Africa Rising
躍動するアフリカ
Quartz読者のみなさん、こんにちは。毎週水曜のPMメールでは世界の新市場としてのアフリカをフィーチャーしてきましたが、今日から4週連続でお届けするのは新世代のカルチャーと消費動向をテーマにした特集です。第1回は、「新世代のアフリカン・ミュージック」と題し、大陸全体で起きている新しい音楽の波を取り上げます。Quartz Japanの特別プレイリスト(Spotify)と合わせて、どうぞ。
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ガーナのアーティストで1994生まれのAmaaraeは最近、ラグジュアリーブランドBurberryのインスタライヴで1,700万人の観客を前に、自身の曲を輝かしく披露しました。
シンガー、ソングライター、プロデューサー、そしてエンジニアとしてマルチな才能を発揮する彼女は、アフリカの新たな世代を代表するひとりで、アフリカン・ミュージックの存在感をグローバル市場で定着させることを見据えています。
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現在、アフリカの音楽産業は大きな盛り上がりを見せています。ナイジェリアだけでもライヴパフォーマンスの興行は年間1億ドル(約107億円)の収益をあげています。
南アフリカでは、産業全体の収益が2020年末には1.7億ドル(約182億円)に達する見込みで、ケニアでは2017年の2,200万ドル(約23億6,000万円)から2021年には3,200万ドル(約34億3,600万円)まで伸びると予測されています。
Meet with technology
デジタルとの融和
アフリカ大陸は長いあいだ、ほかの国や地域の音楽産業と比べてここまで成長するキャパシティがありませんでしたが、ここ10年で状況は大きく変わりました。
これは、スマートフォンの利用が急激に伸びたことが理由のひとつとして挙げられます。
サブサハラ・アフリカ(サハラ砂漠以南の地域)ではブロードバンドの利用率が2%から2013年には11%に増え、国同士の距離が縮まりました。TwitterやSoundCloud、YouTubeのようなデジタルプラットフォームの登場と、世界での活躍を夢見る若いアーティストの野心とが相まって、新たな時代をつくり出したのです。
その世代を代表するアーティストのひとりが、ナイジェリア出身で1991年生まれのMr Eazi。彼は2017年、自身が学んだテックの知識を生かしてデータを活用し、ソーシャルメディアやストリーミングで楽曲をプロモーションしてきました。
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アフリカのミュージシャンのなかで“最も頭がいい”といわれる彼は、かつて首都ラゴスのテック市場の中心地、コンピュータービレッジを拠点とし、大学卒業後はスタートアップObiwezyを立ち上げています(すでに同社は運営していない模様)。
Mr Eaziは最近、アフリカで有望なアーティストにツール、知識、ネットワークを提供し、彼らが“独立した音楽起業家”になるための資金を提供するプログラム「emPawa」を立ち上げました。これは、ほかの才能あるアフリカのアーティストが彼自身のように成功することを願い、音楽ビジネスの成長と継続性を鼓舞するという彼のアイデアから生まれたものです。
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音楽産業においてテクノロジーを駆使するアプローチは、これまでにもありました。
AfrobeatのレジェンドであるD’banjが2012年に発表したシングル「Oliver Twist」は、ソーシャルメディアを利用したキャンペーンで成功したことでも有名です(ナイジェリアのアーティストとして初めてソーシャルメディアを活用してプロモーションを行ったことでも知られています)。
D’banjの戦略をもとにMr Eaziもテクノロジーを駆使したプロモーションを手がけ、結果、2018年にはSpotifyで合計1.63億回ストリーミングされ、アフリカで最もストリーミングされたアーティストになりました。
話題性のあるコラボもまた、人気を得る秘訣です。ナイジェリア出身で1990年生まれのWizkidは2016年、Drakeのグラミー賞にノミネートされたアルバム『Views』の楽曲「One Dance」でコラボレート。同楽曲はSpotifyで10億回ストリーミングされ、Spotify史上最もストリーミングされた楽曲の地位を得ました。
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米アトランタで生まれ、ラゴスで育った1992年生まれのDavidoの「Fall」は、米国のラジオがきっかけとなり、2018年、最もShazamされた曲になりました。
New Generation
新たな世代の台頭
そもそも、アフリカン・ミュージックの世界的ヒットはAfrobeats(Fela Kutiの“Afrobeat”から派生)から始まったとされていますが、そこからAfro-fusion、Afro-Pop、Afro-swingなどさまざまなジャンルが生まれ、Afrobeatsと西洋の要素を取り入れた新たなオルタナティブな音楽も生み出されています。
多様で活気ある音楽に世界は目を向けるようになり、若いスターたちは世界を舞台にすることを夢見ています。
2019年にデビューしたナイジェリア出身で現在19歳のRemaは、AfropopとEmo Trapを大胆に取り入れた音楽で、オバマ夫妻を含む強大なオーディエンスを獲得しています。オバマが2019年夏に公開したプレイリストには彼の楽曲「Iron Man」が登場し、話題になりました。また、音楽雑誌『The Fader』の表紙を飾るほか、北米ツアーも行い、Drakeとのコラボレーションも近々発表される予定です。
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ソウルフルな音楽を届ける、ナイジェリア出身の女性シンガー・ソングライターでプロデューサーのTems(1996年生まれ)も、この1年でさらに成長しています。現在のところシングルを数曲リリースしていて、WizkidからKhalidまで、幅広いアーティストお気に入りのコラボレーターになっています。
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このように、才能ある若手アーティストの台頭とデジタルテクノロジーのおかげで、国際的なレコードレーベルもアフリカのスターを探すべく動き出しています。
ここ最近のホットなニュースといえば、今年3月、ヒップホップレーベルDef Jam Recordingsと南アフリカ出身で1997年生まれのラッパーNasty Cが契約したことでしょう。10代でラップシーンに躍り出た彼はすでに、Major Lazor、A$AP Ferg、French Montanaらとコラボレートし、話題になっています。
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南アフリカからもうひとり台頭しているのが、1992年生まれでラッパー、シンガー・ソングライター、女優、そして詩人でもあるSho Madjozi。才能とエネルギーあふれる彼女は、母国語であるツォンガ語でのパフォーマンスが有名です。
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2019年に発売したシングル「John Cena」で一躍有名になった彼女は、アメリカンフットボールの祭典である第54回スーパーボウルで、Black Eyed PeasとDiploとともにステージに立ったほか、Nikeとのコレクションも発表しました。
Tendency of Music
消費の傾向
アフリカ大陸の人口は、およそ60%を若者が占めている一方で、政策を取り仕切るのは上の世代という社会的背景があります。
しかし、若い世代が消費力を発揮しているのは間違いなく、それが音楽産業を後押ししていくことは間違いありません。コンサート会場やフェスに行き、音楽を購入、ストリーミングするのは若者たちだからです。
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また、これまでナイジェリア、ガーナ、ケニア、南アフリカなど、アフリカの13カ国でしか利用できなかったApple Musicは、この大陸の17カ国で利用できるように拡大。アフリカにおいて音楽市場がさらに広がっていくことは間違いないでしょう。
地元であるアフリカはもちろん、ニューヨーク、アトランタ、ロンドンなどの離れた地域であっても、情熱的なオーディエンスがこの市場を動かしているのは確かなのです。アフリカは、すでにグローバルなマーケットであるといっても過言ではありません。
4週連載「African Youth」第2回は5/27配信。世界が注目するアフリカのファッションシーンを特集します。
※今回紹介したアフリカの若手アーティスト(Amaarae、Mr Eazi、D’bani、Wizkid、Davido、Rema、Tems、Nasty C、Sho Madjozi)をフィーチャーした、Quartz Japanのオリジナルプレイリストを特別に公開しています。リストは👉こちら。
This week’s top stories
今週の注目ニュース4選
- Jumiaの第1四半期の収益は減少。アフリカ最大のEコマース事業者であるJumiaは、2020年第1四半期に売上高が7%減少。しかし、パンデミックの影響が商品カテゴリーや国によって異なることから、損失はわずかに縮小したと見られています。また、ロックダウンがアフリカでのオンラインショッピングへのシフトを加速させている、という結果にもなったようです。
- 西アフリカが食糧危機。西アフリカの4,300万人以上の人々が、COVID-19の影響により、今後数カ月の間に食糧援助を緊急に必要としている可能性が高いと、世界食糧計画(WFP)は述べています。食糧不安は今年も倍増し、アフリカ大陸全体で2億6,500万人に影響を与える可能性があります。この地域は、サヘルとチャド湖地域でのジハード攻撃の急増、重要な食糧供給チェーンを害する気候変動、そして今起こっているパンデミックの三本柱の脅威に直面しています。
- レオ様がマウンテンゴリラを守るために支援。俳優のレオナルド・ディカプリオは、アフリカ最古の自然保護区であるコンゴ民主共和国のヴィルンガ国立公園を守るため、支援キャンペーンに参加しました。同国立公園は、絶滅の危機に瀕しているマウンテンゴリラの生息地として知られている場所ですが、今年4月には、公園のレンジャーがルワンダの反政府勢力と思われるグループに襲撃され、12人が死亡しました。ディカプリオが共同で設立したアース・アライアンスは、当初の200万ドル(約2.2億円)の資金の一部を寄付しましたが、正確な金額は明らかになっていません。
- 昔からあった「社会的距離」。社会的距離と孤立は、COVID-19によって世界の合言葉になりました。考古学の視点から見ると、アフリカの社会では歴史的に、パンデミックを管理するうえで、同様の習慣が重要な役割を果たしていたことがわかっています。現在のジンバブエでは、17世紀から18世紀にかけてショナ族がハンセン病などの感染症に苦しむ人々を仮設住宅に隔離していました。そのため、病人と接触できる人はほとんどいませんでした。また、伝染病の蔓延を防ぐために死体を燃やしたこともあったといいます。
(翻訳・編集:福津くるみ)
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