Asia:中国は「刺激的」な原子力大国

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Tuesday: Asia Explosion

爆発するアジア

Quartz読者の皆さん、こんにちは。気候変動対策と経済成長を同時に達成すべく中国が出した答えは原子力でした。そしてその計画は、圧倒的な主導力によって推進されています。英語版(参考)はこちら

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Image: REUTERS/BOBBY YIP

9月22日、中国は2060年までに二酸化炭素排出量をゼロにするという野心的な目標を発表しました。

しかしながら、中国における電力源の大半を占める石炭火力発電所はいまだに急速に新設されています。目標達成に向け、中国は、エネルギーシステムを抜本的に見直す必要があるのです。

石炭火力発電所に代わるものとして、中国が主に頼ることになるのは風力発電でしょう。太陽光発電も、相対的には大きな成長を遂げることにもなるでしょう(中国はここ数年、世界をリードする“太陽光発電大国”としての地位を築いてきています)。

しかし、この計画において重要な役割を果たすことになると想定されるのは、原子力です。中国が2060年に目標達成できるとすれば、そのロードマップには、同国が原子力大国になることも含まれているのです。それも、10年以内に。

To replace all that coal capacity

2060年までの道のり

9月27日、中国の研究者たちは、目標達成までの詳細を明らかにしました。

発表したのは、政府と密に連携し気候変動研究をリードする清華大学エネルギー・環境・経済研究所の研究者たち。そこには、現在の4倍近くになる原子力発電容量などが含まれていました。

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中国の「脱炭素化」アジェンダは、欧米諸国のそれとは一線を画しています。原子力は、欧米において、とくに環境保護主義者の間で論争の的となっています。

世界的に見れば、原子力発電産業はここ数年「荒れた」状態が続いていると言うのは、マサチューセッツ工科大学の原子力科学者、ジャコポ・ブオンジョルノ(Jacopo Buongiorno)です。ブオンジョルノ博士は、2018年、業界の展望に関する報告書を作成していますが、彼によると、欧米では国民からの反対建設・運転コストの高さ非効率的な建設方法などを理由に新規プラントの建設は停滞しており、既存プラントの閉鎖につながっているといいます。

一方で、中国での勢いは加速しています。11の新規プラントが建造中で、これは他国と比べても際立っています。2030年までにも米国を抜き、世界トップの原子力生産国になろうとしています

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「今、産業の重心は、決定的に中国に移っている」とブオンジョルノ博士は言います。「彼らは急速に成長している一方、(米国とEUは)縮小している。中国はあらゆることに挑戦しており、見ていて刺激的なほどだ」

中国が開発を進めているのは、伝統的な巨大プラントであるグリッド接続型の原子力発電所だけではありません。住宅街に設置できるコンパクトなビル暖房用のプラントから、海上の石油・ガス操業用の、海上のはしけに浮かぶ小型プラントまで。高温下でも稼働する最先端プラントは、工業施設にも利用されています。

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Image: REUTERS

中国国内の建設コストを下げるのに寄与するのは、同国が実施してきたサプライチェーンの統合や、経験豊富な労働力の育成、高効率な建設現場の構築など、数え上げればさまざまです。

さらに、政府がこれらすべてを監督する独立した規制機関を支援することで、これまでのところ重大な事故は発生していない、とブオンジョルノ博士は言います。

China is much more explicit

旗を立てた中国

原子力は、気候変動という観点だけでなく、中国のあらゆる経済目標に役立つツールであると言うのは、カーネギーメロン大学で原子力政策の博士号を取得したジェシカ・ローベリング(Jessica Lovering)です。

新世代の原子力発電所は、沿岸部の人口密集地の近くであっても建造が可能です。そうなれば、内陸部から石炭を輸送する必要性は軽減されるでしょう。また、はしけ型の浮体式発電所は、地政学的に争われている南シナ海において、中国の存在感を高めるのに役立つというのです。

「中国は、脱炭素化戦略において原子力が果たす役割について、(米国やEUよりも)はるかに明確に自身の立ち位置を示しています。そして、気候変動の恩恵を促進することは、理にかなっています」。ローベリング博士は、そう言います。

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Image: REUTERS

しかしながら、福島原発事故以降、建設ペースが鈍化しているのは否めません。短期的な建設目標は遅れをみせています。中国がその目標を達成するには、「かなりの増強が必要です」とローベリング博士は言います。「しかし、不可能ではありません」

一方の米国は。米国のプラントは、政府が新たな支援を決めなければ“不確実な未来”に直面し続けるだろうと、前出のブオンジョルノ博士は言います。今時点では、ゼロ炭素化の遅れを補うべく、風力発電や太陽光発電、水力発電に、より一層プレッシャーがかけられています。

「既存の発電所の状況は、確かにあまりバラ色ではありません。確かにそれは、残念なことです」(ブオンジョルノ博士)


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(翻訳・編集:鳥山愛恵、年吉聡太)


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