[qz-japan-author usernames=” abhattacharyaqz”]
Asia Explosion
爆発するアジア
Quartz読者のみなさん、こんにちは。COVID-19は“ITにまつわる仕事”にも影響を与えています。インドが今おかれている状況から、日本にも共通している課題が見いだせそうです。英語版(参考)はこちら。
インド・ムンバイは、スタートアップエコシステムを評価する最近のランキングにおいて、資金調達、市場調査など一連の指標で完璧なスコアを獲得しています。
インド経済の中心地というべきこの都市には、Eコマースからエンタープライズテック、フィンテックまで、さまざまなセクターにまたがる9,000を超えるスタートアップが拠点を構えています。
学生のためのいくつかのインキュベーターが立ち上がり、2019年には2つのユニコーン、ファンタジースポーツの巨人Dream11とヘルステック・スタートアップのCitiusTechを送り出しました。
かくも先進的な都市を擁するインドにおいて、すでに何百人ものIT労働者が一時帰休(furlough)や解雇に追い込まれています。
COVID-19が職場のあり方を変えたのは言わずもがなですが、それはつまり、“ITにまつわる仕事”にも影響を与えるということ。そして、インドが今おかれている状況を考えることは、ここ日本においても共通している課題をあぶり出すことになりそうです。
ロックダウンから解放されたあともCOVID-19の感染数が絶えず増加するインド。その2,000億ドル規模のIT業界において、どのような立場の働き手が危機に瀕しているのでしょうか。そして、IT従事者はレイオフから逃れるために何ができるのでしょうか。
Cuts across the board
若手も、管理職も
調査・コンサルティング会社Frost & SullivanのDX部門のバイスプレジデント、ベノイ・CSは、「コロナ以前でさえ、IT分野の仕事は、自動化の流れを受け大きな変革を遂げていました」と言います。
人間への依存度が下がっているのは、もはや“あたりまえ”。それ以前のあり方に戻ることはありません。Tata Consultancy Servicesのような大手企業の中には、これが“ニューノーマル”であるといわんばかりに、2025年までに従業員の4分の3が在宅勤務になるとまで言う企業もあります。
そして、在宅勤務が増加するなか、多くの企業が、オフィスでシステムを稼働させ続けるためのバックエンド作業に従事する従業員をどうすればよいか、迷っています。
ITサービス会社Ninestars Technologiesの企業開発責任者であるヴィジャ・シャンカールは、「ITサポートスタッフの必要性は減少しているようです」と語ります。
オフィスに出社する人が減り、クライアントが柔軟な勤務を認めてくれるようになったことで、オフィスにまつわる多くの問題点は大幅に削減されることになりました。
実際、求人ポータル「Naukri.com」のデータからも、ソフトウェア職の採用がこの3カ月で落ち込み、ハードウェア、通信、技術、ITサポートスタッフが大きな打撃を受けていることがわかります。
キャリアが危ぶまれるのは、それだけではありません。IBMはインドにおけるプロジェクトマネージャーなど中間管理職の解雇に踏み切りました。
「IT業界では、エクセルやパワーポイントしか使っていなかった中間管理職が、コビド19の前にも影響を受けていました」と、Tech Mahindraの人事責任者、ハーシュベンドラ・ソインが言うように、パンデミックは、すでに始まっていた職場のデジタル化に拍車をかけているのです。
また、今、管理職のスタッフを世界中に派遣するのはほぼ不可能です。これまで海外のオフィスに配置されていたインド人のために、新しいプロジェクトが立ち上がることはないでしょう。クライアントが経済的な苦境に直面するなかでこうした需要が縮小しているうえに、ドナルド・トランプが叫んでいるビザ停止問題は、こうした先行きの見えない状況をさらに悪化させているともいえます。
レイオフにあった従業員には、行き場がありません。Naukri.comのデータによると、IT部門における採用意欲は全体的にネガティブです。
インドの採用担当者の大多数は、採用がCOVID-19以前の水準に戻るには3〜6カ月かかると感じているようです。さらに採用担当者の15%が、1年以上かかると感じていると回答しています。
Another door opens
新たな道はどこに?
ひとつ希望を見出すとすれば、「再スキル化」にあるといえます。
前出のTech Mahindraの人事担当責任者は、一部の機械的な作業は自動化される一方で、多くの新しい雇用も創出されるだろうと言います。彼が例として挙げるのが、サイバーセキュリティ専門家や量子機械学習アナリストです。
専門教育プラットフォームImarticusのニキル・バーシカー(ファウンダー兼マネジングディレクター)は、次のように述べています。
「オンライン授業へのアクセスは、テクノロジーのおかげで、かつてないほど容易になりました。単に登録して講座に向かう時間を割きさえすれば、既存のスキルを磨くだけでなく、新しいものを学べるのです」
Scaler Academyのようなeラーニングプラットフォームのなかには、退職に向かうIT従業員のための専用コースを用意しているものもあります(例えば、業界のCTOが授業を行う「バックエンドの役割から技術リーダーシップへのスケールアップ方法」など)。
さらに、テキサス州に拠点を置くコンサルタント会社Everest Groupのバイスプレジデント、ユガル・ジョシ氏は、ソーシャルディスタンス・コンサルタント(social distance consultant)やワークフォース・スペース・モデラー(workforce space modeller)といった例を挙げながら、IT企業はこれまで想定されてきた技術職以外にも幅広い役割を生み出すだろうと述べています。
当面の間は、定期収入だけをあてにすべきではないのでしょう。インドではフリーランスでの働き方が選択肢として増えていますが、いわゆる正社員とギグワーカーの割合は、最終的に後者に傾斜することが予想されます。
長期的に考えると、企業がニッチなスキルを必要とする場面は増えそうです。その場そのときに需要がある役割に応えられるフレキシブルな派遣人材に移行していくのでしょう。
This week’s top stories
今週の注目ニュース4選
- 昔ながらのコーヒーがトレンド。韓国で馴染み深いカフェの先駆け的存在「ダバン(茶房)」に再びスポットライトが当てられています。非接触のニーズの高まりを受けて、デリバリーサービスを強化。大手配送アプリの運営社Woowa Brothersによると、カフェ飲料とデザートの注文は、年初から5月までに35%増加し、他食品より早いペースで伸びているそうです。
- バッタが農作物を食べ尽くす。インドの複数地域で過去数十年で最悪レベルのイナゴの襲来が目撃されており、首都近郊のグルガオンに襲来しました。中東イエメンで発生した群れが到達したとされており、インド政府は農作物の8割に殺虫剤を撒きます。新型コロナと合わせて重大な食糧問題になり得ると、国際連合食糧農業機関(FAO)は警鐘を鳴らします。
- 新型コロナの抗体は持続しない。米中国の科学者による新たな研究によれば、感染したすべての人が抗体を産生するわけではなく、抗体が長期間持続するわけでもないようです。2万3,000以上のサンプルのうち最低でも4分の1は、ある段階でウイルスに感染していた可能性がありますが、4月の時点で抗体を確認できたのはわずか4%でした。
- 追跡デバイス届き始める。シンガポールでは、28日から国民に接触追跡デバイス「TraceTogether」が配布され始めました。当初はアプリ利用が推奨されていましたが、存在を知りながらインストールしない人が多く、デバイスを配布することに。モバイル端末を持っていない高齢者に優先して届けられ、30日までに送付が完了します。
📩このニュースレターはSNSでシェアできるほか、お友だちへの転送も可能です(転送された方の登録はこちらから)。Twitter、Facebookもぜひフォローを。
🎧Podcastもスタートしました!