Africa Rising
躍動するアフリカ
Quartz読者のみなさん、こんにちは。パンデミック以降の経済不況にあえぐアフリカのスタートアップ。VCが二の足を踏むなか、エコシステムを後押しするのは、インパクト投資家の存在です。英文記事はこちら(参考)。
2014〜2019年にアフリカのテック業界で記録されたVC案件の44%に、1社以上のインパクト投資家が参加していたことが、アフリカ・プライベート・エクイティ・アンド・ベンチャーキャピタル協会のデータで明らかになりました。
VC投資の低迷が予想される2020年。インパクト投資企業・機関は、非常に重要な役割を果たすことになります。アフリカのスタートアップ・エコシステムにとって、インパクト投資は極めて重要な生命線になるといえるのです。
Impact investing
インパクト投資の哲学
そもそもインパクト投資とは、VCやPE投資家が、測定可能で有益な社会的・環境的影響をもたらすことを目的として、事業に資金を投入することを意味します。
その“目的”には、例えば雇用創出や二酸化炭素排出量の削減などが挙げられますが、インパクト投資は今、多くの大規模ファンドがESG目標(環境、社会、ガバナンス)を投資哲学に組み入れるようになったことで、ますます影響力を増しています。
アフリカ大陸におけるインパクト投資について注目すべきは、そのかなりの部分を、英国のDfIDやCDCグループ、ドイツのGiZ、米国のInternational Development Finance Corp.などの開発金融機関・政府機関が推進しているという点です。特に英 CDC は、大きな影響力をもっています。
アフリカ大陸での健康危機と経済危機は、パンデミックを経てより深刻化しています。そんななか、インパクト投資家が課題解決型の企業への支援を倍増させる可能性は高く、今年に入って5カ月が経過した今、すでにヘルスケアと農業への注目度が高まっていることがうかがわれます。
Healthcare and agriculture
コロナをきっかけに
この2分野に取り組むスタートアップがパンデミック後に果たすであろう役割を考えると、資金調達は非常に重要な課題になります。
ヘルスケアについていえば、患者に血液や医薬品を供給しているLifebank(ナイジェリア)は、人工呼吸器や人工呼吸器が稼働している病院のトラッキングを実施し、ナイジェリア医学研究所と提携して検査へのアクセスを容易なものにしました。54gene(ナイジェリア)は、現地での検査能力を高めるために50万ドルの基金を立ち上げました。
農作物の収穫量を最適化し、農家の市場へのアクセスを向上させることに取り組むスタートアップは、サプライチェーンが寸断されているアフリカ大陸での食糧供給を維持する上で重要な役割を果たします。
「この趨勢は、以前からありました。ただ。COVID-19をきっかけに、農業は非常に重要案分野となったのです」
デジタルツールを用いて農家に技術ソリューションを提供しているFamerline(ガーナ)のCEO、アロイシウス・アターは、そう語ります。
Different Metrics
投資家たちの理屈
インパクト投資家の意思決定は、従来のVCとは異なる評価基準に基づいています。なかでもヘルスケアと農業に取り組むスタートアップが潜在的にもっているメリットが、開発金融機関(DFI)を惹きつけていると、オックスフォード大学でインパクト投資についての講義を担当しているタラ・セイバー・コリアーは言います。
Farmerlineのアター氏によると、同社が現在資金調達を進めるなかで、特にDFIとのコミュニケーションやデューデリジェンスのペースは格段に頻繁になっているといいます。こうした流れは、歴史的に資金不足にあえいでいた2つの分野にとって、明らかな恩恵といえるでしょう。
スタートアップアクセラレーターAfricArena(ケープタウン)が挙げる最悪のシナリオによると、2020年のアフリカのスタートアップの資金調達総額は40%も減少するとの予測もあります。従来型のVCは慎重な姿勢を崩さないでしょうが、現状をみるに、インパクト投資家の勢いは止まることはないでしょう。
「彼らの多くは、2020年も活動を続けることを約束しています」と、前出オックスフォード大のコリアー教授は言います。
「COVID-19の影響で、ベンチャーが資金提供を受ける優先順位は変わるかもしれません。ただ、コミットした総額は変わらないはずです」
This week’s top stories
今週の注目ニュース
- ミュージシャンの死から一夜明け…。エチオピアの首都アディスアベバで6月30日、連続爆破事件が発生し、多くの人が犠牲になっています。爆破事件は、殺害された有名歌手のハチャル・フンデッサの追悼集会の最中に起きました。民族音楽グループのボーカルであるハチャルは反政府活動でも知られていましたが、その死に対して米ミネソタ州では抗議集会も起きていました。
- 青い宝石のお値段。タンザニアの鉱山で合計重量約15キロのタンザナイトが発見され、政府がこの宝石を340万ドル(約3.6億円)で購入。一夜にして億万長者になるという夢のような話題が、世界中に拡がりました。当初は「鉱山労働者」と報じられていた“発見者”が、実際には約200人の労働者を抱える鉱山のオーナーであったという事実も明らかになりましたが、オーナーその人は、その代金で「ショッピングモールと学校を建設したい」と語っています。
- 1年越しの新大統領。アフリカ南東部のマラウイで行われた大統領選挙で、野党党首が現職候補を破り、6月28日に新大統領に就任しました。就任スピーチで新大統領のラザロチャクウェラは「私は“派閥”の大統領ではなく、“全国”の大統領である」と、対立のない社会を訴えました。昨年5月の大統領選挙では現職候補が再選されていたものの、不正があったとして、今回の再選挙に至っています。
- 学びのためのスマートフォン。ナイジェリアの首都ラゴスでは、パンデミックによって学校が閉鎖されて以来、オンライン授業が展開されていましたが、電気の供給が安定しておらず、データ通信も高額なため、アクセスは必ずしも万全とはいえませんでした。政府は、授業のデータやアプリがダウンロードされたスマートフォンを支給し対応しており、今後数週間で30万人の子どもたちに行き渡らせる予定です。インターネット網が万全でない地域においては、ラジオ放送による学習も行われています。
(翻訳・編集:年吉聡太)
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