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Tuesday: Asia Explosion
爆発するアジア
パンデミックの影響であらゆる産業が危機に直面するなか、ロックダウンだからこそ大きな需要が生まれている分野があります。そのひとつが教育分野。世界でも群を抜いて成長しているインドの現状をみてみましょう。英語版(参考)はこちら。
COVID-19の影響で、世界中の教育機関が物理的なキャンパスを閉鎖し、オンラインモデルの採用を余儀なくされています。そんななか、インド最大の求人ポータルの一つである「Naukri.com」の教育分野においては、2020年7月だけでも1,000件を超える新たな求人が追加されていました。
その半数以上がインドの大都市6都市におけるもので、筆頭となるのはデリーとベンガルール。求められている職種は、複数にわたっています。
COVID-19はインドで急成長するed-tech(教育テック)分野にとっては追い風といえるでしょう。いくつもの買収が、それを物語っています。
スタートアップデータ調査会社Tracxnによると、2020年上半期だけで、7社のed-tech企業が買収されています(昨年同時期の買収件数は4件)。また、昨年の買収案件がBtoBのオンライントレーニング企業が主だったのとは対照的で、2020年の買収は一般向けの分野に焦点が当たっています。
ちなみに、今年の買収案件7件のうち3件は、Facebookの支援を受けたUnacademyによるものです。
Covid confidence
集まる投資
インドのed-tech市場は、2022年までに35億ドル(約3,700億円)に達すると予測されています。
「COVID-19以前より、関係者はデジタル技術の採用に向けて動いていました。が、COVID-19がその移行の速度を加速させたのは間違いありません」と、K-12(幼稚園から高等学校卒業までの13年間の教育機関)向けのed-tech 企業STEMROBO Technologiesの共同創設者、ラジーヴ・ティワリは言います。
インドでは3月末からロックダウンに入りました。直近数カ月におけるSTEMROBO独自のコーディングプラットフォーム「Tinker Coders」への新規登録者数は、インド国内外の無料ユーザーで5万人、有料ユーザーでは3,000人以上にのぼります。
K-12セグメント最大手であるByju’sに至っては1,500万人以上の新たな生徒を集めています。7月の収益は6,800万ドル(約72億円)を超え、8月6日にはムンバイを拠点とするコーディングスタートアップ、WhiteHat Jrを3億ドル(約312億円)で買収しています。
Byju’sは2020年に入ってから既存投資家のBond、General Atlantic、Tiger Globalから5億ドル(約530億円)以上を調達しています。8月26日には、イスラエル・ロシアの大富豪ユーリ・ミルナーのDSTグローバルから1.2億ドル以上を調達しました。一方、Unacademyは2月にFacebookとGeneral Atlanticから1億5,000万ドルを調達していますが、9月2日には、日本の投資大手ソフトバンクが主導したラウンドで1億5,000万ドルを調達し、ユニコーンクラブ(10億ドル以上の価値をもつスタートアップ)の仲間入りを果たしました。
専門家によれば、これらのほとんどはここ数カ月で発生した新たなものではなく、もともとあった案件である可能性が高いようですが、COVID-19を機に加速した案件もあるといわれています。
GlobalDataのテクノロジーアナリストであるニディ・グプタは、ed-tech分野の利益はロックダウンに伴い教育機関が閉鎖されていることから生じているため、資金調達やM&Aの動きは短期〜中期的に継続すると予想しています。
さらに、upGradのCEOアルジャン・モハンはQuartzに対して、2021年度の2~3件の買収のために同社は680万ドル(約7.2億円)の資金を確保していると語っています。upGradはほかにもいくつかの候補企業をリストアップしているといいます。
Coronavirus customers
集まる生徒
COVID-19は「ユーザーの行動を一変させた」と、プレティーン向けオンライン英語・数学プログラム「PlanetSpark」の共同創設者マニーシ・ドゥーパーは言います。
彼らの調査によると、PlanetSparkのユーザーの87%近くが、パンデミックが過ぎ去った後もオンライン学習を続けるだろうといわれています。さらに、7月29日に承認されたインドの新たな教育政策はK-12に対するデジタル教育を推進している、という動きもあります。
市場が成熟して統合が進むにつれ、インドにある300社以上のed-techスタートアップには、自らがいかにして他社と差別化し際立つのか、その方法に工夫が必要となります。
それはいったい、どんなものでしょうか?
「ニッチなコンテンツやコース、新しいプロモーション方法、競争力のある購読パッケージなどは、競争の激しい市場において差別化を図るための常套戦略といえるでしょう」と言うのは、GlobalDataのグプタ氏です。ほかにあるとすれば、より実績のある企業と手を組むことも最善の策として挙げられるでしょう。
これらのed-tech企業の成長には、回避すべき障壁も待ち受けています。
奨学金ポータル「Vidyasaarathi」が8月に学生1万人を対象に行った調査によると、インドの学生の57%以上がeラーニングの最大の課題としてインターネット接続の悪さを挙げています。
「スマートフォンを持っているだけでは、十分とはいえません」と、子ども向けオンラインクイズプラットフォーム「QShala」の共同創設者ラガフ・チャクラバシーは言います。「テクノロジーに対する基本的な知識や最低限のネットワークへの接続性も、体験を左右します」
また、オンライン教育が“リアル”に歯が立たない分野もあります。2013年9月に創業したチェンナイのスタートアップFlinto Learning SolutionsのCEO兼共同設立者であるアランパラサド・ドゥライラジは、幼い子どもたちに対する教育を、そのひとつとして挙げています。
「幼い時期のオンライン学習には、良いことよりも悪いことの方が多いでしょう。子どもたちが物理的な教材を使って交流し、遊び、探求すればするほどより多くのことを学べることを考えると、オンライン学習はこれに代わるものだとはいえません」
This week’s top stories
今週の注目ニュース4選
- インドのストリーミング覇権争いは米国勢に軍配。13億の人口を有するインドのストリーミング戦争は、地場企業を抑えてアメリカ勢が圧倒的優勢を示しています。今年第二四半期に最も利用されていたストリーミングサービスはトップから順に「Netflix」、「Amazon Prime」、「Disney + Hotstar」。国産サービスの「ZEE5」、「Jio Cinema」、「ALTBalaji」が続くものの、シェアの差はかなり大きいものに。Disney + Hotstarは、4〜6月で62万5,000人の新規加入があったそうです。
- グローバルイノベーション指数、中国は14位。9月2日に世界知的所有権機関(WIPO)から発表されたグローバルイノベーション指数(GII)ランキング。10年連続で首位のスイス、2位スウェーデン、3位米国、4位英国、5位オランダと欧州勢が強い一方、中国(14位)、ベトナム(42位)、インド(48位)、フィリピン(50位)などアジア諸国も存在感を強めています。日本は昨年から順位を1つ下げ16位でした。
- 韓国BTS新曲、経済効果は14億ドル以上。韓国のヒップホップボーイズグループ「BTS(防弾少年団)」が8月21日にリリースした英語の新曲「ダイナマイト(Dynamite)」がもたらす恩恵に期待が寄せられています。文化体育観光部と政府観光局による調査で、経済効果14億3,000万ドル、約8,000件の雇用創出が予測されています。
- ジョシュア・ウォンの呟きで #BoycottMulan が再燃。中国で9月11日に公開を控えるディズニー映画『ムーラン』に対するボイコットの動きが復活しています。主演の劉亦菲(リウ・イーフェイ)は先月末に、香港警察の支持を表明し香港人から反感を買いました。批判韓国の民主活動家である黄之鋒(ジョシュア・ウォン)は、日本で配信が始まった9月4日に、主演を務めた劉亦菲(リウ・イーフェイ)を名指しで批判し、ムーランを視聴しないよう呼びかけました。
(翻訳・編集:鳥山愛恵、年吉聡太)
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