Millennials:行き過ぎたフェミニズム

Thursday: MILLENNIALS NOW

ミレニアルズの今

18世紀の欧州から始まったとされる、フェミニズム運動。米国の歴史において最も多様性に富んだ世代ともいわれるZ世代を含む若者にとって、フェミニズムは今、どのように受け止められているのでしょうか?

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米国では、女性の権利運動が始まった当初から、「フェミニスト」という言葉とそのありようは多くの議論を呼んできました。

近年、とくに2017年10月に起こった#MeToo運動は、その顕著な例といえます。女優のアリッサ・ミラノ(Alyssa Milano)が発端で、「セクハラや暴行を受けた」人に対して「#MeToo」でリプライして欲しいというTwitterでの呼びかけには、1日だけで5万件以上のリプライが寄せられました。

この運動は、そもそも2006年にアクティビストのタラナ・バーク(Tarana Burke)が始めたものとしてすでに存在していましたが、アリッサの呼びかけ以降、フェミニズムが改めて注目を集めることになったのは間違いありません。

フェミニストを公言する若いセレブリティも多く、テイラー・スウィフトやアマンドラ・ステンバーグ、エマ・ワトソン、アリアナ・グランデ、ジェニファー・ローレンスなどが名を連ねます

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Image: TARANA BURKE, REUTERS/AMR ALFIKY

女性に投票権を認めたアメリカ合衆国憲法修正第19条が可決されてから、100年が経過した2020年。

調査会社Pew Research Centerの新しい調査によると、女性に男性と同等の権利を与えることに関して、米国の成人の大多数は、過去10年間に進歩があったと考えていますが、まだ十分には進んでいないと答えています。また、米国人の間でも、「フェミニスト」という言葉のもつ意味や運動そのものをどう捉えているかについては、意見が分かれているようです。

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ARE YOU FEMINIST?

フェミニストですか?

Pew Research Centerの調査によると、米国女性の約10人に6人が「自分はフェミニストである」と答えています。しかし、その“度合い”は、年齢、学歴、政党によって大きく異なるようです。

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Image: REUTERS

年齢を問わず、大多数の女性が「少なからずフェミニストである」と答えていますが、50~64歳の女性で「非常にそうである」と答えた人は最も少なく、この年齢層では12%しかいませんでした。なお、18~29歳の女性は27%、30~49歳の女性は19%、65 歳以上の女性は20%となっています。

少なくとも学士号をもっている女性の約10人に7人(72%)が「非常に、またはややそうである」と答えていて、大卒以下の女性は56%。

党派間でも大きな隔たりがあります。民主党支持/民主党寄りの女性の4分の3は「非常に」または「ややそうである」と回答しているのに対し、共和党支持/共和党寄りの女性では42%になっています。

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フェミニストという言葉に共感するのは、女性だけではありません。

米国の男性の10人に4人が、「少なからずフェミニストである」と答えています。民主党の男性(54%)は共和党(26%)の男性の2倍以上の割合で「非常にそうである」と回答。また、女性と同様に、学士号以上をもつ男性(46%)は、大卒以下の男性よりも、自分がフェミニストであると答える割合が高くなっています。

人種によっても違うようです。調査会社GenForwardが、米国人女性の18〜34歳までの見解をリサーチしたところ、ヒスパニック系の13%、アフリカ系米国人の15%、アジア系の20%、白人の18%がフェミニストであると認識していることが分かっています。

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bipolarization

フェミニズムの二極化

Pew Research Centerの調査は、フェミニズムが米国の女性の権利の向上に貢献していることを示しています。しかし、フェミニズムの今日のあり方については、人々の間でも意見が割れています。

米国人の大多数(64%)は、フェミニズムが「エンパワーメントになるもの」、42%は「インクルーシブ(包括的)である」と見ています。同時に、45%は「偏向的」と回答し、30%が「時代遅れ」だと答えています。

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特筆すべきは、フェミニストを自認する人の多くがフェミニズムに批判的であるという矛盾です。

たとえば、フェミニズムが自身のことを非常によく表していると答えた成人の43%が「フェミニズムは偏向的」だと答え、45%は「インクルーシブだとは言えない」と答えています。

女性がフェミニズムを肯定的に捉えている傾向が強い一方で、男性は女性よりもフェミニズムを「偏向的で時代遅れ」と見る傾向が強いようです。それでも、男性の10人に6人は「フェミニズムはエンパワーメントになる」と答えています。

NOT COMFY

アンチフェミニズム

New York Post」は、“woke”(社会的不公正、人種差別、性差別などに対する意識が高いこと)世代ともいわれるZ世代の傾向について、興味深い調査結果を取り上げています

英国に拠点を置き、過激主義(extremism)に反対するキャンペーンを展開している団体Hope Not Hateの新しい調査「Young People in the Time of COVID-19」によると、16歳〜24歳の英国男性の半数が「フェミニズムは行き過ぎて、男性が成功するのが難しくなっている」と考えているというのです。

この意見には、女性の23%も同調しています。

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先出のGenForwardによる調査によると、「自分はフェミニストではない」と答えている人が全体平均で23%。人種別に見ると白人がもっとも多く(26%)、次いでアフリカ系米国人(21%)、ヒスパニック系(17%)、そしてアジア系(13%)と続きます。

さらに、同社の調査で年齢別に見ると、18歳〜24歳までの回答者のうち約4分の1は自身が「フェミニストではない」と答えています。

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「Reddit」内のフォーラム〈What are your opinions of feminism.では、20歳の投稿者が以下のようなコメントをしています。

「“過激な”フェミニスト(=女性至上主義者)は、残念だけどめちゃくちゃ騒がしくて全く意味がない。運動に対するわたしの認識はすっかり変わってしまった。“失せろ”って感じ。厳密な意味で“活動している”フェミニストは肯定的に見ているけど。わたし自身は社会正義とか平等・不平等とか、そういうものにはそれほど情熱はもてない」

16歳の投稿者は「フェミニズムは最初はよいことだったのかも。でも、今のフェミニストたちはお互いに抑圧することを競い合っていて、長きにわたって平等な権利を有してきたにもかかわらず、自分たちがいかに社会からひどい扱いを受けているかをグチっているようにしか見えない」とコメントしています。

こうしたZ世代の率直な意見の裏側には、ソーシャルメディアの普及とともに増加した「Social Justice Worrior」(ソーシャル・ジャスティス・ウォリアー;フェミニズムや人権、文化多様性、アイディンティティや政治などにおけるさまざまな社会進歩的な考え方を広めようとする人)の強すぎる存在感もあるかもしれません。

キングス・カレッジ・ロンドンのクリスティーナ・シャーフ博士は、英独の若い女性グループに対するインタビュー結果として、「『フェミニズム』という言葉が“男嫌い”や“レズビアンであること”、“女性らしさの欠如”といった事柄と結びつき、そのラベルを拒否する主な要因になっている」と述べています。大多数の人(ただし、多くが同性愛嫌悪ではないとしている)は、自分たちがこういった特徴に関連付けられるのを恐れて、フェミニストを自称したくないともいうのです。

フェミニズムに反する運動もあり、Twitter上では、#WomenAgainstFeminism を使った投稿が見られることも。投稿の多くには自撮りスタイルの写真が添付され、フェミニズムに対する不承認の意志を記した手書きのポスターが掲げられています。

VERY CONSERVATIVE

実は保守的な若者

ミレニアル世代やZ世代についてのポジティブな言説として、彼らに特有な性的指向ジェンダー・ アイデンティティに関するリベラルな態度が、社会の変革を推進するとされてきました。

しかし、社会科学誌「Sociological Science」に掲載された新しい研究では、若者たちは一般的に想定されているよりも保守的な態度をもっているといいます。

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Ms.」によると、現代の若者たちはかつてないほどに「分業」の取り決めを幅広くできるようになっているのにもかかわらず、主に女性が育児や家事を担当することを強く望んでいるといいます。夫がフルタイムで働き、妻が家にいるという従来型の分業形態を好ましく捉えているというのです。

過去45年にわたる調査によると、伝統的な役割分担を好む割合は徐々に低下したものの、近年ではほぼ変化していません。最新の状況においては、妻がフルタイムで働き夫が家庭に入ることを選んだパートタイムで働き、妻がフルタイムで働くことを選んだたのは、5%以下であったといいます。

Ms.」では、このような若者の保守的な態度を踏まえたうえで「フェミニズムが死んだと言っているわけではない」と論評しています。ジェンダーに対する捉え方や関わり方は非常に複雑で、先出の調査結果は、これまでに行われてきた実質的な進歩を損なうものではないというのです。しかし、新しい10年に向けて、わたしたちはジェンダー・エクィティの浸透のためにすべての障害を理解し、対応する必要があるとも結んでいます。


This week’s top stories

今週の注目ニュース4選

  1. コロナ禍で仮想通貨が好調。仮想通貨ウォレット「BRD」が、世界で600万人以上のユーザーを獲得したと発表しました。とくにインド、ラテンアメリカ地域における成長が著しく、2021年初頭にはユーザー数も1,000万に到達すると予想しています。2015年に設立されたBRDは、100万ユーザーを達成するのに4年以上かかっていましたが、現在では2カ月ごとに約100万人の新規ユーザーを増やしているといいます。
  2. エドテックの2大大手がタッグを組むことに。米国の教育スタートアップのAltitude Learningは、ヨーロッパの学習管理システムitslearningの北米担当部門との合併に合意したことを発表しました。目指すのは教室管理とパーソナライズされた学習のための新たな選択肢を提供することで、対面・リモートいずれの教育への適応も実現できるといいます。
  3. 陰謀論集団「QAnon」アカウントを禁止。Facebookは、全プラットフォームでの「QAnon」のアカウントを禁止を発表。これによる影響は、名称や説明文が陰謀論を想起させるFacebookページやグループ、Instagramアカウントに及ぶもので、支持者による誤報や有害なコンテンツの拡散を取り締まる試みだといいます。
  4. ショーは大成功だった一方で…。10月4日、リアーナ(Rihanna)がTwitter上で炎上。原因はSavage x Fentyのショーにおける選曲にありました。問題になったのは、ロンドンを拠点とするアーティストCoucou Chloeによるトラック「Doom」で、イスラムの預言者ムハンマドの言行録をサンプリングしていたとされています。リアーナはInstagramで謝罪し、サンプリング元を知らなかったと述べました。

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