Millennials:なんてたのしいクルマ生活

MILLENNIALS NOW

ミレニアルズの今

Quartz読者の皆さん、こんにちは。クルマを持たないといわれているミレニアル世代。しかし、パンデミックは彼らの間に新たな「クルマ生活」を生み出しているようです。

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新型コロナウイルスのパンデミックにより、私たちの日常を支える交通手段も大きく変化しました。とくに、選択肢のひとつでもあったライドシェアは、ウイルス蔓延の拡大とともに利用が難しくなりました。

Informationによると、Uberの世界における4月の乗車予約件数は、前年比で80%も減少したと報じています。また、The New York Timesによるクレジットカードデータの4月の分析によると、電動スクーターのレンタル利用に対する支出が、シェアリングサービスの中でも最も減少していることがわかりました。

We don’t feel like sharing

シェアは嫌だ

なかでも好調だったのが、自転車です。通勤客がバスや地下鉄を使うことを避けたため、パンデミックでは世界中でバイクシェアシステムが人気になり、自転車を購入する人も急増しました。

調査会社ITDPによると、北京では、3大バイクシェアシステムの利用が5月までに150%増加したと報告されています。また、ニューヨークのバイクシェアシステムでは、3月初旬に乗車数が67%増。

その後の経済活動の停止により利用率は低下しましたが、市の回復に伴い、サイクリングの利用が長期的に急増すると予測されています。ロンドンの交通局も同様に、今後数年間で自転車利用が10倍に増える可能性があると予測してます。

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Image: REUTERS/AXEL SCHMIDT

米国の消費者の関心は、自ら購入することにも向いているようです。市場調査会社NPDグループの調査員によると、2020年3月、米国のパーソナルバイクの販売台数は、前年比で2倍近くになりました。

米国では自転車の売上が好調なために、供給不足にも。NPDグループによると、3月の自転車、機器、修理サービスの売上が、昨年の同時期に比べてほぼ2倍になりました。

同月の通勤用およびフィットネス用自転車の売上は66%増、レジャー用は121%増、子ども用は59%増、電動自転車は85%増となっています。そして、4月末までには、多くの店舗や流通業者が低価格帯の消費者向け自転車を売り切っています。

COMING BACK

クルマ需要の回復

そして今、「自家用車」に対する需要も高まっています。

Bloombergがまとめたデータによると、世界中の多くの大都市圏での車の移動が、ほかの乗り物よりもはるかに早く回復し始めてきているといいます。

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交通状況の調査結果をまとめた「TomTom Traffic Index(トムトム・トラフィック・インデックス)」によると、6月中旬までに中国・深センの平日朝のラッシュアワーの交通量は、2019年の同時期と比べて18%上昇。世界的なガソリン需要と同様に、自動車販売も中国全土で上昇傾向にあります。

また、Capgemini Research Institute(キャップジェミニ・リサーチ・インスティテュート)の最近の調査によると、世界の1万1,000人の回答者のほぼ半数が、将来的にはクルマの運転を増やす予定で、公共交通機関、UberやLyftのようなライドシェアサービスへの依存度は低くなると答えています。

なお、回答者の4分の3は、自家用車が欲しいのは「衛生面での管理がしやすいから」という理由を挙げています。

クルマを所有していないミレニアル世代はどうでしょうか? 同調査対象者の約3分の1が今年中に自家用車を購入する予定だと回答し、そのうち45%は35歳未満。25〜35歳までの79%がクルマを所有してこなかったことを考えると、この割合は非常に大きいといえます。

しかし、自動車を使う日常は、米国の多くの大都市にとって、現代のモデルからするとある種、退行というべきものになるかもしれません。

というのも、米国のデータ分析によると、大学の学位をもつような教養のある住民の多い高密度の都市では、公共交通機関の利用率、自転車や徒歩での通勤率が、低密度の都市よりも高いことが示されていました。都市の大気汚染と炭素排出量の削減をはじめ、社会的流動性や包摂性、イノベーションにもプラスであるとされてきたのです。

NEW MOVEMENT

注目されるRV

自動車需要は再び高まっていますが、人気の車種のラインナップは、かつてと少し様子が変わっています。

SUVは自家用車として米国では以前より人気でしたが、RV(レクリエーションヴィークル)の人気が高まっています。RVは、感染リスクの中で旅行する新たな手段として、注目を集めているのです。

調査会社IHS Markitの自動車アナリストであるTom Libby(トム・リビー)は、「2019年の米国販売のうち、SUVは47.4%を占め、セダンは22.1%でした。2025年までには、SUV、バン、ピックアップを含む軽トラックのカテゴリが、現在の72%から78%になると見ています」と話します

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Image: REUTERS/RICK WILKING

米国経済がパンデミックで停滞し始めた3月の市場では、Thor(トール)とWinnebago(ウィネベーゴ)という2大上場RV企業の時価総額が、S&P500のインデックスと比較して激しい落ち込みを記録しました。

しかし、その後、2社の株価はS&P500を上回り始め、夏の兆しがはっきりしてきた5月下旬には急騰しました。なお、Thorの株価は、世界で50億ドル相当の自動車メーカー31社が上場しているなか、2月以降Audi(アウディ)とTesla(テスラ)に次ぐ第3位のパフォーマンスを示しています。

Thor Industriesの社長兼CEOのBob Martin(ボブ・マーティン)は、現在の状況について「初めての購入者が増えており、RV業界の長期的なよい兆しがあります」と述べています

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また、多くの州が5月はまだロックダウンされていましたが、高級キャンピングカーを展開するAirstream(エアストリーム)は、売上高が昨年と比較して11%上昇しています。

調査会社のGlobal Market Insightsによる最新のレポートによると、RVの市場規模は2026年までに世界で640億ドル(約6.8兆円)を突破すると予測。米国では、2019年~2024年までに、約7.02%のCAGR(年平均成長率)が予測されています。

#Vanlife

人気の「バンライフ」

RV産業協会によると、米国でのRVの出荷台数は48万3,672台で、2018年は過去2番目に好調な年になりました。なお、過去最高を記録したのは2017年の50万4,600台でしたが、2018年は4.1%の減少にとどまっています。

また、RV業界の売り上げの上昇には、若い人たちの間で#Vanlifeが流行したことも関係があります。

「Van Life」とは、車中泊仕様の車(バン)を拠点に生活を送るライフスタイルのことで、2012年、会社員だったFoster Huntington(フォスター・ハンティントン)が、多忙な都会の生活から逃れるため、家を捨て生活に必要な最小限のモノと車で移動し始めました。その様子をInstagramで紹介し、#VanLifeがトレンドになりました。

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「あらゆるライフスタイルや予算に合わせたRV車が、さまざま存在しています。6,000ドル(約65万円)以下のものから100万ドル(約1億700万円)の豪華なものまで、揃っているのです」とRV業界協会の広報担当者であるMonica Geraci(モニカ・ジェラチ)は言います。

また、2014年から毎年100万世帯以上の米国人がキャンプを始めており、2017年時点で、ミレニアル世代はアクティブなキャンパー7,500万世帯の38%を占めているといるといいます。なお、RV業界協会が委託した調査によると、35歳から54歳までの人々がRV所有者の最大の割合を占めています。

一方、RV需要の急増は、クラシックキャンピングカーの人気とも関係があります。2019年に100周年を迎えたヴィンテージトレーラーやRVなどの愛好団体「Tin Can Tourists(TCT)」には、ヴィンテージスタイルやデザインを求めるコレクターが集まります。そして、20代後半から30代前半が多く、若いメンバーからの関心が高まっているといいます。

「復元されたトレーラーを見ていると、かっこいいものばかりです。みんなとてもクリエイティブで、トレーラーの歴史を守ることを大切にしています」と、TCTのメンバーの若い女性は話しています

CHANGE THE DESTINATION

「旅」が変わる

米国人は、この夏、海外旅行がパンデミックにより難しいため、お金をかけずに旅行をしたり、家の近くに滞在したりすることを選択しています。また、リモートで仕事をしている人たちは、RVにWi-Fiを装備することで、デスクに縛られずに仕事をすることができます。

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「私たちが見ている新しいトレンドのひとつは、“自宅で仕事をする”から“どこでも仕事をする”へと進化していることです」とThorのMartinは述べています。

市場調査会社Ipsosが実施した調査では、4,600万人の米国人が今後12カ月以内にRVでの旅行を計画していると予測されています。

レンタルに関しても、消費者の関心を集めています。Business Insiderによると、RVレンタルサイトRVshare(RVシェア)の予約数は、4月上旬から5月19日までに1,000%増加。RVレンタルサイトOutdoory(アウトドーリー)の予約数は、パンデミック期間中の最も予約が少なかった日から5月中旬の最も予約が多かった日を比べると、なんと1,500%も急増しています。

Airbnbを通じてキャンピングカーもレンタル可能。ニューヨーク発のプラットフォームTentrr(テンター)でキャンプ場を探すのも、RV利用者にとって相性が良さそうです。

こういったレンタルをアップデートしたサービスもあります。それが、グランピング感覚の旅行を提供する、モバイルホテルのスタートアップCabana。共同創設者兼最高経営責任者であるScott Kubly(スコット・クブリー)は、電動キックボード事業を展開するLimeの元幹部で、シアトルを皮切りに、米西海岸の都市に同サービスを展開しています。車内はまるで、ホテルそのもの。バンをアプリから予約したら、宿泊場所も考える必要もなく簡単に旅に出られます。

PHOTOGRAPH VIA CABANA
PHOTOGRAPH VIA CABANA

バンにはシャワー、トイレ、キッチンとしても使えるスライド式の2口コンロが付いており、ホテル仕様のベッドがあるのもポイントで、1泊200ドル(約21,400円)から利用可能です。

しかし、RV業界がこの夏、順調に推移するかどうかは定かではありません。初めてRVを借りようとする人が大幅に増えたにもかかわらず、市場を占めるのは海外旅行を予定していた人の割合が大きいため、一時的な事例としても捉えられるからです。また、第2波や第3波が来れば、各州はロックダウン命令を復活させる可能性があり、キャンプ場やディーラー、工場が閉鎖され、需要と供給の両方が減少することになります。

とはいえ、この夏は、プライベートと安全を重視した“クルマ生活”を楽しむ人が増えるでしょう。皮肉にも、パンデミックが影響した移動生活が、新しいラグジュアリーの概念に変わっていくかもしれません。


This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. Netflixが新たな慈善活動。Netflix(ネットフリックス)は、6月30日、黒人が経営する金融機関に、保有する現金の2%を移すと発表しました。2020年3月末時点で約50億ドル(約5,370億円)の現金を保有しており、その2%は金額にして約1億ドル(約100億円)に相当します。
  2. NASAが助成金を発表。NASA(米航空宇宙局)は、中小企業向けの最新の助成金を発表し、300以上の企業に総額5,100万ドル(約55億円)のアーリーステージ資金を提供しました。今回選ばれたフェーズ1のプロジェクトは、いち企業あたり最大12万5,000ドル(約1,350万円)が支給され、新しいテクノロジーの市場投入を支援します。
  3. Walmartで販売停止になったもの。Walmart(ウォルマート)は、「All Lives Matter」を宣言したサードパーティの商品のオンライン販売を、無期限に停止しました。同社は、このスローガンの背後にある意図を疑問視する、一部の従業員や顧客から懸念の声が上がったことを受けて決定したとしています。
  4. カニエが新曲を公開。カニエ・ウェストは、トラヴィス・スコットをフィーチャーした最新曲「Wash Us in the Blood」のミュージックビデオ(MV)を公開。同曲は、ドクター・ドレがミックスを担当、ジャケット写真とMVはアーサー・ジャファが手がけました。BLM運動の様子や、コロナウイルスを撃退するシーンが収録されるなど、“今”の空気をカニエ流に表現しています。

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