強力なスタートアップのエコシステムがあります」
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アフリカで最も先進的な経済国である南アフリカには、国際的な大企業と、自国で設立された多国籍企業が混在しています。サブサハラ・アフリカ(サハラ以南のアフリカ)のどの国よりも、はるかに多くの企業が進出しています。Amazonにとって南アフリカとケープタウンは非常に重要な拠点となるのです。
さらに、ナイジェリアやケニアなど、南アフリカ以外のアフリカ市場にとっても有益だと言うのは、ナイジェリアのベテラン技術投資家で起業家のヴィクター・アセモタ(Victor Asemota)です。
「南アフリカやケニア、ナイジェリアのようなアフリカの主要地域では、海底ケーブルを介してインターネット接続インフラを共有してきました。これで遅延は減り、より効率的になるはずです」
EC will remain an afterthought
ECは後回し
アナリストによると、クラウドやデータセンターサービスの需要はアフリカ全域、特に南アフリカ、ナイジェリア、ケニアで飛躍的に伸びているものの、Amazonにとって、同大陸でのECはいまだ魅力的ではないといいます。
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「アフリカにおいて複雑な流通ネットワークや販売モデルを設計し管理するのに比べ、クラウドコンピューティングを設定して管理し、企業にサービスにサインアップしてもらう方が簡単なモデルです」と、南アフリカのクラウド技術コンサルタント、オバディア・ジェシュレン・ナイドゥー(Obadiah Jeshuren Naidoo)は語ります。
前出のゴールドスタックもこう同意します。「消費者から“実質的な”需要があり、その需要を満たすための“実質的な”インフラが整備されるのを待つ必要があります。それまで、AmazonにとってECは後回しでしょう」。
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