Millennials:大麻も人気の「ガーデニングブーム」到来

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ミレニアルズの今

Quartz読者の皆さん、こんにちは。日本でも観葉植物やガーデニングの人気が高いですが、米国ではパンデミック下でのガーデニング用品の売上が上昇しました。ニューヨーカーはロックダウン期間中に観葉植物を増やすなど、緑を欲しています。「緑」と切り離せない私たちの生活は、どのように変わってきたのでしょうか?

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ロックダウンのあいだは、ゲーム、読書、エクササイズ、勉強など、普段できないことに時間を費やした人も多かったと思います。米国では、もともと人気の高い「ガーデニング」が、改めて注目されるものになりました。

Eコマース事業者利用に特化したデータ分析会社のKlaviyo(クラビヨ)によると、家庭用品や園芸用品のオンライン販売が3月中旬から5月中旬にかけて63%増加したことが明らかに。また、市場調査会社のNumerator(ヌメレーター)が実施した消費者調査によると、3月に園芸用具や用品を購入した4人に1人以上の人がパンデミックの影響を受けて購入したと答えています。

オンラインで植物を販売するShrubBucket(シュラブバケット)では、売上高が昨年の13倍に跳ね上がり、野菜植物の需要は前年比でなんと、1,200パーセント近く増加したといいます。

さらに、種子を販売する米国のW. Atlee Burpee & Coは、このパンデミックの期間である3月には、同社の144年の歴史の中で最も多くの種子を販売したといいます。

Hooked On

観葉植物に夢中

ミレニアル世代におけるガーデニングや観葉植物を購入するトレンドは、パンデミック以前からかなり定着しています

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裏庭で野菜や花を育てたり、家に敷地のない若者は「コミュニティ・ガーデン」と呼ばれる郊外にある共同の畑でガーデニングを楽しんでいます

2019年の全米ガーデニング調査によると、ガーデニング用品の小売売上高は、523億ドル(約5.7兆円)になり、記録的な数字に。そのうち4分の1は、18〜34歳の世代が植物の購入に費やし、2014年以降、ほかのどの年齢層よりも高い割合で成長しているといいます。

特に、大都市では、自宅内で緑に囲まれた生活をする人が多くいます。

ニューヨークのグリーンポイントで夫と犬、50種類以上の植物とともに暮らし、植物のオンラインサイトGreenery Unlimitedを展開するRebecca Bullene(レベッカ・ブレーン)は、このように話します

「このパンデミックが起こる前から、人々は記録的な勢いで観葉植物やオフィス用の植物を購入していました。それでも、このパンデミックが後押しし、さらに植物が売れています。特に、3月中旬以降、花が咲く植物のオンライン販売が急増しています」

観葉植物を育てるミレニアル世代の“アイコン”も。『How to Make a Plant Love You: Cultivate Green Space in Your Home and Heart』の著者で、世界初の「エコモデル」とも呼ばれる、35歳の観葉植物の専門家Summer Rayne Oakes(サマー・レイン・オークズ)です。

Summer Rayne OakesのYouTubeチャンネルより。
Summer Rayne OakesのYouTubeチャンネルより。

ニューヨークのウィリアムズバーグの彼女のアパートには、1,100もの植物でいっぱい。自然と室内のなかで向き合いたいと思う志向の若者に支持されている彼女は、自身のInstagramでフォロワーに観葉植物のケアのためのヒントやビデオを共有しています。YouTubeチャンネルでも、観葉植物の育て方をレクチャーしているので(家にはたくさんの植物!)、興味がある方はぜひご覧ください。

2012年に設立した鉢植えの観葉植物を展開するスタートアップThe Sillは、室内を緑でいっぱいにしたい若者に大人気。2018年の時点で総額750万ドル(約8.1億円)の資金調達をしていて、オンラインのほか、ニューヨークのローワーイーストサイドの店舗で植物を販売しており、ワークショップなども行っています。

「The Sill」のホームページより。
「The Sill」のホームページより。

The reason why…

ストレスと付き合う

なぜ、こんなにも人々は“緑”を求めるのでしょうか?

ストレスの多い社会で、人々は安心感とリラクゼーションを求めているのが、一番の大きな理由でしょう。米国のミレニアル世代は、働き盛りの世代ということもありますが、なんと1日のうち93%もの時間を家や車の中で過ごしていると報告されています。テクノロジーと常に隣り合わせの若者なので、こういったストレスの解毒剤として彼らの心に響いています。

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パンデミック下においては、外食も自由にすることができず、スーパーへ行くのも一苦労となってしまい、自給自足を考えた人も少なくありません。

時間がかかる方法だとしても、食料を少しでも手に入れられるよう自給自足として“ガーデニング”に価値を見出します。それが「パンデミック・ガーデン」をつくり出すのです。

米アーカンソー州を拠点とする種苗販売店The Seed Guy(ザ・シード・ガイ)のオーナーであるLinda Look(リンダ・ルック)は、パンデミックで人々の需要に追いつくのがやっとだ、と話しています。「もちろん、春は種苗会社にとって1年で最も忙しい時期ですが、今年はCOVID-19のおかげでユニークな年になりました」

現在、2,200万人が突然仕事を失っており、一部のエコノミストは経済が回復するまでに長い時間がかかるかもしれないと予測。Lookによると、食品のサプライチェーンに不安があるといいます。「ガーデニングをすることで、食料源をよりコントロールできるようになる」と述べています。

また、米ラトガース大学教授のJoel Flagler(ジョエル・フラグラー)によると、ガーデニングは「誰にでもできる手軽な方法」と言います。「植物には、判断力がありません。つまり、植物には、今日から誰にでも対応する準備ができているのです」

全米園芸協会(National Gardening Association)は、現在、週に50万件もの質問をガーデニングをする人々から受けているといいます。彼らの業界報告書によると、昨年は米国の全世帯の4分の1が野菜を栽培していました。

「今年は、50%が野菜を栽培していたと聞いても驚きません。そのなかでも、トマトはいつも最も人気のある野菜です」とエグゼクティブディレクターのDave Whitinger(デイブ・ホワイティンジャー)は話します。

Green Generation

「緑」世代の若者

ミレニアル世代の観葉植物好きは、セルフケアやウェルネスにも大きく関係しています。

「ウェルネス世代」としても知られるミレニアル世代は、健康志向が強いからこそ、植物が自分たちにもたらす肉体的、精神的な健康上の利点を理解し、共に生活したいと思うのです。

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また、環境問題に対する意識が高く「グリーン世代」とも呼ばれる彼らが、“緑”と共存するのもひとつの理由。サステイナブルな考え方や行動を重要視するミレニアル世代なので、都会に住んでいても緑に囲まれて暮らすことを自然と求めるのです。

さらに、先述のSummer Rayne Oakesのように、ソーシャルメディアを駆使して自身の生活やものごとのハウツーを簡単に発信できたり、知ることができるようになったことも、ミレニアル世代ならではの「変化」ともいえるでしょう。

Next trend is…

大麻栽培へ

AP PHOTO/CHARLES REX ARBOGAST
AP PHOTO/CHARLES REX ARBOGAST

今や、ガーデニングは大麻栽培へも浸透しています。

3月16〜22日の期間に、米国・カリフォルニア州、コロラド州、オレゴン州、アラスカ州を含む米国の主要市場における嗜好用大麻の売上高は50%増加し、医療用大麻の売上高は前年同期比41%増加したことが調査でわかっていますが、ガーデニングブームの後押しもあり、大麻は自宅で育てるものへと変わってきています。

ここ数年、家庭用の芝生・園芸商品のメーカーであるScotts Miracle-Gro(スコッツ・ミラクルグロー)では、売上の一部を水耕栽培型の大麻栽培に特化した子会社であるHawthorne Gardening(ホーソン・ガーデニング)が占める割合が増えています。

2019年には、同社の売上高の20%以上を占めており、2016年の5%から15%以上増加。「Hawthorne Gardeningではこれまで以上に多くの出荷を行っている 」と、同社のトップであるChris Hagedorn(クリス・ハーゲドルン)は先日の決算発表で述べています。

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Hawthorne Gardeningの第1四半期の収益は2億3,000万ドル(約250億円)で、前年同期比60%増。大麻に特化した事業はまだまだ小さいですが、成長ははるかに早いといえるでしょう。

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Go Together

アプリとの相性

ガーデニングとアプリの相性もかなり良さそうです。

初心者と経験豊富なガーデナーをつなぐアプリ「GrowIt」の共同設立者であるSeth Reed(セス・リード)は、パンデミックによってユーザーに変化があったことを明らかにしています。「ここ数カ月で毎日のアクティブユーザーが10倍に増えています」

「GlowIt!」のホームページより。
「GlowIt!」のホームページより。

2015年にローンチした同アプリは現在、70万人以上のユーザーがいます。自分の位置情報を入力すると、その場所と生育環境に適した植物を見つける機能もあり、簡単にガーデニングを始めることができます。

Avalowは、専用のプランターを使ってガーデニングをするブランド。アプリを一緒に使いながら自給自足のガーデニングを行うのですが、ハードも提供されるので初心者でも簡単に始められます。

「Avalow」のホームページより。
「Avalow」のホームページより。

ガーデニングや観葉植物を育てることがより身近で簡単になってきていますが、子どもをもたない、シングルも多いミレニアル世代ゆえに、植物を“育てる”ことが、彼らの人生における、別の新しい“育てる”楽しみへと変わってきているのかもしれません。


This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. 今、マンハッタンで起こっていること。人種差別に対する大規模なデモが起こっているニューヨーク。それは、略奪へと変わっています。今週の火曜日と水曜日のミッドタウンとソーホーで撮影された映像からは、殺伐とした街の様子が伝わります。BurberryやSephora、Sunglasshatなど、各店舗ではショーウィンドウを木製の板で覆い、略奪者からの侵入を防いでいます。
  2. オバマ元大統領がデモについて語る。バラク・オバマ元大統領は水曜日の午後、この6日間にわたる抗議活動について、「警察の暴力について考え直す」というテーマで、Zoomを通し考えを述べました。多くの暴力と死を目の当たりにしたオバマ氏は、有色人種の若い男女に直接話しかけたといい、「自分が大切であることを知ってほしい。命が大切であることを、夢が大切であることを」と彼らに語ったといいます。
  3. ヴァージル・アブローが謝罪。Louis Vittonのメンズ部門のアーティスティック・ディレクターでもあるデザイナーのVirgil Abloh(ヴァージル・アブロー)は、George Floyd(ジョージ・フロイド)が殺害されたことが発端となった抗議活動Black Lives Matter(ブラック・リヴズ・マター)受けて、店舗の略奪について批判したことへの投稿(店への配慮を優先している内容)、そして、50ドルの寄付金を公表したことを謝罪しました。
  4. Samsungが手洗いアプリを導入。Samsungは、Galaxy Watchを所有する人へ向けた手洗いアプリを導入しました。アプリでは、アラームを使ってユーザーに何度か手洗いを促したり、タイマー機能で、手洗いの時間をきちんと測ることができるようになっています。

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