MILLENNIALS NOW
ミレニアルズの今
Quartz読者の皆さん、こんにちは。世界的に大きな抗議活動となっているBlack Lives Matterをはじめ、社会を動かす原動力になっている若者。今回は、Z世代を切り取り、これまでのトピックとして挙げてきた事例を含め、彼らについて知っておくべき10のことをお届けします。英語版はこちら(参考)。

1995年または1996年以降に生まれた世代を指すZ世代(Gen Z)は、これまでスマートフォンのない生活を経験したことがありません。彼らは画面を通して世界中の仲間、影響を受けた人、ブランドとつながって成長してきました。そのため、企業との関係性もほかの世代とは全く異なるものになっています。
McKinsey & Company(マッキンゼー・アンド・カンパニー)によると、Z世代は米国だけでも推定1,500億ドル(約16兆円)の消費力があり、企業は、今日の若い消費者にリーチするには、従来のやり方には頼れなくなってきています。企業は、独自の戦略法を見つけ出し、Z世代に対応していかなければなりません。
Quartzが制作した最新のプレゼンテーションでは、環境問題やボディポジティブなど、Z世代を理解するための重要なマインドと、若者とのつながりを望む企業にとってそれが何を意味するのかを考察しています。
今回は、これまでにもさまざまな局面からレポートしてきた、Z世代を知るための重要なポイントをまとめてお届けします。
Purchasing power
高い購買力
現在、世界の40%の消費者がZ世代であり、彼らのうち10人に9人は、企業には環境・社会問題に取り組む責任があると考えています。
つまり、企業にとって若年層の消費者にアピールすることは、これまでになく重要なこと。スマートフォンやソーシャルメディアなくしてZ世代を語ることはできず、またZ世代はソーシャルプラットフォームを通してブランドのこれまでのあり方や伝統的、そして文化的なものを変えてきました。
若年層にアピールしたいと考えている企業は、Z世代の考え方に倣う必要があるといえるでしょう。
Gatekeepers
情報は、選ぶもの
コンサルタントのChloe Combi(クロエ・コンビ)の言葉を借りれば、Z世代は「自分たちでつくったものを自分たちで消費し、自分たちが消費するものを自分たちでつくる初めての世代」です。
彼らは従来のテレビ番組を見るよりも、同世代のYouTubeチャンネルを見る傾向があり、新聞や雑誌、本ではなく、InstagramやSnapchatから世界についての情報を得ています。つまり、多くの“メインストリーム”な影響を受けない、独自のデジタルエコシステムのなかで活動しているのです。

Environment
環境への関心
Z世代の特徴のひとつに、気候変動や環境への関心の高さがあります。2019年、投資銀行のPiper Sandler(パイパー・サンドラー)が米国の10代の若者9,500人を対象に、今最も重要な社会問題や政治問題について調査したところ、その第1位は環境であることがわかりました。
トレンドを予測するWGSNが行った2019年の世論調査では、18歳から25歳までの95%が気候変動を憂慮し、習慣やライフスタイルを変えることを望んでいることが明らかになっています。

Reuse, rent, digitize
新しくなくていい
多くの若者は、自分たちの環境に対する信念に忠実でありながら、多様性に富んだユニークなワードローブを手頃な価格で構築するために、中古品の購入に目を向けるようになってきています。
また、Z世代が衣類のレンタルにますます関心をもつようになると予測されていて、分析会社GlobalDataによると、衣料品市場全体よりもはるかに速いペースで成長しているといいます
ファストファッションブランドであるH&MやUrban Outfitters、American Eagleなどもレンタルビジネスを展開するRent the Runwayを追うように、同ビジネスをスタートしています。

Greenwashing
グリーンウォッシング
Z世代はエココンシャス(環境への配慮)を重んじていますが、環境に優しいと自らを売り込みながらも“矛盾”が生じているブランドに対しても非常に敏感になっています。
2019年、ノルウェー消費者庁は、H&Mが自らのエココンシャスなコレクションをサステイナブルであると称していることに対し、「違法なマーケティング」だと非難し、思わぬ注目を集めました。
QuartzのファッションレポーターMarc Bainは、「問題となった衣料品は、リサイクルポリエステルやシトラスの皮、パイナップルの葉、藻類のバイオマスの再生可能な素材でつくられているものの、その低コストかつ大量生産型のビジネスモデルは、『サステイナブル』だと主張する同社のコンセプトに矛盾している」と述べています。
Rethinking gendered consumption
「ジェンダレス」消費
Z世代は、ほかの世代よりもセクシュアル・フルイディティ(性的流動性)やジェンダー・ノンコンフォーミング(ジェンダーが社会通念にとらわれてないこと)の概念を受け入れています。
これは、21歳のメイクアップ動画が人気のYouTuberでCoverGirlのスポークスマンでもあるJames Charles(ジェームズ・チャールズ)のようなスターが台頭したことでも明らかです。
また、Z世代の59%がオンラインフォームには「男」か「女」以外の選択肢を入れるべきだと回答し、自分の性別のカテゴリーだけで買い物をする割合は44%と、性別に関係ない商品を購入する人の方が多くなっています。
こうした価値観をもつZ世代に対して、企業はより多くの製品を「ジェンダーニュートラル」として売り出してくことが必要でしょう。
The body positive boom
新しい「美」を追求
「ボディポジティブ」(Body Positive)とは、主に「痩せた体型=キレイ」という従来の美の定義から外れ、プラスサイズの体をありのままに愛すムーブメント。
ソーシャルメディアを中心に2012年に多く見られるようになったのは、特にこの「太っている」ことを受け入れることを謳っています。しかし、現在では、身体だけでない「美」の基準に対しての価値観を変えるために発言されています。
Z世代から多大な支持を受けるアーティストBillie Eilish(ビリー・アイリッシュ)が、自身オーバーサイズの衣装を着用していることに言及し、ボディポジティブに関連した発言や映像を公開していることでも、より広くこの価値観が知られるようになりました。

現在、若い女性は、新たなの美の基準に挑戦しています。Piper Sandlerの2019年の世論調査では、10代の女性の20%が「化粧をしない」と答えたのに対し、2年前はわずか12%でした。一方で、Z世代に人気のあるソーシャルメディア上のボディポジティブなアカウントでは、「昔の白くて痩せているモデルをはるかに超えて」のような、より包括的な美の考え方を促進しています。
Piper Sandlerのマネージングディレクター兼シニア・リサーチアナリストであるErinn Murphy(エリン・マーフィー)は、「人々は、何かを隠す必要がなくなってきています。美容の世界は包摂性に向かっていて、ニキビを隠すのではなく、ニキビを治療することが重要なのです」と述べています。
TikTok for the win
TikTokが勝つ
Instagramはまだ多くの影響力を持っています…が、多くの若者にとって、TikTokは本当の意味でのソーシャルメディアの活躍の場となっています。
TikTokは2019年10月現在、世界中で月間アクティブユーザー数が8億人を超えており、そのうちの41%が16歳から24歳のユーザーです。TikTokの強みは、15秒のビデオクリップに巧妙さと簡潔さを混ぜ込むことで、ソーシャルメディアでは短い尺を好むZ世代の使い方に適しています。
18歳のシェフで元「Chopped」の出場者でもあるEitan Bernathは、TikTokとInstagramでレシピや料理の動画を公開しています。

彼にとってTikTokでの成功は、人々が自分の動画をスクロールして過ぎていくのを止める戦略にあると考えています。つまり、最初の5秒で視聴者の注意を引くようなことをするようにしている、と言います。
なお、Z世代の下の世代はより、TikTokが浸透しています。
ペアレンタルコントロールソリューションを提供するQustodioの最新の報告書によると、4歳から15歳までの子どもたちは、1日平均85分をYouTubeの動画を見ているのに対し、TikTokでは1日80分を費やしていることが分かりました。また、TikTokは、子どものソーシャルアプリ利用の成長を2019年には100%、2020年には200%牽引したことが明らかになっています。
TikTokにフォーカスしたマーケティングをする企業(とくにビューティ業界)も増えてきましたが、今後はTikTokを第一に考えていかなければならない可能性があります。

The coronavirus pandemic
コロナは「分岐点」
新型コロナウイルスのパンデミックは、Z世代にとって人生の分岐点となるでしょう。
パンデミック前から「倹約家」であった彼らは、不況が長引けば支出をさらに警戒するようになる可能性があります。今春の10代の支出は前年比で13%減少し、景気が悪くなっていると感じる10代は、47%にのぼっています。
新型コロナウイルスの救済策をまとめようと、政府が奔走するのを目の当たりにしている若者たち。彼らは、政治を含め、より強固な社会的セーフティネットを求めて社会を変えていくでしょう。それは、国に対する社会的信頼の低下が引き起こすもので、今後、長期的に続くかもしれません。
Global connections
グローバルにつながる
Z世代の経験やものごとの優先順位は、文化の違いから国によって必然的に異なります。しかし、ソーシャルメディアが世界中にトレンドを拡散できることは、Z世代の消費者がほかのどの世代よりも、グローバルな視点で多くの共通点をもっているということを意味します。
これは、現在起こっているBLMにも言えることですが、若者はソーシャルメディアを通して発言することでデモに参加したり、募金をしたりと自国だけでなく世界中の社会と深く関わっているのです。

世界中の10代の若者がソーシャルメディアで常にお互いを見ていて、これまで存在していた「権力者」の考えをほとんど無視し、何がクールで何が重要なのかを自分たちで伝え合っています。
Z世代と理解し合うためにも、企業は彼らの意見や考えにきちんと向き合う必要がありそうです。
This week’s top stories
今週の注目ニュース4選
- Facebookで政治的な広告をオンオフできるように。米国のFacebookユーザーは、プラットフォーム上のすべての政治的な広告を「オフにする」オプションをもつことができるようになりました。この新機能により、ユーザーが閲覧するものをよりコントロールできるようになるでしょう。
- 礼拝がオンライン化。調査会社Pewによると、通常、米国人の約3分の1が少なくとも週に1回は宗教的な礼拝に出席しているといいますが、新型コロナウイルスの影響で、再開している場所はまだ多くありません。そうしたなか、礼拝もすでにオンライン化していて、米アリゾナに拠点を置くStreamingChurch.tvは、教会にデジタルサービスを提供しています。
- TikTokでZ世代がミレニアル世代と決別? 先週末、TikTokでZ世代がミレニアル世代に物申しました。TikTokkerである@mayalepaが、「団塊の世代がZ世代とミレニアル世代を一緒にするのにはうんざりだ」「個人的には、いまだにハリーポッターの映画に人格特性があると思っている人たちとは関わりたくない」とコメントした動画をアップ。Twitter上でもこの論争がブームになりました。
- Givenchyに新クリエイティブディレクターが就任。フランスのメゾンGivenchy(ジバンシィ)は、前クリエイティブディレクターであるクレア・ワイト・ケラーの辞任後、同職にマシュー・M・ウィリアムズが就任したと発表しました。マシューは1017 ALYX 9SM(アリクス)の創設者で現在、34歳。ウィメンズ、メンズともにブランドのクリエイティブ全般を担当します。
このニュースレターはSNS👇でシェアできるほか、お友だちへの転送も可能です(転送された方へ! 登録はこちらからどうぞ)。Quartz JapanのPodcastもスタート。Twitter、Facebookもぜひフォローを。