Africa:RBGが南アに見つけた希望

Wednesday: Africa Rising

躍動するアフリカ

今日の「Deep Dive」では、今月18日の逝去後、その業績に注目が集まるルース・ベイダー・ギンズバーグとアフリカとの接点をお伝えします。生前の彼女が南アフリカに見た“ユートピア”とは。英語版はこちら(参考)。

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Image: REUTERS/JONATHAN ERNST

1996年4月22日。期限を2週間後に控え、南アフリカ憲法の起草者たちは何度目かの行き詰まりを迎えていました。彼らの前には、いくつもの難点が山積していました。

死刑制度や財産条項、裁判官と司法長官の任命…。これらの難点を、ガバナンスと人権の双方に配慮したうえで解決し、南アフリカに「世界最高の憲法」と言われているものができあがることになったのです。

9月18日に87歳で亡くなった米国最高裁判事、ルース・ベイダー・ギンズバーグ(Ruth Bader Ginsburg)。彼女は、南アフリカの憲法はこの国が抱える“現代的な課題”に対処していると、機会あるごとに公の場で称賛したものでした。

It really is a great piece of work

すばらしい仕事

2012年、「アラブの春」とそれに続く民主主義への楽観が世界を覆うなか、エジプトのAl Hayat TVインタビューに応えたギンズバーグは、南アフリカの憲法は合衆国憲法も見習うべき優れたモデルだと語っています。

「南アフリカ憲法の条文は、基本的人権を包含しながら独立した司法制度をもつ、ファンダメンタルな政府を構築しようと意図した試みから生まれたものでした。その起草においては、本当に素晴らしい仕事がなされたと思います」

ギンズバーグは、2004年の憲法裁判所の開院の際、ヨハネスブルグでその瞬間に立ち会ってもいます。彼女は憲法に精通していたことで知られていますが、それも、国は国際法を考慮すべきだという彼女の信念ゆえからだったといえるでしょう。

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2006年にケープタウン大学で講演した際、ギンズバーグは、米国の最高裁は南アフリカの法のもつ“広範さ”に価値を見出すことになるだろうとも語っています

society to be like

世界で最も先進的

世界の憲法は、それぞれに独特なトーンとアイデンティティがあるものです。これまでその国にあった慣行を維持しようとする保守的なものもあれば、むしろそれに挑戦するような、理想を掲げた変革的なものもあります。

南アフリカ憲法を称賛した米国の法学者や法学者は、ギンスバーグだけではありません。法学者のキャス・サンスタイン(Cass Sunstein)は、南アフリカ憲法の権利問題に立脚したアプローチを取り上げ、「変革的な憲法の世界でも先進的な例」と評しています。

南アフリカのノースウエスト大学法学部准教授のエルミアン・デュ・プレシス(Elmien du Plessis)は、この憲法が行政からの要請を満たしているだけでなく、野心的な文書であると評価しています。

「私たちの憲法は、非常に希望に満ちたものだといえるでしょう。この憲法は、“南アフリカの社会がこうあってほしい”というビジョンを示しています。また、正当化可能な権利を規定しており、国家が行動を起こし、権利の一部を実現するための法律をつくることを求めています。これは特別なことだと思います」

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Image: 06/12/2020, REUTERS

現行憲法に至る前に、南アフリカには4つの旧憲法がありましたが、これらはアパルトヘイト下での黒人や女性の権利剥奪を支持すべく制定されたものでした。現行の憲法は、民主化後の1997年に公布されましたが、すべての南アフリカ人のための選挙権および、医療や教育、財産における平等が謳われています。

クワズール・ナタール大学法学部講師のデビッド・ハルム(David Hulme)は、法と生活とが相互に作用しなければ、ポジティブな変化はもたらせないと言います。

「たとえば、ギンズバーグが抱いていたフェミニスト的関心は、憲法そのものだけでなく人権に関わるものでしたが、それらは完全に区別できませんから」

Shaping the future

未来をつくるには

起草に2年を要した南アフリカ憲法は、交付後、20年以上にわたってこの地の最高法規となっています。

この憲法は、世界で初めて性差別を明示的に禁止したものでもあります。

南アフリカでは2006年に同性婚が合法化されました。英国での合法化2014年、米国では2015年だったことを考えると、その先進性が際立ちます。制定された時期が比較的新しいため、現代において議論される権利について言及されており、追加、あるいは更新する必要が少ないのです。

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Image: 04/13/1993, REUTERS/JUDA NGWENYA

憲法が未来への道標としての役割を果たすためには、過去を認め、現在と接合させ、来るべき数十年を形作るものでなくてはなりません。その点で、南アフリカ憲法がもつ“適時性”は、まさに米国にとって重要な教訓といえるでしょう。

「憲法を解釈するにあたって、建国メンバーが意図した意味を汲むべきか、それとも現代における意味を与えるべきなのかという議論は常にあります」と、ノースウエスト大学のデュ・プレシス准教授は言います。

「アメリカの憲法は非常に古く、女性や黒人がほとんど何の権利ももっていなかった時代に書かれています。だからこそ、それが社会の仕組みにどのような影響を与えているのか、どのような社会を望んでいるのかを、アメリカは問い直す必要があるのです」

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Image: 09/24/2020, REUTERS

headlines from Quartz Africa

今週のヘッドライン

  1. アウトソースに強い南アフリカ。Amazonが南アフリカにおいて、カスタマーサービス向けに3,000人規模を雇用するという6月のニュースは、アウトソーシング先としてのこの国の強さを象徴するものでした。McKinseyの新しいレポートは、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)に関する南アフリカの優位性と、この地位が今後も拡大する可能性を示しています。12月31日現在で100社以上のBPOプロバイダーが南アフリカで約27万2,000人を雇用しており、ヨハネスブルグ、ケープタウン、ダーバンなどの都市では、2030年までに全国で77万9,000人に達すると予測されています。──Sep 29
  2. 躍進する民間セクター。アフリカ大陸では、6億人が電気のない生活をしているとされています。特に農村部で人口が増加しており、政府は電力網を拡張するのに必要なコストを支出できていません。ここ数十年の間に、投資家やNGOがこのギャップを埋めようと、太陽光発電のミニグリッドを建設してきましたが、アフリカ・ミニグリッド開発者協会(AMDA)は、この3年間で民間開発の多くが加速しているとする、新しい調査結果を発表しています。──Sep 29
  3. アフリカ人学生の受難。米国国土安全保障省(DHS)は、留学生のビザ規則改正に動いていますが、これにより、何千人単位のアフリカ人学生が影響を受ける可能性が指摘されています。DHSは、テロ支援国として指定された国(イラン、北朝鮮、スーダン、シリア)で生まれた学生や、オーバーステイ率が10%を超える国からの学生のビザ期間を2年に制限することも目していますが、これによって影響を受ける59カ国のうち、アフリカは36カ国を占めています。──Sep 29
  4. 大気汚染は人を殺す。アフリカ最大のメガシティ、ラゴス。2000万人以上の人口を抱えるこの都市はあまりに酷い交通渋滞で知られています。その環境汚染による健康被害は深刻で、住民のなかでも5歳未満の子どもたちの死亡者数が、2018年の全死亡者数の60%を占めていることが、最近の世界銀行の調査データから明らかになっています。同データは、これら疾病による生産性の損失も深刻なことを指摘しています。──Sep 25

(翻訳・編集:年吉聡太)


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